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第1話 初恋

『俺はお前の事可愛いと思うで?』

そう言うと歩道からぴょんと飛び降りて
俯く私の顔を覗き込んだ…

『俺の事見て?ちっさい俺は嫌か?』

泣きながら力一杯首を横に振った

『せやろ?俺がお前の事好きなんやから
 それで良くない?』

下から私の顔を覗き込む彼が笑っていた

『だって…私が彼女じゃなければ
 ひかるはちっさいって言われないんだよ
 私なんでこんなに育っちゃったんだろう』

『それは俺だって一緒やん?俺がもっと
 ちゃんと育ってたら、お前より大きく
 育ってたらお前が気にする事なかったん
 やから…ごめんな育たんで…』

『ひかるは全然悪くないよ…あたしが…』

まで言うと、遮るかの様に

『まだ言う…俺がいいって言ってるから
 いいねん、お前は一体誰の言葉に
 振り回されてんねん…あほちゃうか…』

『だって…』

『だってじゃない』

『ほら…こうしたら一緒やろ?
 俺は別に同じ道歩いてもええねんけどな
 誰かさんが気にするからさ…』

そう言いながら歩道を歩く彼
そして私はすぐ隣を車道に降りて歩く
その時だけは同じ身長の2人…
158㌢の彼と168㌢の私に
歩道の10㌢がプレゼントしてくれた
特別な時間…

彼はたくさんの言葉をくれた
そしていつもちゃんと向き合ってくれた

けれども桜の季節に始まった中学生の初恋は
クリスマスイブに終わりを迎えた…

『他に好きな子が出来た』
彼に出来た新しい彼女は148㌢
2人の姿を見るたびに
お似合いだなぁやっぱり自然だなぁ
一層彼がかっこよく見えた

これで良かったんだと自分に
言い聞かせた
彼との別れは思春期ゆえの
心の未熟さを自覚させた








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