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Sequoia出資先の中国No.1フィギュアメーカー「Pop Mart」が香港証券取引所にIPO申請。売上が2年で10倍と爆増中

中国の大人気おもちゃメーカー「Poop Mart」が香港証券取引所に上場申請書類を提出したようです。

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調査会社「Frost & Sullivan」によると、Pop Martはポップトイ(フギュア)売上で中国No.1のフィギュアメーカーとのこと。

企業概要も調べつつ目論見書を簡単にチェックしてみます。

Pop Mart概要

Pop Martは2010年に中国で設立されました。

ポップマート__

Pop Mart

2010年に小売1号店を北京のショッピングセンター「EC Mall」で立ち上げたのが始まりで、2014年には同社初のライフスタイルをコンセプトとした旗頭店を「APM Shopping Mall 」にオープン。最初はおもちゃに限らず電化製品や食品などを販売するバラエティショップでした。

2016年にはTmallおよび自社開発アプリ「Paqu」をリリースしてオンライン販売も開始。

そして、Pop Martを中国有数のおもちゃブランドに押し上げたのが、2016年に販売を開始した「MOLLY」です。

「MOLLY」とは香港の有名デザイナーKenny Wong氏がデザインしたフィギュア、Pop Mart初のオリジナルおもちゃシリーズです。

中国では人気アーティストお手製の「デザイントイ」の人気が高まりつつありました。デザイントイはPop Martの取扱商品の中でも特に売上が伸びていたカテゴリでしたが、販売スタイルは展示会での手売りが一般的で市場流通はわずかだったとのこと。

さらに、当時は中国国内でデザイントイの展示会は開催されておらず、中国のデザイナーの主な販売チャネルは香港や海外となっていました。

2006年にMOLLYを生み出したWong氏は生産委託工場をもつ数少ないデザイナーの1人でしたが、MOLLYの年間販売数は当時は1万個前後だったようです。

ブランド・アーティスト紹介___ポップマート

Pop Mart Artists

デザイントイ市場に目を付けたPop Martは、自社でサプライチェーンを開拓する戦略に打って出ます。

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包装を中身の見えない「ブラインドボックス」に統一し、大量生産を実現。MOLLYは大ヒットとなり、初の商品シリーズ「黄道十二星座」はTmall旗艦店でわずか4秒で完売したほどの人気ぶりでした。

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2017年には「おもちゃ自販機」を設置したことでも注目を集め、Pop Martの知名度が急速に向上。2019年末時点で中国内に825もの自販機を展開しています。

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MOLLYの成功を受けてPop Martは次々とデザイナーを囲い込み、現在は専属で25人、単発の案件も含めれば350人以上と関係を構築しています。社内にも制作スタッフを抱え、デザイナーと二人三脚で市場の最新動向にマッチした商品を開発。「PUCKY」や「LABUBU」、「FLUFFY HOUSE」といったオリジナル商品シリーズはすでに50を超えています。

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1級都市の高級ショッピングモールを中心に出店を拡大し、2019年には実店舗数が100店舗を突破。そして、2019年4月にはヨーロッパの企業と提携して海外進出も開始しました。

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株主構成を見ると、創業者である王氏の保有比率は56.8%で最大です。どうやらSequoia Chinaも4.96%出資しているようです。

Pop Martの業績チェック

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Pop Martの業績は、まさにうなぎ登り。2019年の売上は16.6億元(約252億円)と前年の3.3倍、2年で10倍以上に爆増しています。営業利益も6.0億元(約90億円)と前年の4.5倍、営業利益率35.6%と収益も高いです。

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大きな借入金はなく、おそらく店舗であろうリース負債が増加しています。

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営業キャッシュフローもプラスで、急成長を遂げながらきっちりキャッシュも生み出しています。

Pop Martの売上構成

まずはIPごとの売上構成を見てみます。

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代表シリーズである「MOLLY」は売上全体の27.1%を支えています。2018年に投入した「PUCKY」が3.2億元(48億円)と18.7%を占めるまでに成長。そして、2019年の新作「Dimoo」と「The Monsters」売上がそれぞれ1億元と大ヒットしたようです。

自社オリジナルシリーズの売上構成比が29.0%→66.0%→82.1%と拡大し、オリジナル商品戦略の大成功がPop Martに爆発的な成長をもたらしていることが分かります。

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チャネル別売上では、小売店が7.4億元(111億円)と約4割を構成。上で確認したように、2019年末の店舗数は114店舗(前年+51店舗、+81.0%)です。

「自販機:Roboshop」の売上は前年の2.9倍となる2.5億元(38億円)ほど。2017年時点で43機程度だったのが、翌2018年には260機(6倍)、そして2019年末時点で825機(3.2倍)に増加しています。

さらに急成長をもたらしているのがオンライン・チャネル。

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2016年にTmall旗頭店を開設し、2019年「独身の日」売上はおもちゃカテゴリー全体で1位に輝いています。2019年のTmall売上は2.5億元(38億円)。

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2018年にはWeChatミニプログラム「Pop Draw」も提供を開始。中身の見えない「ブラインドボックス」をバーチャル開封できるエンタメ要素も人気となり、2019年の売上は2.7億元(41億円)とTmallを上回りました。その他、自社アプリ「Paqu」のコミュニティ機能もユーザーエンゲージメントを高める一因となっています。

2019年にオンライン総売上は前年の5.2倍となる5.4億元(81億円)に拡大し、Pop Mart全体の30.2%を支えるまでに成長しました。

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Pop Martはデザイントイ文化の発展とアーティスト支援のため、展示会も多数開催しています。2019年は合計44回も主催し、270人ものアーティストが参加。累計10万人以上が展示会に訪れ、日本でいうコミケ的な盛り上がりを見せているようです。2019年の展示会売上は4,552万元(7億円)でした。

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Pop Martの構成比はわずか2年で劇的に変化しており、オムニチャネル化に成功していることも躍進の要因となっています。

市場環境〜世界全体のフィギュア市場は2兆円規模、今後5年で2倍以上に拡大する見通し〜

最後に目論見書で主張されている市場環境もチェックしてみます。

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2019年の中国ポップトイ(フィギュア)市場は207億元(3,105億円)と市場は右肩上がりに拡大中。Pop Martの売上は16.6億元でしたので、10倍以上の拡大余地があることになります。2024年までのCAGR(年平均成長率)も29.8%と高成長が続く見込みで、2024年の市場規模は763億元(1.1兆円)に達すると見られています。

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冒頭で見たように、Pop Martは既に中国市場ではNo.1ブランドに位置しています。昨年に海外進出を開始しており、見据えるのはグローバル全体の市場。

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 2019年時点で、世界全体のポップトイ市場規模は198億ドル、2兆円を超えています。今後5年間のCAGRは17.7%で、2024年には現在の2倍となる448億ドルまで拡大する見通しです。

海外市場における競合として、アメリカには似たような企業で「Funko」というフィギュアメーカーが上場しています。

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Funko Fourth Quarter Fiscal 2019 Earnings Presentation

ボブルヘッドが人気プロダクトで、MLBとライセンス契約していることでも有名。ディズニーやFortniteといった強力IPの獲得にも成功しています。

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2019年の売上は約9億ドルで、売上規模としてはPop Martの3倍以上です。フィギュア売上は81%程度、今後は世界的IP群を最大限に活用して商品構成を多角化していきたいようです。

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海外売上比率は2016年の17%程度でしたが、2019年には34%まで上昇しました。

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コロナ禍により小売店が閉鎖されてしまった影響もあり、2020年1Qは▲18%も減収してしまった模様。現在の時価総額は2.9億ドルです。

これまで飛ぶ鳥を落とす勢いで売上を伸ばしてきたPop Martですが、Funkoと同様にコロナ禍での店舗閉鎖が業績にどれだけの影響を与えているのか気がかりなところ。しかし、彼らの成長ドライバーはオンラインにシフトしており、思っているよりも打撃は小さいかもしれません。

これからPop Martの商品が世界的人気ブランドになっていくのか、今後の展開が非常に楽しみです。

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