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ニューノーマル時代の観光のあり方とは?ー続・提言のご紹介ー

JANE事務局です。最近、小さな畑を借りてさっそく耕したところ、慣れない作業で腰をやられた中の人です。いかがお過ごしでしょうか。

前回に引き続き、観光振興に関連したJANEの政策提言活動についてご説明したいと思います!

今年4月13日に自民党の「観光立国調査会 観光業に係る法制度のあり方に関するワーキングチーム」で、JANE事務局から以下の3つの切り口でプレゼンをしました。

https://jane.or.jp/proposal/advocacy/13931.html

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①旅行業法の内外イコールフッテイング

②オンラインを前提とした規制緩和

③地域活性化のための横串法の整備

この3つについて、詳しく見ていきたいと思います。

※ なお、こちらは旅行業法など、観光関連の「法制度のあり方」に特化した内容ですので、JANEの観光振興に関する提言の全体像は前回記事をご覧ください。

前回記事☞「ニューノーマル時代の観光のあり方とは?JANEの提言をご紹介!」

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1.旅行業法の内外イコールフッテイング

オンライン・トラベル・エージェント(Online Travel Agent: OTA)と聞いて具体的にイメージできるでしょうか?実店舗を持たず、インターネット上でツアー等の予約から手配までを行うサービスを提供している旅行会社のことを指します。今は、多くの人がインターネットから観光地や宿泊施設の情報を得ていると思われますので、特に若い人はOTAしか利用したことのない人もいることでしょう。

日本で利用可能なOTAには、日本国外から国境を越えて日本向けに旅行サービスを提供している事業者も含まれます。「海外OTA」と言われたりもしますね。インターネットで宿泊施設や飛行機の予約をしようと思って検索するとすぐに出てきますし、キャンセルフリーのプランがあるなど利便性も高いので、中の人もよく利用しています。

海外OTAに対して、日本に本拠地を置き日本でサービスを提供している国内旅行事業者は「国内OTA」と呼ぶこともあります。実は、この両者の間で、法適用がいささか不平等な状況になっているのです。

例えば、国内OTAの場合、旅行業法の規制がかかります。具体的には、観光庁長官への登録、営業保証金の供託、旅行業務取扱管理者の選任、標準旅行業約款の認可、取引条件説明義務や書面交付義務…。これらをクリアしないと事業を行うことができません。

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他方で海外OTAは、本拠地が海外であるため、旅行業法は適用されません(厳密にいうと、本拠地が海外にあっても適用される法律はありますが、旅行業法はそうなっていません)。よって、上記旅行業法の規制をすべてスルーできるのです。

これはなんだか不平等じゃない…?ということで、「国内OTAと海外OTAのイコールフッテイング(同等の条件)」が問題となっています。そこでJANEの提言では、「旅行業を海外OTAにも適用して、きちんと執行して欲しい」ということを要望しています。

具体的な対策の参考事例として、民泊新法(住宅宿泊事業法、平成29年法律第65号)がとっているシステムを挙げています。民泊新法では、民泊の仲介サービスを行う事業者(住宅宿泊仲介業者)は、観光庁長官の登録を受けることが義務付けられました。民泊の情報は、登録を受けたプラットフォーム(仲介サイト)にのみ掲載することができます。これにより、事実上、登録しなければ日本でのビジネスが成り立たないことになるので、結果的に主要な海外プラットフォームはすべて観光庁に登録しています。登録してあれば、日本の監督官庁からのコントロールがききますので、日本でサービス提供している事業者に共通して適用されるルールを遵守するよう執行措置をとることができますね。

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2.オンラインを前提とした規制緩和

次は、JANEが一貫して主張し続けている、デジタルファーストに関する提案です。

(1)旅行業法の対面書面原則の撤廃

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OTAの利用者は「オンライン」ですから当然インターネットでアクセスしています。そうした利用者にとっては、デジタルでアクセスして、取引条件の説明や契約内容に関する書面交付までデジタル完結して欲しいですよね。

ところが、今の法律の規定上は、「対面書面が原則」なのです。実際のところ、利用者の承諾を得ればデジタル完結はできるので、事実上デジタル完結ができています。であれば、そもそも法律の建付けとして、「原則書面交付、例外デジタル」である必要もないのでは…?当然そう思いますよね。

そこで、法律上もオンラインを前提とした規定にするべきであるとJANEは主張しています。

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(2)個人による有償の旅行相談の解禁

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今は、オンラインによるサービス展開が主流になってきています。このコロナ禍でそれはますます加速されています。観光に関するサービスをオンランで展開する際に合わせて旅行相談を行ってもらえれば、利用者としてはありがたいのですが、実は、旅行相談は旅行業の一つなので、観光庁長官の登録をした旅行業者しか行うことができません。

しかし、知識や経験が豊かな個人がビジネスとして旅行相談をすることは、むしろ観光を盛り上げていく上でも有益なのではないか。JANEはそう考えました。そこで、個人による有償の旅行相談の解禁を訴えています。

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(3)旅行業務取扱管理者に関する制度の見直し

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旅行業法上、営業所ごとに一人以上の旅行業務取扱管理者を置かなければならないってご存じでしたか?でも、これなんだか古臭い感じがしませんか。そもそも、今はオンラインサービス主流の時代。営業所を持たないOTAだっています。

インターネットが当たり前になる前に作り上げられた制度は、どんどん変えていこう。そのJANEの基本姿勢に照らして、この旅行業務取扱管理者に関する規定もニューノーマル時代に合わせて見直すべきと考えます。

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3.地域活性化のための横串法の整備

さて、ここは一番面白い提言だと中の人は思っているパートです。

皆さん、グランピングキャンプ、好きですか?コロナ禍でますます過熱するアウトドア人気!中の人もにわかキャンパーとして、グッズを揃えたり、芸人のソロキャンプ動画を見たり、「ゆるキャン△」を見たり、極めつけは奥多摩の豚の丸焼き会に参加したり(美味でした!)…。「アウトドア沼」にはまっています。

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当然のことながら観光業界からも熱い視線が注がれており、ニューノーマル時代の新たな観光の起爆剤として、グリーンツーリズムが盛り上がっています。

ところで、グリーンツーリズムを盛り上げるにあたっては豊かな観光・自然資源を持つ地方自治体の協力が欠かせないのですが、実は今の法律は地方自治体をかんじがらめにして、その創意工夫を封じ込めてしまっているんです。

例えばアウトドアレジャーの人気が高まるにつれ様々な形態のアクティビティが出てきていて、トレーラーハウスやすぐに建てられるインスタントハウス、サウナを提供しているキャンプサイトもあります。これらのアクティビティは、現在の関連法令である建築基準法や公衆浴場法、旅館業法などのいわゆる「業法」に照らしてどう整理されるのか…。実は結構複雑なんです。

例えば、今流行のテントサウナ。東京都が業法に基づき保健所の許可が必要かどうか丁寧に整理しているウェブページがあります。

旅館業法に基づく許可を取っているキャンプ場が宿泊者のみに利用させていれば公衆浴場法の許可は不要、宿泊者以外にも利用させていれば公衆浴場法の許可が必要、さらに旅館業法が適用されないキャンプ場でキャンプ利用者に利用させていれば公衆浴場法の許可が必要、設置者が個人的に利用していれば不要…。ややこしくてこんがらがりそうです!そもそも、キャンプサイトでのアクティビティって、明確にこの表にあてはめて整理できるものなのか…。法が想定していなかったアクティビティについては、無理に今の法にあてはめることをせず、社会の変化に合わせて法を変えていくべき、そのようにJANEは考えます。

このような、複雑な制度運用では、コンプライアンスに慎重な大手企業は特に参入しにくく、せっかく高まる消費者需要を十分に受け止められない状態にもなりかねません。

これまでなかったようなアクティビティを今のアウトドアブームにのって観光コンテンツとして打ち出していけば、地方活性化につながります。地方自治体の首長(県知事、市長さんなど)にもっと裁量を与え、地方の実情に応じてこうした新しい取組をどんどん認めていけるような法制度にしていくべきです。具体的には、地域活性化を目的として、各種業法を横串で一気通貫するような特別措置法を整備することを提案しています。

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地域活性化につながる民間の取組については、会員企業で面白い取組を行っているところがありますので、今後の記事でご紹介できればと思います!




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