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母性保護とジェンダー平等

新型コロナウイルス感染症の流行により、

わたしたちの生活は 大きく変わりました。

それと同時に、それまで見えなかった女性の雇用の問題

非正規労働の低賃金、男女の賃金格差などが可視化され

大きな気づきと 学びを経て、社会的な運動へと

発展していきました。

そして またひとつ、コロナ禍によって収入が激減し

大勢の女性が 生理用品が買えず苦しんでいる

「生理の貧困」という問題を知りました。

お金が足りなくて、生活必需品である生理用品が

こまめにとりかえられない。トイレットペーパーや

キッチンペーパーで代用して、かぶれたり 炎症を起こしたり

生理用品が十分でないことから、学校や 会社に行けないなど

日常生活にも影響する。「生理の貧困」とは 

経済的貧困の問題だけじゃない。

人が人として生きていく 尊厳に関わる問題であると。

今回は、「生理の貧困」からたどった母性保護の観点から

ジェンダー平等について考えてみたいと思います。

さいごまでお付き合いくださるとうれしいです。


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◆生理の貧困をめぐる世界の動き


日本で広く「生理の貧困」が知られるようになったのは

コロナ禍がきっかけですが、調べてみると世界では

アメリカをはじめ、もう何年も前から

「生理の貧困」の問題が取り上げられていました。

「Period Poverty(生理の貧困)」をなくそう!

誰もが負担でなく、生理用品を使えるようになるべきだ。

海外では生理用品が高くて買えず 代用品でしのぐ女性が

多くの国で 深刻な社会問題となり、

無償で提供するための法改正や 軽減税率などの取り組みが

始まっています。

2017年、最初にスコットランドのモニカ・レノン議員が 

まずは低所得者に、ついで2020年すべての国民に

「スコットランドの全女性が公共施設において 

いつでも無料で生理用品を

受け取れるようにする。」と発表。

「生理用品が無料で手に入る最初の政府」と

いわれました。

2019年にはイギリス政府が11歳~18歳の女子学生に対して

生理用品の無料配布を決め、

おとなり韓国でも ソウル市議会が18歳までのすべての

女子学生に無償で支給。

ニュージーランドでは、生理用品が十分でないことから

学校を休む生徒が続出し 2021年6月すべての学校で

生理用品を無償提供すると発表。

アーダーン首相は「人口の半分の人々にとって当たり前な

生理を理由に 若者の教育機会が奪われてはいけない。」

とコメントしています。

フランスは 2021年9月までにすべての学生に生理用品を

無償提供することを目指すと表明。

またイギリスでは もともと生理用品は

軽減税率の対象でしたが非課税になり、

インドでは2018年から オーストラリア・カナダでは2019年から

生理用品の課税が撤廃されるなど、この問題に対する動きは

さらに活発化してきています。

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◆男女でわける性教育の弊害


日本では、それまで議論になることもなく海外の運動も

知られていませんでした。

しかし、コロナ禍で「生理の貧困」が可視化され

多くの地方議会、市民団体、野党の要望などもあり

政府は 新型コロナ貧困対策として、2020年度の予備費から

約13億5,000万円の交付を決定しています。

でも あくまでコロナ禍での一時的な措置ですから、

アフターコロナであっても継続的な無償提供や

消費税の課税対象から除く政策が求められるでしょう。

さて、この一連のムーブメントを目の当たりにして

「男だから よくわからないけど、たいへんだね!」

そう言ってる男性が 多くいるのではないでしょうか?


わたしが子供の頃

「初潮や、生理についての授業」つまり最初の

性教育は 女子だけが一つの部屋に集められ、

カーテンを閉めきり 暗くした中でスライドを観る。

というものでした。それは、今でも変わりないですかね?

何も知らされていない男子は、なんで女子だけ?

なにしてたの?最初は不思議そうに聞いてきた男子も

女子が誰もみな 口をつぐみ黙っている姿に、

触れてはいけないもの、聞いてはいけないものという

空気感がただよい それ以上 話題にしなくなる。

そんな感じでした。

でも、ジェンダー平等が求められている現代において

男女で性教育を分ける必要があるでしょうか?

女性のからだにしか起きないことだからと

知識や経験を共有せず、女性だけに限定した結果

男性には知らなくてよいこと わからなくて当然という

今の空気をつくっているのだと言えます。

生理の経験があるかないかに関わらず

男女いっしょに学ぶ性教育であれば、同じ知識を持って

お互いに恥ずかしがらず、

必要な時に 話題にすることができ 

人としての尊厳を守り 理解を深めることが

できると思います。

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◆労基法が定める母性保護


それは職場においても だいじなこと。

数年前、私の職場の上司は 30代の正規社員の男性で

その方が部門のチーフでした。ほかに20代の正規の女性が

サブチーフでいたのですが、若い女性ほど生理痛がつらい

場合が多く 「一度出産したら だいぶ楽になるんだけどね~。」と

母親ほどの年齢のわたしたちパートは いつも気の毒に思ってました。

ある日、チーフが サブの女性に何やら話をしているとき

突然、「お前!なに 俺が話してるのに、生意気に腕組みしながら

聞いてんだっ!」と怒鳴りつける一幕がありました。

わたしたちには、彼女がけっして生意気な態度でいたのではなく

ただ生理痛がつらくて、おなかの前に手を当てていただけだと

わかっていましたから、一斉にチーフを取り囲み

抗議したのでした。

労働基準法第68条には、

「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が
休暇を請求したときは、その者を生理日に
就業させてはならない。」

と定められています。(違反した使用者は30万円以下の罰金)

生理日とは、生理に伴う下腹部痛、腰痛、頭痛などの

不快な症状がある日を言い、「著しく困難」の判断は

本人に任されています。

1985年 日本政府は国連の女性差別撤廃条約を批准するための

法整備として「男女雇用機会均等法」を制定しました。

ところが、「男女平等であるならば 女性のみを保護する

規定はおかしい。」と、「女子保護規定」の撤廃を強行。 

これにより労働基準法の条文標題から

「生理休暇」の文言は消されましたが、権利は残っています。

しかし、権利はあっても 自分から困難な状況を説明し

休みを申し出ることは、なかなかハードルが高く

使えていない現状があります。

これからの教育現場では、フランスのように

日本も 性について「いやらしい、恥ずかしい。」という

感情が芽生える前に、すべてのこどもたちに平等に

生理が からだの自然な現象で、女性にも男性にとっても、

どれだけ大切なものか教える必要を感じます。

日頃から もっとフランクに話し合える雰囲気があれば

女性も、自分の身体をだいじにしながら いきいきと

働くことができるのではないでしょうか。

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◆女性の尊厳を奪うもの


また今回の記事を書くにあたり、

ネットで「母性保護」を検索していたところ

目に留まったのが、日本大百科全書(ニッポニカ)

「母性保護」の解説

母性保護とは妊娠、出産、授乳などの母性機能および準備機能を
保護することをいい、女性労働者に対する保護の一環として生まれた。
母性機能は 次世代の労働力を再生産するという
社会的役割を持っている。

という一文です。

なんだか、後半部分が嫌な感じ。

思い出されるのが、2007年 当時の厚生労働大臣が

「女性は子供を産む機械」と発言し大炎上した件です。

女性の人権を無視したような、まるで戦前の家父長制を

彷彿とさせる、物言いです・・・。

戦前の日本は 男尊女卑の徹底した差別社会で、

民法という法律で定められた「家」制度の下では、

妻は夫の持ち物でした。

女性には 人としての尊厳など与えられず、

男性中心に作られた社会構造が

ながらく女性を支配して従えてきたのです。

ところが、このような女性の地位を

ガラリと変えたのが

日本国憲法でした。

戦後 この新しい憲法のもと

「家」制度は廃止され、

民法の大改正が行われた結果

女性は等しく 自由と権利を手にしたのです。

しかし、まだまだ 男女間の不平等は存在しています。

あらゆる不平等をなくし、よりよい世の中をつくろうとする

女性たちの運動は 時代の大きなうねりとして、

現代まで連綿とつづいているのです。


ジェンダー01


◆まとめ


そして今、「みんなのために」行動を起こし

社会を変える希望の光となっているのは まちがいなく

Z世代といわれる、若いちからでしょう。

日本では 20代の学生グループが、生理用品は

ぜいたく品ではなく生活必需品なのだから

「生理用品を軽減税率対象品にしてください!」

という電子署名を呼び掛けています。

幼少の頃より ネット環境やスマホに慣れ親しみ、

デジタルが当たり前の時代に生まれてきた世代。

わたしのような 昭和の時代に生きてきた世代

とは、まったく異なる価値観や感性を持つと言われる

彼らは 古い価値観にとらわれず、みずから考え

社会の問題に対し 果敢に行動する人たちです。

彼らの行動は、多くの同志を巻き込み 波紋のように広がり

必ずやきっと、政治を動かすちからとなるでしょう。

時に この国の政治は 年寄りの方ばかりを向き、

政治家は票集めに 高齢者に有利な政策しか考えない。

若者からは摂取するだけ。少子化対策などまるで関心がない。

そんな声が聞かれます。

圧倒的に高齢者が多いこの国で、

数の上で この先 政治が変わるわけがない・・・と。

本当にそうでしょうか?

確かに国内だと人口構成比の割合では

若者が少ないのは事実です。

でも、若い世代は幼少からネットに慣れ親しみ

簡単に世界とつながる術を身に着けているのです。

これからの若い世代には、世界を味方に

政治を変えられることを信じて

世界とともに手を取り合って 

よりよい社会をつくってほしいと願っています。


以上になります。

最後まで 読んでくださり、

ありがとうございました。

なお、日本の性教育事情については

こちらの有料noteにも 別の角度で書いてますので

あわせてお読みいただくと嬉しいです。

#生理の貧困をなくそう #ジェンダー平等

#日本の性教育 #労基法と母性保護

#生理休暇は権利










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