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日本の介護現場に必要な2つの要素、「移動と承認」③

日本の介護に必要な、「移動と承認」について。最終回は、日本の介護がより魅力的になるための「移動と承認」ついて、です。

私の問いは、「どのようにして介護職に最高の承認を与えることが出来るだろうか」です。

介護の本質は日常生活支援です。他人の人生を支える脇役から、自分の人生の主役になる機会をどうやってプロデュースしていくか。私には腹案があります。

日本の介護職人を国際舞台に引き上げることです。


先週フィリピン第二の都市セブで行われた認知症ケアの国際イベント。スピーカーのほとんどは、お医者さんです。アカデミックや医療分野からの話が続くと、正直飽きます。


認知症ケアイベント会場にて

インドネシアのお医者さんは、制限時間20分のところを1時間以上話を続けて、日本人にはないメンタルの強さを感じました。

しかも、自分のプレゼンが終わったら、さっさと会場を後にして飛行機でインドネシアに帰ったようです。おかげで私のプレゼン時間は15分に短縮してしまいました。


15分でも頑張ってプレゼンしました
すでに開き直っています(笑)


さて、イチ聴衆としてイベントを観察して思ったこと。

現場の話がほとんどなかった。

なぜなら、日々の現場を支えている介護職が舞台に立つことがなかったからです。

唯一、認知症の母の家庭介護を実践した女性がプレゼンをしましたが、彼女が舞台に上がることが出来たのは、介護体験記を出版した著者だからです。


主なスピーカーは医者か看護師

グローバルな視点で見れば、介護職は医療のヒエラルキー(階層)の中で最下層に位置します。その介護職がスピーカーに選ばれることはよほどのことがない限りありえないのです。

しかし、先駆的な老齢医学のお医者さんは、生活の専門職である介護職の重要性を認識しつつあります。

イベントが終わってから、ちょうどフライト時間が近かったので、マレーシアのお医者さんとタクシーで一緒に空港に向かった時のこと。

遠慮がちではありましたが、日本の認知症ケア学会が英訳したテキストを酷評していました。それもそのはず、内容が全くアップデートされていないからです。

「あのテキストを勉強して実践的に役立つことはいったい何なのか?」と質問されましたが、答えられませんでした。せめてもの言い訳として、「日本語のテキストはアップデートされいるはず」とだけ付け加えました。

認知症や高齢者介護のアカデミックなことや医療的なことは、ネットからいくらでも情報は手に入ります。世界の聴衆が求めているのは、現場で何が起こっているのか、現場で役立つ実践的な技術やノウハウが何なのか、です。これらの情報を蓄えているのが、日々現場で働いている介護職人の方々なのです。


日本のオムツ交換の技術は世界レベルです


【世界に出て承認を得る】

日本の介護職人が、海を渡って国際舞台に出るとなると、距離の壁、語学の壁などいくつかの障壁はあるものの、それを補って余りある世界へのインパクトと、最高の承認が得られるはずです。

自分たちが日々行っている介護が、世界と繋がっているイメージをもって現場の仕事をしている人どれくらいいるでしょうか?


私が、コロナ禍の間の一時帰国中に過ごした2年間の現場修業の時は、常に私の頭の中では、介護と世界が繋がっていました。

それはなぜかと言うと、世界を見てきてから日本の介護現場に戻ったからです。「この考え方は世界に持っていけるな」とか、「日本の介護のこの部分を世界に向けてプロデュースしたいな」とか、常に世界とリンクしていました。

なので、他人から承認が得られなくても、私の脳内では世界人口80億人のマーケットに日本の介護を届けるイメージを持っていて、承認が自動生成され続けていました。


日本の介護は世界で求められているというのが、私にとっての最大の承認です。


この感覚を多くの介護職人の方々と共有したい。単調に思える日々の介護が、実は世界と繋がっていて、世界に大きなインパクトを与える可能性があることに気付いてもらいたいのです。

日本の介護がもっと魅力的になるために必要な承認とは、国を超えて、世界に出て享受するのがよいのではないか、というのが私の結論です。

そのために必要なのが、「移動と承認」。

今後もこのテーマを軸に、日本の介護を世界に届けていきます。

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