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宇宙開発がもたらす、ささやかな希望

 先日、ヴァージン・オービット社の打ち上げ失敗&事業停止の記事を投稿しましたが、スペースX社の打ち上げ失敗に続き、iSpaseの月面着陸失敗、セレスティス/銀河ステージの宇宙葬も失敗、とこうも続くとは思いませんでした。私は宇宙開発の関係者ではありませんが、それでも少々、動揺しています。
 宇宙開発に失敗はつきものですが、こういう「連鎖」が、ようやく見えてきた月面有人探査という大プロジェクトをまた無限に後退させてしまわないかと、若干不安にもなります。

 そんなわけで、この悪い流れが終わりになることを祈って、ひとつまとめ記事を書いてみます。

 スペースXの失敗というのは、大きくニュースにもなりましたが、火星到達を目標とする宇宙船Starship(スターシップ)の爆発のことです。初の試験飛行として衛星軌道近くまで上昇し、地球を一周することが目標でしたが、発射後90秒後には爆発してしまいました。
 もちろんこの試験飛行は無人で行われ、もともと失敗確率も高い中、スペースXとしては「成功」したとみなしているとか。確かに、使い捨てではなく回収可能なロケットを作るための着陸実験でも、何度も失敗を繰り返した上にその技術を手にしたスペースXゆえ、こうした達観した捉え方ができるのでしょう。

 しかしながら、予算も機会も少ない日本企業ではそうは行きません。
 スペースXのファルコン9を使用して月着陸船を打ち上げたのは日本企業のispase。民間企業として世界初の月面着陸を果たすべく4月26日に月面への降下を行いましたが、その後、連絡が途絶え着陸成功は絶望的との報が流れました。
 探査船にはUAEの探査ローバーとともに、日本の玩具メーカーであるタカラトミーが開発した変形型月面ロボットなども搭載されていて注目していただけに、大変残念でした。ispaseは、来年にミッション2、再来年にミッショ3の計画もあり、今回は十分なデータが取れたとしています。くじけずに計画を進めて、ぜひとも来年は成功させてほしいと願っていました。

 これと比べると報道も見かけ無いのですが、月が変わってすぐの5月1日。米国で行われた宇宙葬で失敗がありました。銀河ステージが提供している宇宙葬スペースメモリアルの宇宙旅行プランで、打ち上げたロケットが爆発した模様です。現地企業のSNSの報告を総合すると、離陸後ロケットに異常が見られたため周囲に被害を及ぼさないよう爆破処分した、ということのように読み取れます。
 当然ながら宇宙葬のため、多くの方々の遺灰を収めたカプセルが載せられていたわけですが、これも現地の報告によると、こうした事態にそなえて回収用の仕組みをもたせていてそれが予定通り機能したため無傷で回収ができた、のだそうです。ただの宇宙葬ウォッチャーの私でも「他の失敗と違って遺灰は替えがきかないんだぞ」と心配になりましたので、申し込んでいたご遺族の心境やいかばかりだったでしょうか。ちなみに打ち上げ失敗は15年ぶりだそうで、成功実績を考えると他社と比べてかなり優秀な気がします。回収したカプセルは今年中に実施する次の打ち上げ予定「パーシビアランスフライト」にて再度打ち上がるとのこと。

 というわけで、いずれも事業が傾くようなことはないらしく、そこは安心なのですが、いずれもロケット打ち上げではスペースX社と協力していることもあり、そもそもスペースXがコケると宇宙関連が全て頓挫というぐらいの大影響になるので、まずはスペースXに頑張ってもらいたいわけです。

 そこで思い出したのですが、スペースXのStarlink(スターリンク)衛星に関連し、興味深い情報がありました。
 ロシアによるウクライナ侵略が始まってもうかれこれ1年を超えてしまいましたが、昨年インフラ破壊を周到に行うロシアに対して、情報通信の部分でスペースXのスターリンクが非常に役に立っているというニュースを耳にしました。
 大変良い話なのですが、どういう仕組みで利用できるのかと思っていたところ、auのKDDIが、スターリンク衛星を使ったブロードバンド・インターネットを提供するサービスを開始していました。発表は22年の10月でしたが、最近ネット広告で見るまで気づきませんでしたので、これは日本国内でもあまり知られていないと思います。
 衛星の位置を自動で追跡する専用アンテナやルーターがセットになっていて、従来、通信環境を構築するのが難しいとされていた山中や離島などでも、電源さえ確保できればインターネット通信が可能になる優れたサービスです。優秀なのは通信速度もそうですが、他のネットワーク通信環境と併存できるところで、もともとインターネットはできるが万一のときにも通信を確保したいというようなソリューションにも対応できます。いちいち回線を手動で切り替える必要もないところが実用的です。
 日本などでももしも戦争が起こったら(十中八九、他国の侵略を受ける側になる)、インターネットケーブルなども切断され、世界からは孤立し、危険な状態になるだろうと言われていましたから、これは危機管理上日本にとっても価値の有るサービスですし、それがその気になれば民間で事業などにも利用できるんだなというところで、期待が膨らみます。将来、離島を買ってスターリンクを置いて引きこもり生活とか、マジできそう。

 というわけで、スターリンクのPRで、スペースXへの応援とさせてもらいます。しかし、意味なく使ってみたい、衛星と繋がりたい!

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