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インドネシアにおける鉱業規制(5)

インドネシアにおける銅精錬と日本企業

三菱マテリアルは、2023年12月15日、連結子会社であるインドネシア・カパー・スメルティング社のグレシック銅製錬所(インドネシア東ジャワ州)で進めてきた銅精鉱処理能力の拡張工事が完工したと発表しました。
2024年初めから増産体制に移行し、拡張完工によって年間銅精鉱処理量は現行の100万トンから130万トンに、年間電気銅生産能力は現行の30万トンから34万2千トンに増強される予定です。

スメルティング社のグレシック銅製錬所は、東ジャワ主要港スラバヤ市の北30キロに位置します。 スメルティング社の資本比率は、三菱マテリアルが60.5%、PT. Freeport Indonesiaが39.5%です。

製錬所の原料はすべて、東に約2600キロ離れた西パプアにあるフリーポート・グラスベルグ鉱山から船で運ばれてきます。

では、なぜ西アプアではなく、2600キロも離れたグレシックに精錬工場を作ったのでしょうか?

それは、精錬の過程で算出される硫酸が原因です。硫酸は、精錬の過程で銅の4倍の量が発生してしまいますので、銅の精錬は硫酸との闘いなのです。硫酸は、化学肥料に使われますが、グレシックには、インドネシア政府の所有するペトロケミア・グレシックが隣接しており、同社が精錬所の硫酸を全て利用してくれるというわけです。ここが、グレシックが精錬工場の建設場所に選ばれた理由です。

グレシック工場は、土と草以外何もない緑地に建設され、1999年5月28日に商業生産を開始しました。建設工事は三菱グループのエンジニアリング会社である千代田化工建設が担当し、EPC(設計・調達・建設)方式で行われました。

なお、グラスベルグ鉱山はといいますと、パプア・ニューギニアの最高峰であるプンチャック・ジャヤの近くに位置し、約2万人の雇用を生んでいると言われる鉱山で、その多くは米国企業であるフリーポート・マクモランによって所有されている。同社はインドネシアで実際に事業を行う子会社のPTフリーポート・インドネシアの株式の90.64%を所有しており、そのうち9.36%は完全子会社のPTインドカッパー・インヴェスタマが所有している。残りの9.36%の株式はインドネシア政府によって所有されています。

以下では、現在の特別鉱業事業許可区域(WIUPK)の決定プロセスについて解説します。

競売による金属・鉱物・石炭特別鉱業事業許可区域(WIUPK)の決定および付与

金属鉱物および石炭の特別鉱業事業許可区域(WIUPK)の競売プロセスについて提供される 特別鉱業事業許可区域(WIUPK)に複数の国営企業(BUMN)及び地方公営企業(BUMDs)が関心を持つ場合、競売はエネルギー鉱物資源省(MEMR)が実施します。

鉱物・石炭採掘事業に従事する民間事業体に対する特別鉱業事業許可区域(WIUPK)の競売プロセスは、以下の場合にのみ実施されます。

  • 特別鉱業事業許可区域(WIUPK)の提供に関心を示す国営企業(BUMN)及び地方公営企業(BUMDs)がない場合

  • 国営企業(BUMN)及び地方公営企業(BUMDs)が管理上、技術上、および財政上の要件を満たすことができない場合

PerMen 7/2020(PerMen16/2021で一部修正)に基づき、競売手続き、事前資格審査段階の書類の評価、入札価格の評価、事前資格審査書類と入札価格の評価結果の重み、金属・鉱物・石炭WIUPKの競売落札予定者の順位決定は、金属・鉱物・石炭WIUP競売と同様です。

国営企業(BUMN)が落札した場合

エネルギー鉱物資源省(MEMR)は、国営企業(BUMN)をオークション落札者として発表し、国営企業(BUMN)に、地方公営企業(BUMDs)が10%以上のシェアで参加するよう指示します。

国営企業(BUMN)は以下の方策を取ることができます。
i. オークション落札者の決定から90暦日以内に新たな合弁事業体を設立する
ii. オークション落札者決定から60暦日以内に、その関連会社を指名すること

シェア参加を提供するにあたり、国営企業(BUMN)は、特別鉱業事業許可区域(WIUPK)が所在する地域の州政府および地域/市政府と調整する必要があります。

かかる調整の結果、州政府および地域/市政府の双方が株式投資に関心を示した場合、10%の株式は、そのうち40%が州政府が設立した地方公営企業(BUMDs)に、そのうち60%が、地方/市政府が設立した地方公営企業(BUMDs)に譲渡されます。

新規共同事業における国営企業(BUMN)及び地方公営企業(BUMDs)の共同出資は、51%以上でなければなりません。

地方公営企業(BUMD)が落札した場合

エネルギー鉱物資源省(MEMR)は、地方公営企業(BUMDs)をオークション落札者として発表し、地方公営企業(BUMDs)に対し以下のことを通知し、決定を促します。

①特別鉱業事業許可区域(WIUPK)内で鉱業活動を直接運営する
または
②オークション落札者の決定から 90 暦日以内に、合弁事業体を設立する

民間事業体は、地方公営企業(BUMDs)または以下の合弁事業にシェア参加することができるが、その比率は最大49%となります。

民間企業によって落札された場合

エネルギー鉱物資源省(MEMR)は、民間事業体を競売落札者として発表し、その民間事業体が以下の条件を満たす場合に限り、地方公営企業(BUMDs)に10%の株式参加を提供するよう指示し、いずれの方法によるか決定を促します。

①特別鉱業事業許可区域(WIUPK)内で直接採掘活動を行う
または
②競売勝者の決定から 90 暦日以内に合弁事業体を設立すること。

シェア参加を提供する際、民間事業体は、特別鉱業事業許可区域(WIUPK)が所在する地域の州政府および地域/市政府と調整しなければなりません。

かかる調整の結果 州政府および 州政府および地方/市政府の双方が資本参加に関心がある場合、10%の株式のうち、40%は地方政府が設立した地方公営企業(BUMDs)に譲渡し、60%は地域/市政府が設立した地方公営企業(BUMDs)に譲渡されます。

(参照)
Mining in Indonesia Investment, Taxation and Regulatory Guide/ September 2023, 13th Edition/ PWC(Mining in Indonesia: Investment, Taxation and Regulatory Guide 2023 (pwc.com)
2009.3/ 金属資源レポート・インドネシア新鉱業法について( https://mric.jogmec.go.jp/wp-content/old_uploads/reports/resources-report/2009-03/MRv38n6-04.pdf
世界の鉱業の趨勢 2022/ インドネシア/ JOGMEC(https://mric.jogmec.go.jp/wp-content/uploads/2023/03/trend2022_id.pdf
プルタミナ国営石油・天然ガス鉱業公社の構造改革(https://nagoya-wu.repo.nii.ac.jp/record/1672/files/kj4901.pdf

三菱マテリアル株式会社・インドネシア子会社の拡張完工について
~銅精鉱処理量30%増強へ~(https://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2023/23-1215.html
P.T. SMELTING, GRESIK SMELTER(https://www.mmc.co.jp/sren/Gresik.htm

https://jpn.sika.com/ja/project-references/international-projects/grasberg-mine.html


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