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通小町 かよいこまち どろろで語る能楽

名古屋能楽堂の七月定例公演を見てきました。
二年前から能楽を定期的に見始め、その雅な物語の数々にすっかり虜になってしまいました。
そして自身の推しキャラクターに当てはめて妄想するともっと深みが広がって楽しくなりました。
どろろと百鬼丸を生み出した手塚治虫先生は、「羽衣」や「安達ケ原」などの能楽を題材にした作品を描いているわけだから、彼らに能楽が合わないわけはない!!
特に今回見た「通小町」ほど、どろろと百鬼丸にぴったりな演目はありません。
過去に先の「羽衣」を題材にした彼らの同人小説を創作したことがあるのですが、この「通小町」は「羽衣」と並ぶ二大柱と思います…

能楽の演目が多くの古典文学を題材にしている中、この「通小町」は能楽師観阿弥の創作です。
とはいってもあの絶世の美女、小野小町を題材とし、「百夜通い(ももよがよい)」という架空の伝説を創作しました。
百と聞くだけで、舞い上がってしまうのですが、簡単な物語を解説すると、
 
ある初秋、京都の八瀬の山里で修行をしている僧がいた。
そんな彼の元に、毎日木の実や薪を届ける女性がいた。
彼女こそ、生前、絶世の美女と謳われた小野小町の霊であった。
小町は、仏戒を授かりたいと僧の元に通っていた。
そこへ、彼女を引き留めようとする一人の男性の霊が現れる。
彼は、生前、深草の少将と呼ばれ、小町に恋焦がれていた。
僧は、小町と少将に生前交わした「百夜通い」を再現するように伝える。
即ち、「少将が百日続けて小町の元に通い続けたら、小町は少将の物になる」という約定である。
少将は約束通り、雨の日も雪の日も、小町の元へ歩いて通い続ける。
そして九十九日が過ぎ、百夜となった。
少将は艱難辛苦を越え、満願成就、契りの杯を交わす。
こうして少将と小町は仏縁を得るのだった。

です。
そして能楽の重要な要素として、七月頭に上演する通小町、

季節 秋(9月)

場所 京都 八瀬


このように季節を先取りしている事、
そして登場人物について、専門用語になりますが、

仕手(シテ)主人公 深草の少将

連 (ツレ)主人公に伴う役 小野小町

脇 (ワキ)主人公に対峙して重要な役を引き出す 僧


これがそのまま違和感なくどろろの登場人物にあてはまってしまうんです!!

仕手(シテ)主人公 深草の少将=百鬼丸

連 (ツレ)主人公に伴う役 小野小町=どろろ

脇 (ワキ)主人公に対峙して重要な役を引き出す僧=琵琶法師


また、「通小町」は、小町とつくけど主人公は小町ではなく、深草の少将、というのが、「どろろ」だけど、主人公は百鬼丸、
連が、主人公に伴う役割、というのが、どろろは百鬼丸のバディである、という関係性が見事マッチング、
狂言廻し的な役割を担う僧も、「どろろ」本編でまさしくその役割をしていた琵琶丸にぴったりでしたね。
ここまで合う演目はありませんよ!!
更には「百夜通い」というテーマも、どろろの世界観にぴったりな素晴らしく浪漫のある内容と思いました。

服装や髪形もマッチングで、深草少将の被っている黒頭は、アニキの黒髪まんまだし、小野小町の髷や髷帯も、どろろの美しい髪を連想させます。

今回、この演目、主人公の深草少将も、連の小野小町も女性能楽師さんが演じてたんですよ。宝塚みたいで、素敵だった…

眠くなる事もありましたが、物語の魅力に負けて完走する事ができました。

通説でもある「百夜通い」では、深草の少将は九十九日目の深い雪の夜、思いを遂げられず息絶えてしまうんですが、能楽版ではそうではなく、百夜にして願いが叶う、という明るい結末で終わるのが素晴らしくて…

今、ここに新たなる百どろの物語がつくられました、
今後、何らかの形で、多分小説で、百どろ版「通い小町」が表現できれば、と考えてます。

そしてそのような題材作りの上でも、今後も能楽見続けます!!


   

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