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虹の橋を渡ったあの子

なんとなく予感はしていた。
多分一番そばにいた両親も分かってはいたのだろう。でも認めたくない。そんな空気が家族の中にあった。

実家の愛犬「みるきー」が虹の橋を渡った。

9月に17歳を迎え、人間なら百歳にあたる大往生。もっと若いと思っていたら、どうやら私が勘違いしていたらしい。

通っていた病院では一番の高齢犬で、目は白内障で見えなくなっていたし、老人性のイボも尻尾に発生。年齢のこともあるので無理な治療はしない、という方針を決めたのがほんの一ヶ月前のこと。
元々肝臓の大きさが通常の3分の2しかない問題を抱えていて、慎重に慎重に体重管理と病院のフードを与えるなど可能な限りの手を尽くしていた。

こんなことを言ったら怒られそうだが、自分が育てられた時よりよほど大切にされてたよなあ、なんて思う時もある。

死に場所を探すように辺りをウロウロし始めた時から、両親は覚悟を決めたらしい。母が抱きかかえ父と二人で一生懸命撫でて、鼻水が止まらない空ろな目をした彼女をお世話した。そのうち安心したのか穏やかな呼吸になって、少しずつ心臓の音が緩やかになって行き。

彼女は母の腕の中でその生涯を終えた。

思えば出会いも母の腕の中だった。
抱き上げた母の鼻をぺろりと舐めたあの瞬間に、彼女は我が家の一員と決まった。全てがそういう運命だったのだろう。

目の前で看取るということは覚悟が必要だ。
悲しい事に母は初めての経験ではない。未だにそのトラウマから脱していないことは知っているので、今後落ち着いてからがかなり不安である。
でも、遠く離れた場所に移ってしまった私には、もうどうする事もできない。

かくいう私もほんの少し、いやかなり落ち込んではいる。
ウルティマオンラインの中でテイマーという職業が有るのだが、その中の妖精犬に「Milky」と名付けて乗り回しているくらいには大好きだったから。

次の日荼毘に付された時、初めて父も泣いたらしい。
母は「ママ」だったけど、一番のご主人様は父でとにかく一番甘えていたからね。
父が泣いたのは祖母が亡くなった時以来ではないだろうか。

あの子は幸せだったのかな?
あの子の犬生の中に少しは私の記憶も残っただろうか。

私は君を忘れないよ。


何やらサポートをすると私の体重が増える仕組みになっているようです