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トラブルシューター涼子〜腫れ上がるお尻〜

「わん、わん、わーん」

 陽気な声を出しながら階段を登る。ぐいぐいと階段は上がるその背はそこそこ高い。百七十cmはあるだろうか。ふわふわと柔らかな黄金色の髪は染めている。ただ深い翠色の瞳だけは自前だ。母親からもらった大事な、翠。
 ジャラジャラと手と首につけたアクセサリー類が否応にも周りに居場所を告げてしまうというのに声の主、御門リョーコは着崩した制服を翻しながら軽快に階段の最上段に飛び乗った。
 ただ足元だけが何故かしっかりとした造りのタクティカルブーツだった。紐も内側に全てしまい込まれている。
 手を広げて指先を見た。ネイルサロン帰りかと思うほどに爪が磨き込まれていた。その完成度に満足したのかにんまりととすると再び軽やかに目的地へえと向かう。
 まるで緊張感というものがなかった。慣れてしまっているのかもしれない。
 ゴツゴツと重い音を立てて指定の部屋番号を確認すると無造作に扉を開けて入っていった。

「んで?お嬢ちゃんは?」

先ほどとは打って変わってスカートのポケットに手を突っ込みながら気だるそうに聞いた。真実だるかった。

 目標が目の前にいないことにうんざりしていたが、これも生活の為だと割り切った。
「……金だ

雑居ビルにある潰れたカラオケBOX。ビル自体も数日中には取り潰されるだろう。そこの一室の中で非常灯がうっすらと男の姿を浮かびだしている。
一言かつ、ストレート過ぎるセリフにひねりがないなー、とリョーコはそう思いながら男を見た。
超高層マンションの最上階フロアーにある依頼人の住居。そこのウォークインクローゼットに何十個とある中の一つ、フランス製の高級ブランドバッグを机の上に無造作に下ろした。

「はい、お金。これでケジメでいいでしょう?ガキ虐めてもしょうがなくない?」 

男の探るような気配にハルカはコートと同じ烏色のショートカットの髪を無造作にかき上げる。埃だらけになるのは嫌いだった。早く帰りたい、それしか今のハルカにはなかった。

「親が金持ちでよかったな…。ウリはともかく、タタキは洒落になんねぇぞ」

フードからは意外と若い声が聞こえてくる。ハルカは余計な事を喋らないでいいわよと思ったそれを黙殺した。
 合成皮のソファから男は立ち上がり、バッグを開けて中身を確認した。枚数までは確認していないが、本物かどうかを確認すると持ってきていた紙袋に移した。大きな札束が
 
「……ちょっと」

少ししか見えていないだろうが、内心うんざりしながら刺すような視線を男に向ける。
初めて気付いたようなしぐさで男は、ああそうだったと言った。
少ししか見えなくても、嫌な笑いをしているのが分かる。さらにうんざりする。仕事、仕事だ。仕方ない。

「六階の一番奥の大部屋。ククク。しかし、暴れ回るんでちょいと尻を叩いてやったまま、転がしてあるからさっさと行ってやんな。おっと、ロリータ趣味は無いから安心しな」

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