弁護士 柿原達哉

幼少の頃(1993年-1995年)にインドネシアに住んだ経験を活かし2019年から20…

弁護士 柿原達哉

幼少の頃(1993年-1995年)にインドネシアに住んだ経験を活かし2019年から2021年までインドネシアの大手法律事務所であるAssegaf Hamzah & Partnersに出向し、日系企業のM&A等によるインドネシア進出・事業運営・撤退等に携わる。

最近の記事

インドネシアにおける鉱業規制(5)

インドネシアにおける銅精錬と日本企業 三菱マテリアルは、2023年12月15日、連結子会社であるインドネシア・カパー・スメルティング社のグレシック銅製錬所(インドネシア東ジャワ州)で進めてきた銅精鉱処理能力の拡張工事が完工したと発表しました。 2024年初めから増産体制に移行し、拡張完工によって年間銅精鉱処理量は現行の100万トンから130万トンに、年間電気銅生産能力は現行の30万トンから34万2千トンに増強される予定です。 スメルティング社のグレシック銅製錬所は、東ジャ

    • インドネシアにおける鉱業規制(4)

      金属・鉱物・石炭WIUPKの決定と付与 特別鉱業事業許可区域(WIUPK)は、まず、特別鉱業区域(WUPK)から決定されます。GR 25/2023に従い、エネルギー鉱物資源省(MEMR)は知事による特別鉱業区域(WUPK)の決定を受けて特別鉱業区域(WUPK)を指定します。 特別鉱業区域(WUPK)は、以下の中から決定されます。 ①開発可能な国家保護区域(WPN) ②鉱業事業契約(CoW)又は石炭鉱業事業契約(CCoW)の採掘地域 ③エネルギー鉱物資源省(MEMR)の評

      • インドネシアにおける鉱業規制(3)

        インドネシアにおける採掘の問題点 インドネシアにおける採掘の歴史のは、金の採掘から始まっており、現在でもインドネシア全土に2,000以上の金の採掘場がると言われています。 2024年現在、インドネシアは金の採掘量は年間10万キログラムで世界8位の地位にあります。 これらの採掘は、小規模に行われている場合も多いですが、全ての金の採掘場の労働者を合計すると、200万人以上に労働の機会と職を提供しているとされています。 問題は、これらの採掘が、政府による許可を受けずに行われ

        • インドネシアにおける鉱業規制(2)

          非金属鉱物・岩石 WIUP の決定と付与 鉱業ライセンス地域(Wilayah Izin Usaha Pertambangan、「WIUP」)とは、鉱業事業許可(IUP) または 採石業のための委任状(SIPB)の 保有者に認可が付与された地域のことを指します。 GR 25/2023 に基づき、エネルギー鉱物資源省(MoEMR)は、事業体、協同組合、または個人企業(perusahaan perseorangan)から提出された申請書に基づいて、非金属鉱物・岩石 WIUP の

        インドネシアにおける鉱業規制(5)

          インドネシアにおける鉱業規制(1)

          インドネシアにおける鉱物と石炭の採掘活動は、鉱業法によって規定されています。 2009年の鉱業法の導入以来、鉱業法は、インドネシア国内での加工・精錬要件、未加工・未精錬鉱産物の輸出制限、売却要件、国内市場義務、新しいライセンス制度に準拠するための外国投資に利用されてきたCOW(鉱業事業契約:Contract of Work)の転換など、多くの問題に直面してきました。 これらの問題に対処するため、2015年から鉱業法の改正が議論され、2020年5月12日、DPR下院は鉱業法改

          インドネシアにおける鉱業規制(1)

          パートナーシップを監督する新KPPU規則の下で起こりうる課題

          独占禁止法の監督とは別に、インドネシア競争当局(KPPU:Komisi Pengawas Persaingan Usaha)は、大企業・中堅企業とその零細・中小企業(以下「MSME」)パートナーとの間のパートナーシップ契約も監督しています。 パートナーシップとは 当事者間の私的契約に基づくパートナーシップは、インドネシア商法および民法によって規定されています。パートナーシップには主に2つのタイプがあり、一般的なパートナーシップ(perseroan firma)は、単一の名

          パートナーシップを監督する新KPPU規則の下で起こりうる課題

          インドネシアにおけるゲーミング産業

          インドネシア政府は2024年初頭、ゲーミング産業に関する2つの規制を制定しました。 最初の規則である「国家ゲーミング産業の加速的発展に関する2024年大統領規則第19号」(以下「大統領規則」)は、ゲーミング産業の国家発展ロードマップを確立するものです。 インドネシア政府が国家発展ロードマップに関する規制を発表するのはよくあることで、過去には電子商取引やデジタル産業に関する同様のロードマップも見られました。これらのロードマップに共通するテーマは、関連業界が直面する内外の問題や課

          インドネシアにおけるゲーミング産業

          インドネシアの再生可能エネルギー事業の現地調達義務

          インドネシア政府は、2025年までに国のエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合を最低23%、2050年までに31%にすることを目指しています。 他方で、電力法(2022年法律第2号に代わる政府規則により改正された2009年法律第30号)は、独立系発電事業者(以下「IPP」)に対し、再生可能エネルギー・プロジェクトを含む発電プロジェクトの開発において、国産品の使用を優先するよう求めています。 すなわち、IPPは、電力インフラの開発において、物品やサービスに適用さ

          インドネシアの再生可能エネルギー事業の現地調達義務

          インドネシアにおけるプラットフォーマーの著作権保護義務

          2024年2月、憲法裁判所は、著作権法(2014年法律第28号)第10条における「事業所」(tempat perdagangan/ the location)の意味を拡張する決定を下しました。 第10条の規定は、以下の通りです。 Managers of business premises are prohibited from allowing the sale and/or reproduction of goods resulted from Copyrights an

          インドネシアにおけるプラットフォーマーの著作権保護義務

          インドネシアにおける輸入規制

          API インドネシアで輸入を行うためには、輸入業者認定番号(API)を取得し、また、通関システムにアクセスするために事業基本番号(NIB)を有している必要があります。 APIには、一般輸入業者のための事業番号であるAPI-Uと、生産工程で使用する資本財、原材料を自社のために輸入する製造業者のためのAPI-Pの二種類があります。 APIは、一社につき一つしか保有できないため、例えばインドネシアでバイクを輸入するためにAPI-Uを保有していた事業者が、インドネシアで新たにバイク

          インドネシアにおける輸入規制

          インドネシアにおける担保の種類と設定方法

          インドネシア企業の株式に対する担保設定 非上場会社の株式 非公開会社の株式に対する担保には、質権を設定できます。 貸主と借主は、株式質権設定契約を締結する必要があり、通常は、公正証書を作成します。 非公開会社の株式に対する質権設定は、質権を設定された株式を発行している会社に通知することで効力を生じます。 その後、取締役は、会社が管理する株主名簿に質権を登録しなければなりません。また、質権者が貸主に株券を交付するのが通例です。 インドネシア証券取引所(IDX)に上場して

          インドネシアにおける担保の種類と設定方法

          インドネシアにおける貸金業及び担保

          貸金業について インドネシアの企業に資金を貸し付ける場合、当該企業のインドネシアにおける活動が、インドネシア国民からの預金の受入れやインドネシアにおける定期的かつ体系的な商取引でない限り、日本企業を含む外資企業であってもインドネシアでライセンスや認可を取得する必要はありません。 貸金業者がインドネシア国民から預金を受け入れる場合には、銀行免許の取得が必要です。 インドネシアにおける規制は、インドネシア金融庁(OJK)によるものと、インドネシアの中央銀行であるインドネシア

          インドネシアにおける貸金業及び担保

          インドネシアにおける有限責任会社(8)

          企業犯罪 Ari Kuncoroによる「Bribery in Indonesia: Some Evidence from Micro-Level Data」によると、調査対象となったインドネシア企業1,808社のうち1,333社(73.7%)が2001年に賄賂の支払いを報告しており、その額は平均して年間生産コストの10%を超えていたという。 グローバル競争力レポートによると、汚職は依然としてインドネシアでビジネスを行う上で最も大きな障壁となっている。 過失や過失によって会社

          インドネシアにおける有限責任会社(8)

          インドネシアにおける有限責任会社(7)

          コーポレート・ガバナンス インドネシアの企業は、1999年にKNKGが作成し、2001年と2006年に改訂された「良きコーポレート・ガバナンス規範」に従うことが奨励されています。同規範は任意規定ですがが、政府は規制当局がコーポレート・ガバナンスに関する規制を策定する際に同規範を参照することを期待しています。 同コードは、透明性、説明責任、責任、独立性、公正性などの一般的なコーポレート・ガバナンス原則、企業の主要機関の役割と機能、株主の権利、企業の社会的責任と環境責任、利益相

          インドネシアにおける有限責任会社(7)

          インドネシアにおける有限責任会社(6)

          上場会社 インドネシアで上場するためには、主要規制当局であるインドネシア金融庁(Otoritas Jasa Keuangan, OJK)の認可が必要です(第6条)。 上場後は、KSEI(インドネシア中央証券預託機関、Kustodian SentralEfek Indonesia )やKPEI(インドネシア清算・保証公社、KliringPenjaminan Efek Indonesia)が発行する取引規則や会員規則、規制など、すべての上場企業に課される追加要件を満たすことが

          インドネシアにおける有限責任会社(6)

          インドネシアにおける有限責任会社(5)

          取締役の責任 取締役は、その故意又は過失によって会社に与えた損失について、連帯して責任を負います(97条4項)(97条3項)。 但し、以下の場合には取締役は会社の損失に対して責任を負いません。 ①取締役が、会社の利益と目的に従い、誠実に会社を経営していた場合 ②損失をもたらした行為に関して取締役と会社の間に利害の対立がない場合 ③取締役が損失を防止または軽減するために行動した場合(第97条5項) 債務超過の結果、資金が不足し、会社がその債務を履行できない場合、取締

          インドネシアにおける有限責任会社(5)