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授乳の聖母マリア

Madonna Lactans

聖母マリアの母乳

聖母マリアの誕生日9月8日とされている。マドンナ大好きなヨーロッパの国々イタリア、フランス、スペインの各地で様々な祝祭事が開催される。
聖母マリアは被昇天しているので聖骨の聖遺物はないはずだが、聖母マリア関連の品々(?)はヨーロッパ各地に伝わっている。
眉に唾を付けなければならないものが多く、極めつけは「聖母マリアの母乳」ではないだろうか?

聖ロレンツォ司教座教会の主要祭壇

イタリア中部のトスカーナ地方のモンテヴァルキ(Montevarchi)聖ロレンツォ司教座教会の主要祭壇に「聖母マリアの母乳」が顕示されている。
ヘロデ王の幼児虐殺命令を受けて、聖家族がエジプトに逃れる道中に休息をとったヤシの木陰で、聖母が幼児イエスに授乳した際にイエスの口元からこぼれたミルクだといわれている。

聖母マリアの母乳の聖遺物容器

聖母マリアの母乳」は、1266年、フランス王ルイ九世(後の聖ルイ王)が、弟公シャルル・ダンジュが支配していた南イタリアのべネヴェントの戦いで功を挙げた、モンテヴァルキ出身の伯爵に褒賞として与えた。
ルイ九世は、第一回十字軍に参加し、エルサレム王国の王となったフランス人ボードゥアン二世からイエスの茨の冠聖釘聖十字架の破片などなど、大量の聖遺物を強奪?購入?していた。
その中に「聖母マリアの母乳」もあった。

ミサの様子

聖母マリアの誕生日の夕刻、18時からモンテヴァルキの聖ロレンツォ司教座教会でマリア誕生記念の晩の祈りがある。聖母マリアの誕生日を挟む1週間は、モンテヴァルキの祝祭週間で色々なイヴェントも開催される。
教会前の広場では中世からある古い井戸にボールを投げ込むラグビーとバスケットを合成したような中世のスポーツ競技のゲームもある。

教会前の広場で行われていた中世のスポーツ競技
聖母マリアの誕生日の祝いのプロセッション

聖母マリアの誕生日の夜、21時から町外れの百合の聖母マリア教会から、老人ホーム聖母マリア園に立ち寄り、聖ロレンツォ司教座教会までプロセッション(行列)がある。「聖母マリアの母乳」を顕示した司祭たちを全町民が先導する約1時間のローカル色豊かな熱いプロセッションだ。

「授乳する聖母(画家不明 15世紀 フランドル派、デジョン美術館所蔵)」

「授乳の聖母マリア」は、中世末期14世紀頃から聖母の優しさ、人間性、親子の緊密さ表現するための題材となった。当時フランドル地方を支配していたブルゴーニュ大公国の王侯貴族の依頼でフランドルの画家たちが多く描いている。


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