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口腔内粘膜も要チェック

 これまで、お口の中の歯や歯肉(歯ぐき)について何度か取り上げてきましたが、今回はお口の中の粘膜について少しご紹介したいと思います。歯ぐきもお口の中の粘膜の1つではありますが、今回は歯ぐき以外の粘膜についてです。
 お口の粘膜の疾患としてよく知られるのは皆さんの中にもなったことがある方もいらっしゃると思いますが「口内炎」があります。タレントの堀ちえみさんが、口内炎がなかなか治らないと通院したところ口腔がんだったというお話は少し前に話題になりました。
 口内炎ができると痛みが出たり何らかの違和感を覚えたりする方はいらっしゃいますが、口腔がんは初期には痛みがなく、突然大きくなるといった症例が多いそうです。そのため大きくなって癌が進行した状態で気づく方が多いようです。
 がんを見つけようと思えばお口の中は鏡を使って見ることができます。ただ、舌の横や付け根、歯ぐきの奥まで日常的に観察することはなかなか難しいものです。もともとお口の中は熱いもの、冷たいもの、辛いもの、細菌、ウイルスなど様々な刺激が加わる場所で、口腔がんに限らず粘膜に様々な変化が起きやすくなっています。
 口腔がんは見つけにくいがんと言われますが、がんは胃がん、肺がん、大腸がんなど全てのがんで発生初期には痛みなどの自覚症状がほとんどないと言われています。このことに加えてお口の中は食べ物や被せ物、入れ歯などの刺激を常に受けていることで、粘膜にできた病態が食べ物に擦れ、熱いものに触れることで良性の物も悪性の物も似たような見た目になってしまうことも見分けがつきにくくなる要因です。しかも、お口の中は擦り傷や噛み傷などとても傷つきやすい場所で、歯周病などの細菌による炎症、カビ菌によるカンジダ症、色素沈着、水疱、良性のこぶやできもの、アレルギー、感染症、全身疾患、薬物の副作用、そして悪性腫瘍とあらゆる可能性を検討しなければ本当の原因にたどりつけません。
 このようなことが絡み合って良性のものも悪性のものも似通った見た目となることから口腔がんは視診による鑑別が非常に難しいのが特徴です。口腔がんの病理検査を行っている大学病院の先生などでも迷うことが多々あるそうで、がんと思っていたのが良性だったり、まだがん化していないかなというものが病理検査の結果がんであったりすることがあるそうです。
このように口腔がんの診断は専門医でも難しいもので、患者さんが自己判断することはとても危険なことだそうです。口腔内の粘膜に変化が見つかった時は、かかりつけ歯科医に相談して、必要に応じて検査などをしてもらうようにしてください。
 前述のとおり口腔がんは良性の粘膜疾患との見分けがつきにくく、早期発見しにくい疾患です。このやっかいな口腔がんを早期に発見するにはどうすれば良いのか、それこそが「かかりつけ歯科医」での定期的、継続的な健診(メインテナンス)を受けることです。メインテナンス時に歯や歯ぐきだけでなく粘膜のチェックも併せて受けることが最善策となります。さらに疑わしい病変が見つかったら躊躇なく検査を受けることをお勧めします。
 さて、疑わしい病変が見つかった際に受ける病理検査ですが、一般的に行われているのが細胞診検査と組織診検査です。細胞診検査は疑わしい粘膜の表面を歯間ブラシのようなブラシで擦り、細胞を採取するだけで検査できる痛みの少ない検査方法です。ただし、ごく初期の口腔がんの場合、陰性の結果が出ることもあるので、検査後の経過観察も欠かせません。
 一方、組織診検査は、細胞診検査の結果でがん化が疑われたり、視診、触診でがん化が疑われたりする場合に診断を確定するために行われる検査です。粘膜の組織を切り取り、その組織を病理医が仔細に調べて診断します。がん治療を行っている病院歯科や大学病院などの高次医療機関で受けることができます。この検査では組織の切除が必要となり患者様に負担がかかるので何度も行うことはできません。まずは早期に粘膜の変化を見つけて細胞診検査につなげ、必要な方のみ組織診検査を行うことが望ましいそうです。それを可能にするのがかかりつけ歯科医での定期的、継続的な検診(メインテナンス)になります。
 なので、定期的なメインテナンスで歯や歯ぐきだけでなく舌や頬の裏などお口の中全体も変化の有無を診てもらうようにしましょう。
 

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