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抜歯と注意事項

 8020運動という運動を聞いたことがありますでしょうか。80歳で20本以上の自分の歯を保つことを目指しましょうという厚生労働省と日本歯科医師会による啓発活動で、20本以上自分の歯があると食生活に満足できると言われているそうです。また、80歳で20本以上の自歯があると認知症リスクなども低く、逆に歯の本数が少ないと認知症リスクが高くなるそうです。
 さて、以前は、歯が痛くなってから歯科に行くというのが一般的でした。ただ、痛くなってから行くということはむし歯がある程度進行してから行くということが多くなってしまいます。
 一方、近年は、痛くなくても歯科へ行き定期的に検診(メインテナンス)を受ける予防歯科に変化してきました。メインテナンスをすることで虫歯になってしまっていてもより早期に発見することができます。またメインテナンスにより歯周病の悪化を防ぐこともできます。歯を失ってしまう原因である歯周病と虫歯という2大疾患の予防を行って自分の歯を守るためには、歯科での定期的な歯科衛生士によるプロフェッショナルケアと毎日の歯ぶらしセルフケアがとても大切になります。
 しかし、8020運動などでも1本でも多くの歯を残しましょうとしている歯科医療においても残念ながらどうしても歯を抜かざるをえない事例があります。基本的には歯を守るのが歯科医師の役目ですが、「抜くことで患者様を守る」ために抜かざるをえないのが下記の例です。
1.      虫歯や歯周病が進行して治療するには手遅れになってしまった歯
2.      隣の歯や周囲の骨に悪影響がある歯
3.      炎症の原因を除去するため
4.      粘膜を傷つけないため
5.      矯正や入れ歯などの治療のために
 
 1~4は、その歯を残すことでその後さらに悪化することが明らかであるため抜かざるをえません。一方、5は歯を抜くことで矯正や入れ歯、インプラントなどの患者様が希望される治療後の状態が、より良い状態で長期に亘って続くように行うもので、これは抜く歯自体には問題が無くても抜くという選択を行うため1~4よりも慎重な治療計画を検討・作成した上で行うものになります。
 以上のような理由から抜歯せざるをえないことがありますが、残っている自分の歯の本数が多いほど認知症リスクが下がることが明らかになっており、物を噛んで食べるための最も大切な器官である歯を抜くことになってしまわないよう、やはり毎日の丁寧な歯みがきと3~4ヶ月に1回のメインテンスで口腔内の健全化を維持していきましょう。
 いずみ中山歯科でも抜歯は行いますが、できる限り抜歯を行わなくて済むようにメインテナンスなど予防歯科に重点を置いています。それでもどうしても抜歯が必要になってしまったら、抜歯前後の注意事項がありますのでそれぞれをご紹介します。
 まずは抜歯の前に注意するべきことについてご紹介します。
1.     血液サラサラの薬💊を飲まれている方は出血が止まりにくいので必ず申し出てください。縫合するなどして確実に止血を行います。自己判断で服薬を中断するのは危険ですので、通常通り服用してください。
2.     骨粗しょう症の治療薬を飲まれている方も必ず申し出てください。この薬は抜歯後にあごの骨が壊死する副作用が極まれに生じることがあるそうです。場合によっては服用を休止するようお願いすることがあります。壊死を防ぐには口腔内を清潔に保つことが重要になります。
3.     歯科が怖い方はお知らせください。歯科への恐怖心が強いと気が遠くなったり卒倒したりしてしまうことがあります。中には麻酔注射の段階で気分が悪くなってしまう方もいらっしゃいます。
4.     予約日の取り方にご注意ください。抜歯後に腫れや痛みが出た時、次の日が休診日で歯科医師に電話が繋がらないと不安が募ります。可能であれば予約は休診日の前日を避けておくと余計な不安が減らせます。
5.     発熱や二日酔いはダメです。抜歯といえども骨がむき出しになる外科処置です。特に親知らずの抜歯では骨を削る場合もあります。体調は傷の回復に影響します。体調を整えてのぞみましょう。
6.     歯科の薬は忘れずに飲んでください。抜いた後の痛みや出血を少なくできるため抜歯は炎症が引いてから行うのがベストです。炎症の原因除去のために抜歯を行うこともありますが、事前に処方された抗炎症剤などの薬はきちんと服用して抜歯前にできるだけ炎症を抑えておきましょう。
 
 抜歯は歯科医院と患者様の協力のもとで安全に行われるものです。安全に行うためにも上記の注意点を十分にご理解いただきますようお願いいたします。
 次に抜歯後の注意点についてご紹介します。
1.     傷口を抑え止血するためにガーゼを30分しっかり噛みましょう。自己判断で止まったと思って半端に止めると再出血の可能性があります。ただし、30分以上噛み続けると逆効果となって出血が止まりにくくなることがあります。
2.     ブクブクうがいは止めましょう。傷口を埋めるように血餅(けっぺい)というかさぶたの役目をする血の塊が取れてしまうことがあります。血餅が無くなってしまうと骨がむき出しになり痛みの原因にもなってしまいます。うがいは軽く水を含む程度にしましょう。
3.     運動、入浴、飲酒は止めましょう。いずれも血行が良くなり出血しやすくなります。体が汚れていると思ったら軽めのシャワーにしましょう。
4.     抜歯した当日は歯みがきをやめておきましょう。うがい同様、血餅を無くしてしまうおそれがあります。抜歯翌日から抜歯したところを避けて柔らかい歯ぶらしで磨きましょう。
 
 このようなちょっとした配慮で抜歯後の経過が違ってきますので、上記の注意点をよく守ってください。抜歯は歯科医院と患者様の協力のもとで安全に行われるものです。抜歯後の良好な経過のためにも上記の注意点を十分にご理解いただきますようお願いいたします。

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