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まいるずエンタメを議論する

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すこし踏み込んだ話題を扱います。映画とあまり関係ない話題も此処に集めます。
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記事一覧

なぜアメリカの怪獣映画はあんなに残忍になれるのか?【ゴジラxコング新たなる帝国】

#ネタバレ あるキャラクターが非常に残虐な方法で殺されてしまうので、その理由について考察してみます。 このnoteには『ゴジラxコング 新たなる帝国』および過去のレジェンダリー制作ゴジラ映画のネタバレを含みます。 ▼あるふせったーにて:公開初日から絶賛ムードだった本作について苦言を呈したネタバレ感想がありました。 要点をまとめましょう。 0)楽しんでる人を貶す意図はないが… 1)大きなゴリラばかりで怪獣に見えない。 2)スカーキングの倒し方がエゲツない。 3)メカア

フェミニズムの文脈で観るオッペンハイマー

どうしても原爆の問題で注目されがちですが、フェミニズム映画としても語れる要素がある映画だと思います。 あくまで史実ベースの映画なので、大きなネタバレにはならないと思いますが、一部劇中のセリフを脚本から引用しますので、ご留意ください。 ▼オッペンハイマーの女性関係:まず、映画でオッペンハイマーと性的関係を持つ女性は3人とも強いです。 カリフォルニアの共産党員のパーティで強気に議論をふっかけてきて、セックスでは常に騎乗位だけ描かれるジーン・タトロック。彼女はツンデレだったり

【オッペンハイマー】35mm上映の感想

視力2.0の私の正直な感想です。 ▼結論:109シネマズプレミアム新宿の35mm上映を観覧しましたが、結論から言うと、映画オッペンハイマーに関しては、私にはあまり良くなかったです。 ▼詳しい感想:あくまで私個人の感想ですが、35mm上映はアナログ特有の温かみや揺らぎなど《味わい》こそあれど、オリジナルフィルムを8KデジタルスキャンしたIMAXレーザー(4K上映)の方が美麗で観やすいと感じました。 私は両目とも視力が2.0あるのですが、視力が高い人は日本のアナログ上映は不

『哀れなるものたち』は児童ポルノか?

#ネタバレ 本作から無意識的に感じる禁忌について考察する。 いつもの記事より少し過激な内容なので、苦手な方はブラウザバックを推奨する。 #R18 相当です。警告はしたからね。 ▼ベラは母親?それとも胎児?私が個人的に強く、常々感じている違和感として、本作(特に映画版)における紹介文の【胎児の脳を移植されて蘇生した女性】という表現がある。私は人格は脳に宿るものである(心臓ではない)という認識なので、むしろ本作の主人公は【女性の体に移植された胎児】と表現するのが正しいと思

【オッペンハイマー】日本語字幕批評:ラストのセリフ

#ネタバレ オッペンハイマーの最後のセリフに関して、石田泰子氏の日本語字幕を批評します。 ネタバレになるので映画を観てない人は読まないでください。 ▼文脈からのアプローチ:セリフ原文:I believe we did. 直訳:私達はそれをした、と私は信じています。 字幕:我々は破壊した。 まず字幕では「I believe」の部分をゴッソリ削除していますが、これは「私は〜だと信じている」という、言っても言わなくても意味が変わらない部分(脚注*1)なので、削除してOKだ

【文字起こし】アメリカで大学教授に昇り詰めた日本人から見たオッペンハイマー

昨年ぐらいからネットで売れっ子になった理論物理学者・野村泰紀(カリフォルニア大学バークレー校教授)が出演しているYouTube番組(相対性理論!6歳にわかるように説明してみよう!【ReHacQvsUCバークレー】)で、映画オッペンハイマーへの言及があったので抜粋して書き起こしました。 39分ごろE=mc^2の話題から少し脱線して核分裂と核融合の解説に移り、そこから映画オッペンハイマーにつながります。 以下、書き起こし。 野村泰紀:最初は残念なことに、ポジティブなものじゃ

女性監督のアクション映画ってどうなの?【マダムウェブ公開直前】

マダムウェブの公開を直前に控えて、あるツイートが炎上した。 フォロワー数:約150 インプレッション数:約900,000 いいね数:約60 リポスト数:約300 表示件数に対するいいね数が圧倒的に少ない。これは悪い方のバズりである。おそらくフォロワー数が多いユーザーに否定的な文脈で引用またはリポストされたのだろう。 ▼SNSでの誹謗中傷について:映画オタクb氏の言い方にトゲはあるが、しかし内容は正しい部分もある。 そもそもこの人は「こういう映画」の話をしている。それが

デューンをIMAXで観るべきなのか?

結論から書きます。 通常版とIMAXで差はあります。 しかしIMAXは《絶対に必要な要素ではない》です。 必要ないとは書きましたが、IMAXじゃないと絶対に味わえないポイントがあるのもまた事実です。ただしそれは意味さえわかってしまえば、映画全体に対しては取るに足らないものだと個人的には思います。この記事後半ではそちらを説明します。 これを読めばIMAXシアターが近隣にない人でも、IMAXで観覧した気分になれるかも?(笑) ▼IMAXと通常版のちがい:デューンは映画館

ミス日本(ニッポン)にみる日本らしさとは?

令和6年の第56回ミス日本(※ニホンではなくてニッポンと読みます)では、ウクライナ人の父母を持つ元ウクライナ人女性の椎野カロリーナさん(令和4年に日本国籍を取得済み)がグランプリを受賞しました。 他の候補者を見ても、または昨年までの受賞者を見ても、彼女の典型的なヨーロッパ人の容姿は異彩を放っています。 日本らしさを競う大会で、ヨーロッパ人が優勝。 私は強い違和感を持ちました。 この違和感について率直にXで投稿したところ、そこそこ大物のツイッタラー(思想強め)に拡散され

フィナーレを迎えたDCEUへ(2024新春)【アクアマン2】

▼みんなDCEU卒業式にちゃんと出席しててエライね!2024年正月、アクアマン2(ロストキングダム)が日本でも公開されました。これでDCEUはフィナーレを迎えることになります。まあフィナーレとは最大限によく言ったもので、実情としてDCEUは打ち切りなのですから、ちょっと鼻につく宣伝文句ではありますが。しかし『失われた王国』とは随分の皮肉なタイトルになってしまったものですね。(苦笑) DCEUファンの中には文句を言いながらも律儀にアクアマン2を映画館に観に行かれる方も多くて、

【レベルムーン】ここがヘンだよ日本語タイトル【翻訳やっつけ仕事?】

ちょっと日本語タイトルがクソ翻訳だったので。 解説していきます。 ▼パート1:炎の子日本公式は直訳すぎます。 ●脳死プレイの直訳である 脳みそを持っている人が映画を観れば誰でも判りますが、Fireというのは単純な炎ではなくて「戦争の炎」のことです。(=戦火) 日本で「炎の***」と表記すると、どちらかというと努力や情熱といったポジティブなイメージが伴うことが多いですが、本作での炎は戦争によって生まれた破壊や犠牲や被害のことを指すネガティブなワードです。 映画の冒頭

オーストラリアまで『オッペンハイマー』を観てきた話

「ちょっとウナギを食べに浜松まで。😉」 人生で一度は言ってみたい言葉ですね。 私はこれを映画でやりました。 「ちょっとオッペンハイマーを観にオーストラリアまで。😉」 クゥーッ! 言ってしもうたで!(笑) このnoteでは最初になぜオーストラリアなのか、次に映画の感想を書きます。そして最後に日本の一部で問題視されている本作の日本ディスについて私見を述べます。 ▼なぜこのタイミングなのか:私も当初は日本公開を待つつもりでした。 しかし、待てども待てども決まりません

【坂野義光】ゴジラを飛ばした男

2003年。72歳。GODZILLA企画スタート。 1981年。神戸。ポートピア81。ダイエー館。オムニマックス上映。 アイマックス方式。70ミリ、15パーフォレーション。(IMAX15/70) 坂野「日本には優れた科学技術があるのだから、日本独自の新しい大型映像システムを開発すれば良いではないか」 1985年。つくば博(国際科学技術博覧会)。東宝映像美術、電通。カメラ、現像機器、映写機の一環したシステム開発へ。カメラはセイキ、現像機器は東宝現像所、映写機はウシオ・ユー

映画Sucker Punchの日本語タイトルを考えてみよう【エンジェルウォーズ】

ザック・スナイダー監督映画『Sucker Punch』は日本語タイトルで損しているような気がします。 『エンジェルウォーズ』って言われても、スターウォーズのB級パロディ映画かな?もしかしてセクシー映画かな?って思っちゃう人が居ても無理ないと思うんですよね。 ちょっと代案を考えてみましょう。 ▼エンジェルウォーズは妥当なのか?先ずワーナーブラザースジャパンがつけた日本語タイトルについて、真面目に評価してみます。 この映画は最初に登場人物のモノローグから始まります。 は