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GPT4の登場で急加速する「ポストAI時代」を生き抜くための羅針盤(とあるC向け起業家の2023年3月の視界記録)

この文章の要約(GPT4+推敲):
AI群の掛け算の価値は過小評価されており、速い進化が予想される。
1.仕事は急速に変化し、情報加工業がAIによって置き換わる。
2.信頼と広義のブランドが重要になり、オーセンティシティ=嘘のなさと倫理感が信頼への基盤となる。
3.コモディティ化した物質的価値の低下と物語価値の上昇が見込まれ、体験や贈与などを通じて物語を増幅することが今後のキーになる。
4.フェイクが増える中で、個人の美学や意志が重要となり、偏愛的に何かを愛し、物語として語る能力が競争力につながる。
5.AIをメタ認知ツールとして他者や世界への想像力を獲得し、感情を共有するエンパシー(共感力)が求められる。

人間同士の不寛容さが減少し、寛容性が広がることを期待したい。AIと共に成長することで、個々の違いを価値・可能性として認識し、幸福な社会が構築されていくことを願う。

ミラティブ赤川です。ChatGPTとAIの進化、すごいですね。
この数週間だけで、人間というのは「五感+1センサーで入手したデータを、脳というCPU・GPU・HDetcの複合機能を通じて演算・エンコード・デコードを繰り返し、主に自然言語の形でコミュニケーションする生物」だったのだな…ということを痛感させられています。

個人としては正直なところ動きが速すぎてまったくついていけていないのですが、、少しでも集合知を競争力にすべく、ミラティブ社ではChatGPT Plus含む5万円までのAI関連費用補助のほか、業務時間の20%をAI関連の研究や試行錯誤に使えるAI自由研究制度を始めました。

ここから劇的な進化が起こっていくことは確実です。

スマートフォンを手にした時点で既に人類はサイボーグでしたが、身体センサーのデータをサーバーサイドに送信する手段と演算手法の拡張につれて、さらなる進化とパーソナライズも当然に進んでいくのでしょう。

人間の想像の世界はそれ自体がメタバース的な空間ですが、自然言語の形式で多次元の空間を生み出せる日も近づいてきているようです。

Software is eating the world、とこれまで思っていましたが、AI is eating softwareと言ってよい事態が既に始まっているように思います。


自身の思考整理を兼ね、現時点でのミラティブ社の羅針盤・錨のひとつとして、主に仲間や未来でこれから一緒に働くかもしれない人に向けて、今の現象や今後をどういうスタンスで見ているのかを書き残しておきます。

シンギュラリティの定義に沿うと「その日」はもう少し先なのでしょうが、2023年3月がシンギュラリティへの大きな変曲点として将来の教科書(そんなものが将来あるのかも定かではないが)に載る可能性は極めて高いと感じています。
そんな2023年3月の、文系/非理系出身者・職業C向け起業家の人類サンプルの記録として感じていることを残してみます。

0:AI群の「掛け算」価値の過小評価傾向

まず、現状の生成AIの能力やoutputを「まだまだ実用に足らない」と評価して斜に構えるのは極めて危険だと考えています。

既にGPT5の噂も出ていますが、Scaling Lawによってパラメータ数の増加が精度向上につながることが見えている以上、実用性のレベルに後退はなく前進が続くでしょう。

また、ChatGPTからもプラグインという形で掛け算の提示が先週末になされましたが、他のAIとの掛け算や各種クラウドサービスとの掛け算で普及が加速度的に進むはずです。

iPhoneの時は、真にiPhoneネイティブと言えるヒットサービスが出たのはリリースから3-4年後だったと捉えています(日本でのパズドラ、メルカリ、スマートニュース、海外のInstagram, Snapchat etc)。
踏まえて、真のChatGPT/最新型AIネイティブなサービスが出るのはもう少し先という見方もあるかなと思います。

一方で、iPhoneはデバイスとしての普及が1億台を超えたのもリリースから3年後でした。
既にChatGPTには史上最速での億単位のユーザーがいて、15年前と比べると多くのクラウドサービスやアプリが世界に普及しています。
ウクライナ戦争でも顕著なように、今の世界は分断されながらもかつてなく密接につながっています。

掛け算での進化はこれまでのあらゆる種類のイノベーションよりも速いであろうことが予想されます。


iPhoneの時もヒットを出せたのは当然にiOSをいじくり倒して、独自の視点でUXを作り上げた人たちでした。
まず徹底的に触ること、知ること、がないと、勝負の土俵にも立てないのは明白です。

1:仕事は急速に変化する


Microsoft copilot、Adobeの発表等が衝撃的ですが、今後1年、早ければ数か月以内に起こる進化によって、ホワイトカラーの仕事の多くがいかに「情報加工業」だったかが浮き彫りになっていくはずです。情報加工はAIの方が既に得意そうです。

結果、これまでの私たちの「仕事」がいかにブルシットジョブにあふれていたかを目の当たりにすることになるでしょう。
グレイバーの言っていたブルシットジョブの中では実は「取り巻き(flunkies)」の仕事≒権威づけが最後まで残るのかもしれないと思っています…^^)

特に米国では劇的な効率化に伴って容赦なくレイオフも進むでしょうから、予想される大統領選の大混乱も含め、短期的な社会不安は想像もつきません。
ベーシックインカムは、何の理想論でもなく、短期の社会安定のための必然として社会実装されるのかもしれないな、、と最近は思いはじめています。

いずれにせよ、これまでと同等の業務効率の実現は極めて短い時間で可能になります。

資本主義社会システムの変化そのものには一定の時間を要するでしょうから「9-9-6」の会社自体は残るでしょうが、ケインズが言っていたこと=週15時間労働で暮らす、や、週休3日の浸透は、少なくとも可否でいうと自然と可能になっていくでしょう。
ライフスタイルの多様化・個々人の選択の変化から、それを何とか企業価値に取り込もうとする企業側の思惑も発生していき、徐々に社会全体で労働や企業組織の再定義も進んでいくはずです。

変化する仕事の中で、「情報加工」だけでなく、「自分が」付加価値を新たに乗せられることは何か、それを考えて実行することを繰り返すことでしか、激変する社会はサバイブできなさそうだな…と感じています。

2:あなたは誰か、何を信じてやってきたのか 信頼とブランド


Outputの中身自体は、AIにより高品質でコモディティ化していきます。

結果、「何を言ったかよりも誰が言ったか」が良くも悪くも重要になっていくでしょう。
あなたはどう思いますか、あなたのスタンスは何ですか?がこれまで以上に問われ、価値になる時代です。

「誰が言ったか」が重要になるということは、つきつめるとその人や組織への「信頼」、つまり広義のブランドが重要になるということでもあります。

ブランドはいかにして成立するのか。
「シン・ラグジュアリー」にあったような「オーセンティックであること」、つまりさらけだされていてウソなく本物であること
相手・顧客の期待にこたえる行為を長い時期続けることで、「時間軸」というパラメータも含めて信頼を積み重ねていくことが、結果として真のブランドになっていきます。

理想論どおりに進むかはわかりませんが、真摯にブレずに価値提供に長く向き合い続ける人や組織が評価される時代になる、と私個人は信じています。

また、オーセンティシティ保持のため、合理としても倫理感は重要になっていくでしょう。

3:物質的価値の低下、物語価値の上昇

また、いわゆるAmazon的な「安く・早く・高品質」であることは、モノに限らずサービス等にますます加速度的に広がっていきます。コモディティ化のさらなる加速です。

結果、物質的な価値よりも情緒的な価値、そして「いつ誰とどんな文脈で消費したか」という物語価値(ナラティブ)がより重要になります。

物質的な「消費」ではなく、「体験・経験」といった時間と結びついた一回性や、贈与行為・「粋(いき)」といった精神性(贈与をする時、人は安いことよりも、喜ばれることや相手と思い出や物語が生まれることを重視します)の中に今後のビジネスや価値提供のキーワードがあるでしょう。


テクノロジーがもたらすwell-beingの本質は、個々人の人生の物語がテクノロジーによって善く拡張されることにあるのかもしれない、と最近感じています。

世界中のクリエイター(ゲームクリエイターしかり、配信者しかり)にAIによって武器が与えられて創作がより多様になっていく流れの中で、ミラティブは、人と人のつながり・居場所を創ることで「物語(ナラティブ)の価値を増幅する」価値をこれまで以上に重視して事業運営していこうと思います。

4:偏愛、大胆さ、美学、意志

これからしばらくの間、世の中には大量のフェイクコンテンツが流れ、フィルターバブルの残滓(加速?)と相まって、世界はより混乱することが想像されます。

誰でもクリエイター・アーティストになれるということは大きな可能性であるとともに(「とにかく最初はNASみたくなりたく勝ちたく技磨くうち至るオリジナル」は私の大好きなラッパーの一節です。新世代から新しいものが生まれるためには、最初は模倣で良い・ハードルは低くて良いのです)、
どの創作物も大きな欺瞞を内包したものにもなりえるということです。
(もっとも、これは現状でも我々が気づけないだけで既に欺瞞は溢れているのですが…)

「それっぽいもの」がコモディティ化するからこそ、個人の生き方としては、フェイクにあふれた世界を自分のレンズで切り取る、美学・審美眼・哲学・文学観、何よりも、ある強い意志が重要になります。
ブレない自分個人の価値観や美学を身に着けるには自身の五感を通じて知覚し、全身で経験のPDCAを回していく必要があるのは今後も変わりません

即時的な「解答・回答」らしきものはAIが補佐してくれる時代だからこそ、長期で何の問題を解きたいのかのベクトルを意志とともに定め、学びや教養を積み重ねていく連続がそのまま競争力になります。

そして、何かを好きでいるということ、そのスタンスを明確にすることは、一種の大胆さであり、自分をリスクの中にさらす、「身銭を切る」行為でもあります
何かを深堀りする・突き詰めるコストがさらに低下する中、明確に切ったスタンス(とその領域での信頼の積み重ね)自体が強みになります。


偏愛的に好きなもの・詳しいもの、そしてそれを物語として叙述できるコミュニケーション能力(既に多く言われているとおり、良い問いを投げかけるには知識も知性も当然に必要とされます)がキーです。
自分と同じか上回る知識をAIが持っていても、「実際に自分が体験した」という事実とその語り部たることの説得力は代替されがたいです。

物語になりうるなら、(本人が意識しているか否かはともかく)無駄や道楽とこれまで定義されていたもの・道程は大きな価値になります。

これから時間が多くできます。他人と同じことをやっていても仕様がない中で、今まで以上に、もっと偏執的なまでに何かを愛すること――エーリッヒフロムいわく愛は技術であり学習可能ですが、何かを猛烈に愛せるということ自体が競争優位になるでしょう。

5:エンパシーと寛容性、想像力、メタ認知

最後に、AIやテクノロジーを活用して人が幸福に生きるために、エンパシー(共感力)がより重要になるであろう点を願いも込めて挙げておきます。

偉人ロールプレイ等を含む)対話や内省にChatGPTが活用できることは既に十二分に見えています。
人類は、第三の目、否定的意見や反論への想像を行う手段、つまり強いメタ認知ツールを獲得したことになります。
メタ認知を繰り返すことで、私たちは他者や世界への想像力を獲得できます。

私たち人間が肉体と心を持った生物であることは今後も変わりません

AIがいくら発達してもこれからも人類はクソしょうもないことで悩み続けます。
相手に正論や正解を提示されたとしても、時に「そういうことじゃねぇんだよ」と感じる、とても理不尽で感情的な我々は、数十年後も変わらず感情の生物であり、想像の共同体でそれぞれの物語を生きる生物です。

この物語性ゆえに、仮に五感で得られる情報の解像度が、人間からの情報とAIや機械発からの情報で全く同じになったとしても、「人間だと思っていた相手がAIである」とわかった時にはどこか裏切られたり寂しくも感じるものと思われます。(少なくとも世代が入れ替わりきるまでの向こう50-80年くらいは)

フェイクを含む言葉がこれまで以上に世界に飛び交う情報爆発の世界で、自分の想いや声が人に届かない瞬間の数や、その時の絶望感もまた増幅されます。

そんな時代だからこそ、相手の状況を想像し、相手の話を深く傾聴した上で自分の視点を交わす「対話の姿勢」そのものが信頼やヒトである意義に直結します

同情=シンパシーではなく、相手の立場に立って感情をわかちあう共感力=エンパシーが求められます。


最終的にわかりあえない時でも、わかりあえないということ自体をわかりあう姿勢、その上で粘り強く対話やケアを続ける姿勢に、ヒトのヒトたる価値が宿るのではないか。
「わかりあおうとし続ける」姿勢--他者を理解しようとする意志・相手を想像する俯瞰性や謙虚さを持ち、その手法やお作法はAIにサポートをもらうことで、それぞれの違いを価値・可能性としてより認識できるなら、人類は今よりは幸福な物語社会を生きられるのではないか、と思います。
(AIの進化を見越したわけではないですが、ちょうど当社では行動指針としてのガイドラインを作りました)

また、決して理不尽に怒らないGPTが当たり前の環境で育った世代は、マウンティングや説教を当然に遠ざけていく、という未来予想もできます。
(個人的にも「GPTが感情的に反応してこないの、想像以上にいいな…」とGPTのやさしさに甘えながら質問を繰り返しています)

不寛容な人間が淘汰される時代が時間とともに加速していきます。
論破や怒りのエコーチェンバーによる増幅ではなく、ユリアス・カエサルの述べた「クレメンティア」=寛容性が、今よりも世界を覆ってほしいと、これはひとつの願いとして記しておきます。

おわりに:

ポストAIの社会や個人の人生がこれから良くなるか、悪くなるか、はどこまでいっても私たち個人の振る舞いの積み重ね次第です。
この進化の速度にまるでついていけていないのはきっとみんな同じです。
大波にさらされながら、日々をサバイブして、結節点のどこかでヒトとヒトとして楽しく会えるようお互いがんばっていきましょう!
(取っ散らかったのをまとめる強引さ、これも人間らしさである、ということで、おあとがよろしいようで…!)

*ミラティブ社の、「わかりあう願いをつなごう」というミッションや、「好きでつながり、自分の物語(ナラティブ)が生まれる居場所」というビジョンに共感いただける方は、ぜひ何かいっしょに仕事や創作ができると嬉しいです。こちら
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