けものフレンズのこと

 今世紀に入って数年間、ケロロ軍曹のノベライズは私の主なお仕事だった。
 映画のノベライズは基本お話は映画のままなわけだが、オリジナルのストーリーのものも2冊書かせてもらっている。
 もちろん、書いたものは全て吉崎先生に監修していただくわけで、修正箇所や、お褒め頂いたことなども含め、やりとりのなかで先生の作品世界への姿勢や哲学などを垣間見ることができた。冊数を重ねるごとに、それをできる限り理解して書こう~と努力してもいたが、ストレスはなかった。なぜなら、先生のそれが、私のもともと持っている作品に対する方向性ととってもマッチしていたからだ。だから、むしろ楽しいお仕事だった(もちろん、元々ケロロ軍曹も大好きな作品だったし!)。
 なので、ゲームのことは知らなかったけれど、『けものフレンズ』のアニメが始まるのを知ったときは「おお、これって吉崎先生がコンセプトデザインなんだ~ きっと動物や世界への愛があふれているに違いないぞ!」と思い、第一話から楽しく見ていた。

 SF的な背景世界(私は、「猿の惑星」というよりも、「みんなが優しい『猿の軍団』」というイメージを抱いているのだが)も、興味をそそられたが、なにより、真っ当に丁寧に作られているところが好きだった。あとまあ、作品世界は性善説で組み立てられているほうが好きなのよね(楽しむジャンルで切り替えられはしますけどね)。私はね。
 ストーリーを作るときに必要な要素を、愚直といっていいほどきっちり積み重ねている。基本に忠実といってもいい。ただ、それは、たいていはどんな作品でもやっているはずで(そこがちゃんとしていない作品は、少なくとも私は楽しめない。キャラクター性だけとか、映像の技術や美しさだけとかでは、どーしてもダメなんだ、私ゃ)、当たり前すぎて、見ている側はあんまり気づかない場合が多いんじゃないだろうか。
 ところが『けものフレンズ』の場合は、背景世界を考察しようとして目を皿のようにして楽しんでいる人たちがいた。そのお陰で、真っ当に作っているそうした部分に気づいていくのを見ているのも楽しかった(これは作品そのものではなく、Twitterなんかの書きこみを眺めるのが楽しかった部分だけど)。

 ラスト前の11話でショックを受けている人が多くて、「えっ? そうなの?」となったのも新鮮だった。
 よほど「お約束通りにはいかないのだよ、ふふん」という作品に心を折られてきた人たちなのだろうな……と思ってしまった。
 だってさ、これは真っ当なお話作りをしている作品なのだから、ここまでの積み重ねに勢いをつけてラストへと持っていくための溜めであることはわかりきっているじゃあないですか。「いいところで終わって、最終回がどうなるかワクワクさせるとこ」なのに……あ、いや、まあショックを受けているのも最高に楽しめていると言えるけども。吉崎先生が作品に絡んでいるんだもの、まさかねえ……。
 というわけで、私はワクワクして最終回を待ち、期待したラスト(これまで関わったみんなが助けにきて、カバンちゃんの成長も見られる展開になるはず、って思っていたよ)になってよかったなあってなった。
 真っ当な作劇を真っ当にやっている感じが好きなのだ。
 吉崎先生の作品世界に対する愛情というか、それを楽しむ人への姿勢というかが「ああ~ やっぱり~!」って感じられたので。

 もちろん、色々と世界の謎の部分や「この先どうなるの?」な部分はあって、その寂寥感は『猿の軍団』以上(あっちは謎のハッピーエンドだからね)なのだが、それでも微笑ましく清々しく終わるのがたまらない。

 というわけで、久しぶりに深夜アニメを堪能したのであった。
 続編が作られてもよさそうなお話だし、これだけ人気が出たら作られるだろうけれど、このテイストは守られて欲しいなあ。

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