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バイオマス熱供給のビジネススキーム

西粟倉で実際にバイオマス熱事業に携わり、いろいろ考えさせられることがあります。今日はその1つである木質バイオマス熱のビジネススキームについて。

バイオマス熱とは、薪やチップボイラーなどで、給湯や暖房のための熱を供給することであり、電気を作ることとは違います。(もちろん、電気も熱も供給することがベストですが現状はまだこれが普及していません)

1)現状と疑問
まず、現状の西粟倉のスキームですが、公設民営です。つまり、村役場がボイラーや配管などの初期投資をして、ランニングは民間に任せるということ。この民間=sonrakuであって、僕らは初期費用を回収する必要はありません。ここに疑問を持つ方がいるのではないでしょうか?

一般に再生可能エネルギーといえば、太陽光発電や風力発電を思い浮かべることと思います。そうした事業は、初期投資をして太陽光パネルや風車を設置し、売電によって投資回収をしていきます。バイオマス熱も同じ再エネですから、それを当てはめようと。

2)安価な売値、高価な仕入れの現状
確かに、バイオマス熱は再エネです。しかし、電気は非常に高い価格で買ってくれる制度(固定価格買取制度:FIT制度)がある一方、熱にはそれがなく、非常に安価な灯油や電気(エコキュートなど)と勝負しなければなりません。高い価格で買ってもらえる再エネ売電とは異なり、純粋な市場原理の中での勝負です。

合わせて、仕入れも厳しい環境に置かれています。皮肉ですが、大規模バイオマス発電が流行っているおかげで、木材(未利用材)の仕入れが上がっています。ちなみに、未利用材はほぼ用材として使われない材ですので、材価全体への影響は地域によって異なりますが、林業を爆発的に支える効果はありません。

まとめると、販売価格は灯油などとの勝負、木材仕入れ価格はバイオマス発電との競争になっており、二重に苦しい状況です。

3)ビジネススキームは他の給湯器と同じはず
また、バイオマス熱は、他の給湯器と同じ役割を果たしているはずです。みなさんの家庭にはどういった給湯器がありますか?ガス湯沸かし器、エコキュート、灯油ボイラーなどがあると思います。こうした設備は誰が金銭負担しているでしょうか?みなさん個人、または大家さんなどではないでしょうか?

つまり、薪やチップなどを供給するバイオマス熱供給事業者が初期費用を負担するのではなく、需要者(使う人)が初期費用は負担していますよね。こうしたビジネススキームと同じはずなのに、「再エネ」であるために、初期費用は熱供給事業者が負担してね、ということに見られがちです。

4)初期費用の高さが大問題
なぜ使う側が入れられないのか。それは初期費用が高すぎることです。今、家庭でお使いのボイラーは、大半40万円まで。しかし、欧州製薪ボイラーや給湯器付き薪ストーブなどは、100-200万円します。これだと、使う側は入れません。そして、熱供給事業者が投資することになりますが、長期の回収になり、誰もやりがたりません。ですから、投資回収の必要性の低い、あるいは他の価値を言及しやすい自治体のみが多く導入しているのです。

その他、燃料供給インフラ、メンテナンス、燃料供給手間、などの問題もありますが、長くなるのでこのへんで。

5)まとめ
とにかく初期費用を下げ、使う側の初期費用負担にして、利便性も高め、燃料供給インフラを高めることこそ、バイオマス熱が広まる方策です。ここ10年以上ずっと初期費用が高いまま。そろそろなんとかしないと、バイオマス熱は今後10年たっても変わらず、雌伏の時を抜け出せないでしょう。

いよいよ無理なので、バイオマス発電やって、電気を高く売って、廃熱で熱供給するのが現実的だよなと思っている今日この頃です。

ということで、いろいろがんばります!笑

いつもありがとうございます。 サポートのほど、どうぞよろしくお願いします!