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パートナーシップを監督する新KPPU規則の下で起こりうる課題

独占禁止法の監督とは別に、インドネシア競争当局(KPPU:Komisi Pengawas Persaingan Usaha)は、大企業・中堅企業とその零細・中小企業(以下「MSME」)パートナーとの間のパートナーシップ契約も監督しています。

パートナーシップとは

当事者間の私的契約に基づくパートナーシップは、インドネシア商法および民法によって規定されています。パートナーシップには主に2つのタイプがあり、一般的なパートナーシップ(perseroan firma)は、単一の名称で事業を行うものです(商法第16条)。
各パートナーは、パートナーシップ契約を超えない限り、第三者との法的拘束力のある取引の締結を含め、パートナーシップを代表して行動する権限を有します(第17条)。すべてのパートナーは、パートナーシップのすべての契約上の義務について連帯責任を負うという特徴もあります(第18条)。

パートナーシップを運営する者は、パートナーシップの債務について連帯責任を負うが、資本を提供する者は、パートナーシップの運営に関与しない限り、出資額以上の責任を負いません(第20条~第21条)。

一般的なパートナーシップは、公正証書(akta notaris)によって設立されます。この公正証書は、パートナーシップの所在地である地方裁判所に登録しなければなりません(商法第23条)。証書には、各パートナーの氏名、職業、住所、パートナーシップの形態が合名会社か合資会社かを示す記載、パートナーシップを拘束するパートナーの権限に関する制限、会社の存続期間案、パートナーに関する第三者の権利に関する規定が含まれていなければなりません(商法第26条)。

インドネシアにおける外資規制を規定する大統領規程2021年第49号では、特定の分野について、中小・零細事業者、協同組合とのパートナーシップが条件付けられています。
パートナーシップの形態には、インティプラズマ、下請け契約、フランチャイズ、一般商業、ディストリビューションと代理店業、サプライチェーン、成果分与、オペレーション協力、合弁事業、アウトソーシング、施設・設備の建設があります。
ここでは、政府や業界団体が作成した中小・零細事業者リストからパートナーを選択することが推奨されており、大規模事業者側は作業の種類や推定金額、実施時期などを記載したパートナーシップ・コミットメントを作成し、事業許認可を申請する際にOSSシステムを通じて提出しなければなりません。

上記のように零細・中小企業(MSME)とのパートナーシップが要求されているにもかかわらず、外資企業を含む大・中企業がそのMSMEパートナーを間接的に支配していることが判明した場合、KPPUはその企業に対して訴訟を起こし、行政制裁を科すことができます。

数年来、KPPU は零細・中小企業(MSME)パートナーシップに熱心に取り組んできました。最近、この分野の新しい規則が発行されたことは、この分野に対するKPPUの揺るぎないコミットメントを強調するものです。

この規則、「パートナーシップ・ケースの手続きおよびケース処理に関する2024年KPPU規則第2号」(以下、「新規則」)は、2024年4月に発行され、同じテーマに関する2019年KPPU規則第4号(以下、「旧規則」)を置き換えるものとなります。

新規則の要点

①書面による警告段階の期間の明確性

競争事件における行動変更と同様に、KPPUは、パートナーシップ事件の被通報者に対し、事件を取り下げ、行政制裁を科さないことと引き換えに、特定の救済措置を実施するよう指導することができます。しかし、行動変更の指導がKPPU委員の裁量による任意である競争事件とは異なり、パートナーシップ事件では、具体的な救済措置の実施は必須となります。

新規則の下では、KPPUが申立てに理由があると判断した場合、報告された当事者が履行しなければならない是正命令を含む警告書が発行されます。この警告書は、被通報者の責任の認否にかかわらず発行されることにご留意ください。被通報者が書面による警告に完全に従った場合、KPPU は訴訟を中止します。そうでない場合、KPPU は訴訟を続行し、被通報者は行政処分を受ける可能性があります。

新規則は、旧規則の3回の警告書段階を維持しています。これらの書面による警告は、報告された当事者が潜在的なパートナ ーシップ違反を回避するための是正措置を実施する機会を提供するものです。

警告書には通常、違反の発生を回避するために被通報者が実施すべきKPPUの命令が記載されています。以前は、報告された当事者は14営業日以内にKPPUの命令に従わなければなりませんでしたが、現在は、その遵守期間が30暦日に延長されました。

②厳格な証拠要件の採用

新規則に基づく証人、専門家、文書、報告された当事者の陳述の要件は、競争事件の事件処理規則を反映したものであり、より厳格な証拠提示を要求しています。これは、より緩やかであった旧規制の枠組みとは対照的です。

例えば、旧規則の下では、KPPUが法人を証人または報告当事者として召喚する場合、その法人は法務チームまたはビジネスチームによって代表されることができました。現在、新規則では、企業は取締役(PT(perseroan terbatas 、有限責任会社)の場合)または経営陣(PT以外の事業体の場合)によって代表されることが義務付けられています。取締役または経営陣は、従業員および/または企業の法定代理人を同伴することができます。

③被通報者の反論の余地の制限

新規則の下では、追加審査段階では、報告された当事者がKPPUからの警告書に記載されたすべての是正命令に従ったかどうかだけが評価されます。その結果、報告された当事者が違反の疑いについて反論する場は、調査および/または予備審査の段階でのみ反論が可能となりました。この変更は、報告された当事者にとって不利な改正となります。以前は、報告された当事者は、事実証人や専門家証人を含む証拠を提出し、反対尋問を行うことによって、さらなる審査段階で違反の疑いについて反論することができました。

さらに、新規則は、被通報者がいつ、どの段階で、違反の疑いに対する反論のための証拠(特に、事実証人や鑑定人)を提示し、尋問することができるかについては明記していません。旧規則では、違反の疑いを立証するための証拠の提示と審査は、追加審査の段階で明確に規定されていました。

④パートナーシップ案件におけるKPPUの決定に対する裁判所への異議申し立て

異議申し立てが認められた判例があるにもかかわらず、新規則では、パートナーシップ・ケースにおけるKPPUの決定は最終的なものであるとされています。これは、旧規則における地位と同様ですが、パートナーシップ事件における上訴メカニズムを規制するという最高裁判所による最近の判断とは大きく異なっておりますので、KPPU決定に対する裁判所への異議申し立てが可能かは新規則上明確ではありません。

結語

パートナーシップが求められる事業は、養鶏、養殖漁業、水産加工業、セメント製品産業、釘、ボルト、ナット産業、二輪・三輪自動車のコンポーネント・部品産業、ビル建設、農業機械やオフィス機器のオペレーティングリース、通信機器・家電機器の修繕等に限られておりますが、KPPUによる指導監督を受けないよう関連法令の事前の確認が必要となります。

(参照)
Assegaf Hamzah & Partners/ Client Update/ 30 April 2024/ Potential Challenges under the New KPPU Regulation to Supervise Partnerships
Jetro: 外資に関する規制(https://www.jetro.go.jp/world/asia/idn/invest_02.html

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