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ビッグモーターの不祥事の背景と教訓

事故車の修理における保険金を不正に水増し請求しただけでなく、店舗周辺の街路樹を伐採したり、除草剤を散布したりするなど、社会的な非難を浴びたビッグモーター。その不祥事の原因となったさまざまな要因を分析する。

中古車販売業界に衝撃を与えたビッグモーターの不祥事。その背景には、経営陣の異常な支配欲や、社員の盲従や恐怖心、そして、損害保険会社との癒着や監督不足など、さまざまな要因があった。この記事では、それぞれの要因について詳しく見ていこう。

経営陣異常な支配欲

ビッグモーターの創業者である兼重宏行氏は、自らを「神」と称し、社員に対して絶対的な忠誠を求めた。その息子である宏一氏も、父親の後を継いで社長に就任したが、同様に社員に対して高圧的な態度をとった。二人は、社員に対して、不正な保険金請求や街路樹の伐採などの指示を出し、従わない者は解雇や降格などの処分を下した。また、社員に対して、自分たちの私的な支出や贈り物などの負担を強いたり、自分たちの写真や肖像画を飾るように命じたりするなど、自己顕示欲の強さも見せた。このように、経営陣は、自分たちの利益や権力を最優先し、社員や社会に対する責任感や倫理観を欠いていた。

社員の盲従や恐怖心

ビッグモーターの社員は、経営陣の指示に従わなければ、自分の身や家族の安全が危ぶまれると感じていた。事実、不正に反対したり、内部告発したりした社員は、暴力団員に脅迫されたり、暴行されたり、殺害されかけたりしたという証言がある。また、社員は、経営陣の権威やカリスマ性に惑わされ、自分たちの行為が正当化されていると信じ込んでいた。例えば、保険金の不正請求は、損害保険会社が不当に低い金額を提示しているからやむを得ないとか、街路樹の伐採は、店舗の売上や安全を確保するために必要だとか、そういう理由付けをしていた。このように、社員は、自分たちの行為に対する良心や判断力を失っていた。

損害保険会社との癒着や監督不足

ビッグモーターの不正請求問題には、損害保険会社の関与も大きい。ビッグモーターは、損害保険ジャパンとの間に、特約店契約を結んでいた。これは、ビッグモーターが自社で事故車の修理見積もりや保険金請求を行うことができるという契約である。しかし、この契約には、損害保険ジャパンがビッグモーターの見積もりや請求に対して、十分なチェックや監査を行わないという問題があった。その結果、ビッグモーターは、保険金を不正に水増し請求することができたのである。また、損害保険ジャパンとビッグモーターの間には、人的なつながりもあった。例えば、損害保険ジャパンの元役員がビッグモーターの顧問になったり、ビッグモーターの元社員が損害保険ジャパンの営業になったりするなど、双方の利害が一致する関係が築かれていた。このように、損害保険会社は、ビッグモーターの不正を黙認したり、加担したりしていた。


この不祥事は、中古車販売業界だけでなく、社会全体にとっても大きな教訓となるべきである。経営者や社員は、自分たちの行為に対する責任や倫理を常に意識し、社会的な信頼を損なわないように努めなければならない。また、損害保険会社や金融庁などの関係機関は、不正を防止するためのルールや制度を強化し、厳正な監督や検査を行わなければならない。ビッグモーターの不祥事は、決して他人事ではないのである。

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