『スパイダーマン ホームカミング』

 時間があったので、初日に見に行ってきた。

 スパイダーマンは、一番好きなマーベルのヒーローだ。

 最初に知ったのは小学生の頃に古本屋で買った邦訳版のコミックスだった。そしたらいきなりテレビの特撮で始まって「ちがうじゃん!」って思いながらも楽しく見て……と、一番身近なアメコミのヒーローだったのだな。

 他のマーベルのヒーローは、スパイダーマンとハルクのコミックでチラチラと断片的に知っていた程度だったのだ。

 そんなわけだから、これまでのサム・ライミ版のスパイダーマン(サム・ライミのスパイダーマン愛が良い)も、その後のリメイク版(ヒロインが最高。死ななければもっと良かった)も大好きだ。

 で、今回のホームカミング。
 なんといっても、アベンジャーズのシリーズに組み込まれてのスパイダーマン第一作である。まあ、キャプテン・アメリカの『シビルウォー』ですでにデビューしているし、その段階で「かなり今までとはちがう扱いだな」と察してはいたが……。

 実に面白かった。
 この映画大好きだ。
 なんていうか、ストーリー上での深い感動とかはそんなにはない。
 でも、そんなの関係ない。
 痛快だし、心地よい映画だから、それでいいのだ。
 スパイダーマンの映画って、原作の暗い面を引きずりすぎてて、辛くて重いストーリー展開が多すぎたせいか、今回のは見ていてスカッとしたから。
 前から思っているのだが、原作のスーツを着ているときのスパイダーマンは(もちろん、脱いだときの反動を計算しての演出はあるとは思うけれど)、ちょっと軽口の多いニューヨークの街を愛する兄ちゃんだ。なのに、常に辛い展開が待ち受けていて、そればっかりが映画でも繰り返されて、ちょっと「もういいよ」ってところがあった。
 だから、今回の仕切り直しは、以前にシビルウォーの感想でも書いたけど、かなり好印象なのだ。

 明るく楽しく、メイおばさんは若くて美人で、抱える悩みもやけに「青春して」る、ピーター・パーカー。
 いいよ。
 いいじゃないの。
 今まで原作の辛い話ばかりやってきたんだから。
 「こんな幸せなスパイダーマンがいたっていいじゃないか!」って気分になれる。

 まあ、アベンジャーズに組み入れるために、アイアンマンが出過ぎな気はするし、彼がピーターの保護者という立場で、自分の父親に抱いていた思いを反芻する展開になっていたりしてて、アイアンマンの話か? ぐらいに思ったりしてしまうのはあれだけども。
 スーツもスタークが作るのでスパイダーマンっぽくないんだが……それを着せる理由付けをするために、一生懸命にプロットを練っていたので、まあ許しておくか~って感じかな。
 それに、ピーターは、まだ高2だしね。でも、スーツは自分で作るぐらいにはなって欲しいなあ。あのままだと、戦い方がアイアンマンと似たような演出になっちゃわないか心配だよ。

 感動はそんなにない――とは言ったが、もちろんヒーロー物として押さえるべきところはきっちり押さえているし、なによりもプロット上の大仕掛けには「あっ! そう来るのか! 油断してた!」と驚かされた。
 きちんと伏線張られてたのに、しっかりだまされたよ。そういう意味でも楽しませてもらった。

 あと、キャプテン・アメリカ(彼も大好きだ)が、どう出てくるのかな~と思ったら、うまい出し方してた。あれもよかった。
 そしてピーターの相棒のオタクの友達がよかったなあ。
 「座る人」は最高だったね。
 なによりも、友達とわいわい仲良くやっている高校生のピーターの姿が見られるのがいいよね。
 なんていうか、「幸せなスパイダーマンは、映画のアベンジャーズ世界にいたんだねえ」って映画なんだよね。ちょっとそういう勝手な理屈で涙ぐんでしまったくらいに。
 おじさんが死んだ理由が出てこないのはちょっと気になる(ていうか、おじさんはいるのかな。『あんなことがあった』としか話してなくて、おばさんが未亡人なのかどうかもよくわからなかったんだが)。「例のやつ」が今後、出てくるのかなあ。そうなると、とたんに重くなっちゃうからべつになくてもいいと思うんだけど。

 ともかく、再登場が楽しみでならない。

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