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JAEAの先輩職員をご紹介!(研究職)

山田 逸平
J-PARCセンター 加速器ディビジョン

2022年度入社。J-PARCセンターの3つの加速器のうち、中段の3GeVシンクロトロンの真空システムの維持管理及び高度化を担当。

中央制御室にてデータ解析の様子

入社の経緯は?

———原子力機構が多数の研究者に囲まれる環境だったからです。
原子力機構は高エネルギー加速器研究機構と共同でJ-PARCセンターという大型の陽子加速器施設を運営しています。この加速器は世界最大強度のビームを出力できる最先端の装置です。このような装置を安定に運転するために、あらゆる分野の専門家が様々な技術を駆使したり、新たな技術開発のための研究を行っています。私は広い視野を持った研究者を目指しているため、このような環境に身を置いて修行したいと思い、原子力機構を志望しました。

加速器本体

現在の業務について教えてください

———大型加速器施設の高度化に貢献しています。
加速器は高エネルギーの荷電粒子ビームを扱うため、ビームが機器に衝突すると機器を放射化してしまいます。特に我々のような大強度のビームを取り扱う場合、わずかな割合のビームが機器に衝突しただけでも重大な放射化を引き起こします。そのため、加速器運転の安定化が我々加速器研究者の最も重要な使命となります。私は中でも加速器の真空システムの維持管理及び高度化に関する業務を担当しています。ビームは空気中の気体分子と衝突するとその軌道が変えられてしまい、機器と衝突して放射化の原因となります。そのため、ビームの輸送経路は真空に維持する必要があります。安定かつ良い真空がなければビーム運転ができないため、業務委託や派遣の方々と協力して、日々、真空機器のチェックやメンテナンス、たまにトラブル対応をしています。また、より高度で便利な真空ポンプの開発やそのメカニズム解明のための研究を行っています。そのほか、真空システムの管理とは直接的には関係ないですが、自分が興味のあるテーマとして、ビームと真空容器の相互作用やビームの新しい計測手法の研究も行っています。

現場作業の様子

JAEAに入社してよかったこと、入社して感じたギャップはありますか?

———担当業務が想像以上の規模感だったことです。
学生時代から原子力機構にて研究をしており,ある程度機構職員の業務は知っておりましたが,想像以上に真空システムの維持管理業務が大変でギャップを感じました。しかしこれはJ-PARC加速器の規模の大きさを表しており,その一部に責任を持っている,というやりがいはあります。学生のころ参考にしていた職員さんはそれほど忙しそうには見えませんでしたが,かなり仕事効率が良く,仕事が速い方だからだということに就職して気づきました。私も仕事量に慣れていくうちに少し効率がよくなったと感じています。

学生時代の専攻と、今の業務に関わりはありますか?
また、学生時代の研究は業務内容と同じ方がいいのでしょうか?

———『直接活かすも良し、独自のアイデアとするも良し』。
学生時代はJ-PARCセンターで使用するためのビームモニタの開発をしていました。現在はその研究が主な業務内容ではないため,直接現在の業務につながっているわけではありませんが、業務をこなしながら学生時代の研究を続けています。というのも研究職は施設の維持管理に加えて,完全に自らのアイデアで独自に加速器の高度化についての研究も行います。そのため自分の知識を活かせるような研究を立ち上げて進める,というのも手だと思います。一方で、業務内容とこれまでの研究分野が違っても,その知識(アプローチの仕方,計算手法等)は思いがけず利用できる場合が多々ありますし,現在の分野の固定観念から外れた独自のアイデアの元になると思います。研究関係で働く場合はこれまでに得た知識が足りないことはあっても役に立たないことはないと思いますので,あまり気にすることではないと思います。

どのような就職活動を行っていましたか?

———結果として原子力機構のみの応募となりました。
私は博士まで進学しており,自然科学の研究がしたかったので国立研究所もしくは大学教員に絞って就職活動を行っていました。博士課程を卒業した学生は基本的に各研究機関で博士研究員(ポスドク)をすることになり、その選考は夏〜秋にあります。ですがごく稀に研究員として新卒採用を行っている研究機関もあり、私の場合は原子力機構が運よく新卒を募集していたため応募しました。無事就職でき,他の機関に応募することはありませんでしたので,あまり参考にならないかもしれません。もし落選していれば夏ごろに他の研究機関の博士研究員に応募していたと思います。