風になる身体
どっどど どどうど どどうど どどう。
「風の又三郎」が登場するんじゃないだろうか、というくらいの強風である。
そういう日は、家のなかでもびゅんびゅん、ごうごうと音がなる。
「風すご」と過ごす家とはちがい、ここは飛行機のなか。
機体は、風の影響で大きく揺れる。
飛行機に乗る機会は、少なくない。飛行機での移動は好きである。
が、がたぴし揺れる飛行機に乗るのは別です。じわっと手に汗をかく。
「気流の関係で大きく揺れることがございますが、飛行の安全性に問題はありません。ご安心ください」
キャビンアテンダントによる適切なタイミングでのこの台詞。飛行の安全性になぜ問題がないのかまでは、教えてくれない(教えてもらったところで理解が追いつかないはずなのに、ビビって余計なことを考える)。
福岡で取材をした帰りだった。
憧れのひとにインタビューをした。
そのひとは、「身体」にまかせるという話をした。
いいインタビューだった。
飛行機の中で手に汗を握りながら、インタビューイの言葉を思い出していた。
「アタマで考えるからこわいんだ。一旦、身体にバトンタッチしてみな」
……座席から吹き荒れる風を感じてみる。
どっどど どどうど!
外はほんとうに荒れているのか? 風にのった身体を想像してみる。
ひゅいひゅーい。
あ、ちょっと変わった。
ひゅいひゅいひゅー。
身体が風をとらえはじめると、手の汗がやんだ。
次に感じたのは、訓練をつんだパイロットたちの仕事ぶり。ほんの少しずつ、高度を下げていることが分かる。この難易度高めのコンディションのなかで、機体は確実に着陸体制に入っている。
この日は羽田空港上空で雷雨が発生し、管制が安全な着陸のタイミングを見計らっていた。わたしの乗る便も着陸にまで時間を要したが、ほかの場所から飛んできた飛行機も例外ではない。
この強風のなか上空で待機して、着陸まで持って行くパイロットと、冷静に順番に飛行機の着陸許可を出す管制官。
「すげえ仕事だ……」
無事に着陸をしたとき(素晴らしいソフトランディングでした)、こっそりと拍手をした。
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