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日本の介護現場に必要な2つの要素、「移動と承認」①

移動と承認。

最近、日本の介護を俯瞰して思うことは、この2つのワードです。今回は、移動について私の思うことを書きます。

京都で訪問介護のヘルパーをしていた時は、コロナも相まって全くといっていいほど移動しませんでした。限られたエリアの、限られた人間関係の中で、日々の業務を淡々と遂行してきました。

介護の本質は日常生活支援です。利用者さんひとりひとりの日常生活を支援するということは、利用者さんが心地よいと思える日々のルーティンを繰り返すことを意味します。


オムツ交換
掃除や調理
トイレ介助でひたすら廊下で待ち続ける

歳を重ねれば重ねるほど、障害が重ければ重いほど、環境変化による負荷がしんどくなります。介護士も環境の一部です。なので、毎週同じ時間に、同じ手順で、同じことをそつなく繰り返すことが大切です。

私は、一定期間「移動」を制限することで、介護の専門性が深まりました。

興味関心を外に拡張するよりも、内にこもって限られたエリアの中の、限られた人間関係を深めていくことで、私が担当する利用者さんの日常生活とは何かを、とことん考え抜くことが出来たからです。


ヘルパーとして京都市内をバイクで走り回りました

そして、ある程度の期間が必要でした。なぜなら、その人の日常生活に踏み込むためには、時間を掛けて人間関係を構築しなくてはなりませんし、その人の日常生活の全体像を把握するためには、日常生活の様々なシーンを観察しなくてはならないからです。

人間関係の構築日常生活全体像の把握には時間が掛かります。

介護士がよく犯すありがちなミステイクは、その人の日常生活の一部を切り取って、「この人はこうだ」と決めつけることです。さらに悪いケースだと、「この人はこうあるべきだ」と、自らの価値観を押し付けてしまいます。

介護の専門性を深めるために、移動を制限することは大切である一方で、それだけだと自らの価値観が硬直してしまうため、知らず知らずのうちに、自分の価値観を押し付けてしまう可能性があります。相手が弱い立場にいる場合、その傾向が強まります。

なので、教育者の視点から考えると、良い介護士を育成するためには、定期的に「移動」を組み込んだ方がよいと思います。

異なる場所で、異なる人の、異なる価値観に触れることで、自らの価値観の許容範囲が広がり、人に対してもっと優しくなれるはずです。


マレーシア人のドクターと@認知症ケアイベントにて

介護の本質は日常生活支援であるため、移動との親和性が乏しいです。なぜなら、異なる場所に移動するということは、「非日常」だからです。しかし、多様な価値観に触れるためには、移動して非日常を経験する必要があるのです。

日本の介護がもっと魅力的になるためには、介護士のキャリアパスの中に、どうやって「移動」をデザインするかが1つのカギになると考えています。


海を越えて「移動」してやってくる外国人介護士の存在が、起爆剤になるのではないかと期待しています。


日本で働きたいフィリピン人ワーカーの皆さん


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