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『永遠の昨日 完全版』(2023/テレビドラマ/日本)

2022年放送された『永遠の昨日』を再編集したとのことで、今年2023年4月から6月まで放送された。

ある雨の日の学校で、目があった瞬間に恋に落ちた高校の同級生青海満と山田浩一。時間をかけてじっくり親しい友人関係を築き、その後恋人同士になった二人。ある朝二人一緒の登校中に車に跳ねられた浩一は、”生きた死体”となる。そして限られた最後の日々を満と過ごす。
”生きた死体”という設定は奇抜だが、物語自体は落ち着いた感じで、映像も柔らかい色合いで撮られていて、全体的にしっとりした物語になっている。

原作は超人気BL小説とのこと。再編集したものを放送するくらいなので、ドラマシャワー 枠のBL作品の中ではかなり評判がよかったのだろう。昨年のオリジナル版と今回の完全版と2回見て、よくまとまった落ち着いた作品だと思うのだけれど、なんとなく私は、この”生きた死体”という設定にスッと馴染めないところがあった。
元々人の命には限りがあって、ずっと同じ状態でいつまでも生きていられないのは、生きた死体の浩一だけでなく、周りの生きている人間も同じ。浩一はだんだん死に近づいていて、迫りくる永遠の別れが悲しみをさそうはずだったのかもしれないが、生きている人間だって気付かないだけで実はものすごいスピードで死に近づいていて突然別れがくる事もある。或いは短い余生を突然告げられて絶望し、いつ訪れるかわからない最後の日に怯えながら時を過ごす事もある。”生きた死体”だけに永遠の別れが訪れるわけではない、となると、"生きた死体"でないと描けなかったことってなんだったのか。その辺りが私には今ひとつスッと入ってこなかったのかと思う。
もう一つは、満役の井上想良が私には最後までなかなか高校生に見えてこなかったこと。今までもこういうことはあったので珍しいことでもないのだけど、今回見直すまで自分でわかっていなかった。物語の終わりで大学生になったいた彼がとても自然に見えたことで、自分の中にあった違和感に今になって改めて気づいた感じだった。
泣けて泣けて仕方ないストーリーと聞いて、自分でもそんなつもりで昨年のオリジナル版を初めて見たのだが、私はそれほど泣けずに終わってしまった。何か大事ものを見落としたのかと思った。確かめたい気持ちもあり今回もう一度見てみて、自分がなぜあまり泣けなかったかが少し分かった気がした。

私はファンタジーの設定にいい悪いや正解はないと思っている。基本的にはその設定にスッと入り込めればそれでいいのだと思う。結局は好みの問題ということになってしまうのかな。
こんな事を書きながら、このドラマをいつか見直したら、滂沱の涙を流すのかもしれない。

私はこの物語の世界に入り込みそびれてしまったが、映像は昔の学園ドラマを思い出させる懐かしい雰囲気と落ち着きがあったし、俳優たちの演技も全悪くはなく、どこかドラマ全体が懐かしさを感じさせる(もしかして松村雄基のおかげ?!)しっとりと上手くまとまった作品だったと思う。
前にも少し書いたが、雨の日に昇降口で二人が偶然に視線をかわして恋に落ちるシーンが、私はとても好きだった。