『福岡市を経営する』/高島宗一郎氏を読む

福岡市が最強になった理由について、木下斉氏が解説していたが、その福岡市長が書いた本が発売された。

木下氏が、”『福岡市を経営する』/高島宗一郎氏と合わせて、『自治体の台所事情 財政が厳しいってどういうこと』/今村 寛氏を読むと課題が立体的に理解できる”とツィッターで投稿していたこともあり。まずは前者から読み始めた。

本書は、1.挑戦、2.逆襲、3.決断、4.情報、5.戦略、6.覚悟の6つの章立てで、戦う姿がまとめられていた。

以下、気になった文や心に留まった文を抜粋

ーーーーーーー

1.市長の仕事場はデスゾーン(5頁)

登山家の三浦雄一郎氏の息子 三浦豪太氏との対談

「登山家で”デスゾーン”と呼ばれる場所は、酸素濃度が地上の三分の一で酸素マスクを外したら普通の人は2,3分で意識を失います。気圧が低すぎてヘリコプターも飛べません。動物が生きられないから、ここは汚す人が誰もいない。だからキレイなのです。」

”素人から見れば幻想的に見える山頂こそ空気が薄くてとても生きづらい場所なんだ”

”大企業の経営者など一見、華やかに見えるけれど大きな責任を背負った人が生きる場所と(市長という立場も)同じなのではないか”

2.行政の世界は、一般的な民間企業とは違う。(6頁)

"うちの商品がイヤなら買わなくて結構!!とは言えない。いろんな立場や考え方がある人に納得していただかなくてはならない。”

3.次の市長がこんな人だったら...と想像してみる。(10頁)

大変な仕事だなと思うことがある。そんなときは「よし、市長を辞めよう!」と自分に言ってみる。そのあとで「次の市長がこんな人だったら...と想像してみる。」

地域の会合ばかりに顔出して、シティセールスに動かない。決断をしない。リスクをとらない。スピードが遅い。テクノロジーの変化に鈍感。安全や慣例などを大義名分にして既得権を守ってイノベーションと変化を阻む。そんな旧来型の市長が就任して時計の針が逆回転するように福岡市の躍動感が消えてしまう。そのようなことをあえて想像してみる。そして「いや、やっぱり辞めるわけにはいかない」と思い直す。

4.日本社会の意思決定層に『若者』がほとんどいない(13頁)

”日本社会にもっとも足りないダイバーシティは「意思決定層に若者がほとんどいない」ことだと思っています。”

”ほかにやりたいことがあっても「ちょっと今はタイミングが悪い」「今、辞めたら会社に迷惑がかかる」”などと言って決断を先送りにしている人が多い”

”あなたがそうしたいと思うのであれば、今がベストなタイミングである。なぜなら、次のチャンスも「きれいな区切り」では来ないでしょうし、そもそも次のチャンスが来るとも限らない。”

”当時の宮崎県知事の東国原英夫氏「誰でも人に迷惑をかけながら生きている。とくに選挙の時には。本当に大切な仲間はいずれわかってくる」”

5.認めてもらうには、小さくても結果を出し続ける(44頁)

”実績のない若者が認めてもらうためには、まずは小さくてもいいから結果をだすことが大切。結果を出さない限りは、何を言っても説得力がない”

6.「全体」を意識する。「全体」が良くなるために決断する(54頁)

”まちづくりで「絶対にこっちのほうがいい」という完璧な案があるのであれば、政治も行政も必要ない。リーダーは、できるだけ早く全体がよくなるための決断をすることが必要です”

”余裕が極めて重要。リーダーとしてもっとも大切なことは、常に冷静に判断する精神状態でいること”

7.リスクをとってチャレンジする人のために時間を使う(59頁)

”プライベートで会食の予定はほとんど入れないが、応援したい若いスタートアップ企業の人たちとはお会いする時間をつくる努力をしている。”

”「だれに時間を使うか」は、政治家にとって大変重要な問題”

8.規制は、既得権者を守る砦になることも(64頁)

”「規制」とは「安全を守る」という点で大義はあるのですが、一方で新しい発想やイノベーションを阻む壁となって、既得権者の利益を守る一種の砦の役割を果たしていることも事実です。”

”規制することによってイノベーションが阻まれ、競争のない環境で既得権者が市場をずっと独占してきた。”

9.プロフェッショナルが売っているもの(66頁)

”選手がケガした姿を見て、「無茶するな」という声もあれば、「単に選手生命が長ければいいのか」という哲学もあります。”

”結局、プロフェッショナルが売っているものは、「生きざま」であり「戦う姿」”

10.あえてよそ者の視点をもつ(169頁)

”街を変えるには「よそ者、若者、バカ者」という3要素が必要と言われます。私(高島市長)は、すべて当てはまります。”

”福岡市内にずっと居ると、いろいろなものが当たり前になってしまい、ほかの自治体や海外も同じだろうという錯覚に陥ってしまう。だから外を実際に見ることが大事”

11.世界を変えていくロールモデルになる。(206頁)

”新しいチャレンジをする場合、行政組織としてはどこが主体になればもっともスピーディーに成功事例を作れるのでしょうか?”

”国は、関連する省庁や議員との調整に大変な時間がかかります。また、実際に現場を持っているわけではない”

”県は、権限は持っていても実施の現場を持っていない「中2階」”

”県並みの権限から基礎自治体としての現場まで一気通貫に持つ「政令指定都市」がもっともロールモデルを作りやすいと考えています。”

”いま求められるのは時代に合わせた商品やサービスを提供でき。雇用を増やす力があり、給与を上げることができる企業です。”

”「変わる努力をしない企業」に延命措置で税金を導入し続けても、人口減少社会における持続可能性はないでしょう。必ず行き詰ります。”

12.スタートアップ施策に力を入れている理由(261頁)

”単にこれまでと同じような小さなお店や会社がたくさん増えて開業率があがればいいということではない。開業率やスタートアップはあくまで「手段」であって「目的」はリスクをとってチャレンジする人が尊敬される社会を創ること”

#都市経営 #福岡市を経営する





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?