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20211117|待宵月

つかれた。やっと疲れられた。うれしい。とても嬉しい。ほら、拙い語彙。ずっとこの時を望んでいた。ねむい。寝ちゃいたい。でもいま寝たら、きっと起きたときぼんやりしていてなにか落とし物か忘れ物をしちゃいそうだから、かろうじておきていよう。そしてさらにもう少しつかれよう。

やっと思考が止まる。かしこくなりすぎたんだ。もっとふうわりさ、ぼんやり生きてたはずなのに、いつからか演算が止まらなくなっていた。ここくらいでちょうどいいんだよ。思い出したかったこのレイヤー。やさしいせかい。ただ見ている。ただバスの動きに合わせて体が揺れる。ただここに座っている。なにか食べたいと思っている。ラーメンがいいかなとか思っている。このあと乗る夜行バスのことを考えようと思っても、いまいち出てこない。あとでいいや。いっこおわってから、次のこと考えればいいや。だって考えられないんだもの。

心地よい低スペック。思いだした。これが人間をしていたときの原点だ。いつからかつかれなくなっていた。欲求が全部きえた。ねむいたべたいきもちよくなりたい。それらが情報のひとつになりさがった。つかれないからだ。演算しかすることない。

考えたくて旅に出た。あちこち走り回っていろんなものを見て一生懸命何かを読み取ってそこか、何かをイメージして、その合間に移動も挟んで、他の人との仕事もこなして、限界はどこだ。月が満ちるまでにたどり着くだろうか。線が見たかった。いまのあなたの最高値はここですよという線。その先を見つけたらまたその先と出会える。これまでを繰り返したり、誇らしげに語るんじゃなくて、空白に絵を描きに行ける。

いっぱいひらめいたし、いっぱい誰かになにかを伝えた。材料をたくさんたくさん拾い集めたのに、今何ひとつ思い出せない。考えようとしても頭が回らない。最高だ。これまで起きたことはあたりまえとして身体に格納された。ただあればいい。つかれたという言葉と共に、緻密に構成され複雑な均衡をとっていた思考ロジックは灰燼に帰した。

軽くなった。昨日までのわたしおつかれちゃん。明日起きたときどうなってるか楽しみ。

#諸国漫遊2021

広大な仮想空間の中でこんにちは。サポートもらった分また実験して新しい景色を作ります。