見出し画像

不運にファックされたくなければ幸運をハックしろ:幸運を因数分解する

ここのところラッキーなことが続いているな、と以前呟いたけど、その後ちょっとした波乱万丈もあって、ある事に気づいたので忘れないうちに書き記す。

運は一枚岩ではない

まず、自分も最初は気づいていなかったけど幸運とかラッキーと一言で言っても、幸運というのは均質な一枚岩ではない。

たとえば自分が生まれた国が侵略されていないとか、先天的な病気を持っていないとか、親が偏った宗教や思想を持っていないとか、その手のタイプの幸運はもう自分の選択ではどうしようもない。まさに配られたカードでどう立ち回るかの話である。

一方で探していたものが早々と見つかるとか、ちょうど助けになる人が目の前に現れて手を差し伸べてくれるとか、思いもよらない偶然から解決策をひらめくとか、これらもまた「運が良かった」と思いがちである。

後者を幸運と呼びあたかも天運であるかのように運の良し悪しで納得するのは非常にもったいないように思う。なぜなら、後者はハックできるし、ハックしなければあなたの人生が不運にファックされるからだ。

サイコロでできるだけ多く6を出す

サイコロでできるだけ多く6を出したい時、あなたはどうするだろうか。上手なイカサマ師なら手の中で慎重に角度を決めて、注意深く投げるかもしれない。ハズレである。できるだけ多くのサイコロを用意して同時に何回もふるのが正解だ。片手で足りなければ両手、それでも足りないならば友達にもふってもらう。

当たり前のことかもしれないが、自分も含めこれをついつい忘れがちになる。より一般化するならサイコロの数x時間x時間あたりに振れる回数を最大化する事が正解となる。このすべての変数が自由な時もあればそうでないときもあるが、一つも自由度がないというのはそれこそ双六やギャンブルの中だけで、現実世界では明示こそされてないがだいたい自由度は1つ以上ある。

不運について考えるとわかりやすい。なにかに失敗した時、運が悪かったと考える。これは最悪の態度である。自分の未来を不確定要素に委ねてしまっとる。失敗の原因を見つけるのはたやすい。不注意であれ、準備不足であれ、基本的に詰めが甘ければ失敗する。

言い換えれば、詰めが甘い状態で、不運の付け入る隙を消せない状態で行動に移さざるをえなかった事が原因である。それはフェイルプルーフを設定せず単一のプランに賭けたからかもしれないし、時間不足かもしれないし、想定外が起こった時のリカバリープランが不十分だったかもしれない。

つまり失敗は不運ではなく必然によって起きている。だからその必然を潰していけば自ずと失敗も減る。その必然を潰すプロセスに気づかず、不運の駆逐された結果だけを見るとあたかも並外れた幸運であるかのように誤認することになる。

フェイルプルーフ

最初に断っておくと、この記事は幸運を因数分解しているものではない。だからタイトルも素因数分解とは言わずに控えめに因数分解と言ってる。だからまだ自分が見えてない因数があったりするかもしれないし、まず間違いなくまだ隠れている要素はある。ただ、私が今理解している範囲の話をしよう。

サイコロの数x時間x時間あたりに振れる回数

という話を冒頭で出した。まずサイコロの数は1つ目の因数だ。これはフェイルプルーフと言い換えることもできるかもしれない。サイコロが一つの状態で絶対に6の目を出さなければならない時、普通にやれば17%だ。でもサイコロを10個用意すれば1個以上6が出る確率は84%、1個サイコロでいえば1,2,3,4,5のどれかが出る確率と同じくらいになる。

どんな計画でもプランAしかない状態でそれがコケたらあとは必死でそれを立て直すしかないが、プランA,B,C,Dが併行して走っている状態を作り上げてしまえば、どれか一つがコケても残りのどれか一つがゴールすればいい。非常に安定した精神状態でコケた一つを悠々と立て直せるからあまりにも有利すぎる。

同時にスタートしたプランA,B,Dは頓挫したとしても、何か一つくらいはうまくいくので無事ゴールしたあとでこう言おう「運が良かったからプランCは何のトラブルもなくすすんだ」と。

時間

次に時間。大きなプロジェクトには時間がかかるのがつきものだし、えらいさんに話を持ってくには根回しやら中堅どころに提案のチェックをしたりとにかく時間が消費される。時間というものは保存や貯蓄もできず、貴賤貧富の差なく1日の終わりに消えてなくなるものだから軽視されがちだけど、運をハックする上で最も重要な要素だ。

時間さえあれば大きな計画を動かすこともできるし、崩れた体勢を立て直すこともできる。結果の変わらない努力を時間稼ぎと言って軽視する人もいるけど、稼いだ時間を賢く使える絵図を十分に練っていたなら、時間稼ぎは極めて強力に状況を逆転させることもできる。でも時間稼ぎよりももっと低コストでできる方法がある。スタートラインを前倒しにするだけだ。

これはある程度自分の癖を知る必要があるが、自分の場合「十分に準備が整った」という状況は往々にして遅すぎるので「まだとてもスタートできる状態じゃないな」という段階でスタートする事にしている。初めてみないと何が必要になるかわからないし、必要になってから調達していれば調達の間前に進めずに詰んでしまう。

めちゃくちゃ早くからスタートして、トラブルによる遅延を経験しながら締め切り前に余裕のゴールをしてこう言おう「ちょうど運良く間に合った」と。

フェイルセーフ

双六はターン制バトルだが、人間社会のほとんどの舞台はターン制ではない。1日に1回しか意思決定できないチームと1日に3回意思決定するチームなら後者にアドバンテージがある。PDCAサイクルが下火になり、OODAループが勃興した事(すでにOODAすらもう古くなりつつあるが)からも意思決定の回数が競合に対し優位性をキープできるのは常識になりつつある。

極端な話、1日のうち、正午に1回の意思決定をしている船に穴があいて、あと18時間で沈没する状況になった時、まあまあな確率で沈没する。同じ規模の穴が空いたとして、1日朝昼晩と3回意思決定している船なら意思決定間が18時間以上あくことはなくかならず補修される。(意思決定さえすれば秒で穴を防げる船大工がいて、クルーは沈没するまで動かない指示待ち人間の場合)

さっきプランA,B,C,Dが並列になっている話をしたが、今度はプランAについて一定時間ごとにA→A'→A"→A'"→A""と経時的に最適なプランに改変していくフィードバックループを動かしておくのは重要である。順風のときはなにが順調か把握してその流れに乗って一気に進められるし、逆風のときには何が原因か理解して用意してあった対処方針に切り替える事ができる。

先手を打ち続け、勢いにはのり、つまづきには乗り越えられる道を用意しておきながらいけしゃあしゃあとこう言おう「運良く準備していて助かった」と。

番外編:誰かにふってもらう

正直ここからはまだ十分に再現性をもって言えないけど、いわゆる成功者を見ているとこの要素は強いように思う。できるだけ多くのサイコロをできるだけ何回も振る場合、両手に抱えきれない分は誰かにふってもらうに限る。

具体的に言えば、面識がない人同士でも利害の一致で手を組んだりすれば単独行よりも多くの成果が得られるし、自分の苦手な分野を、得意な人に助けてもらえれば簡単に解決する問題もある。

さらにいえば今までのすべての項目は全部が補完し合っている。時間があれば人に頼ることも、頼れる人を探すこともできる。自分以外にも頼れる人がいればこまめに先手をうつことをできるし、並列して走るバックアッププランを用意することもできる。

そうすれば安定して6を出し続けることができるし、6がでなくても不調でも5,4くらいは出せる。10個のサイコロをふってすべて3以下になる確率なんて0.1%よりも低い。そんな状況を作れたら、サイコロを振ることはギャンブルでもなんでもなく、ただの作業になる。

逆を言えば、今言ったことが制限された環境や蔑ろにしてしまった状況では「幸運な人達」相手に相当なハンデを背負って戦わないといけなくなる。

影に日向にあまり邪道なことばっかりやってると、実は「自分が気づいてないけど、実は助けてくれている人」や「将来的に組めば大きな利益を生み出せる潜在的な協力者」が中立もしくは敵対に回ってしまうし、その結果まだ自分が見つけていない変数のあたりが調整されて「何故か運が悪くなった」と感じるようになるのかもしれないね。恐ろしいね。

と、まあここまででハックできる幸運の話をしてきた。が、ハックできないものもある。幸運であろうと、そうでなかろうと。だからこそ、今の不運なり幸運なりが、自分のコントロール可能なものかどうかを冷静に見極める事は重要になる。

いわゆるニーバーの祈りと言われる祈りが、神学者ニーバーが言及するずっと前から、そして時を経て今もなお人々の間に浸透しているのは、どの時代にも通用する普遍の真理だからかもしれないね。

変えられないものを受け入れる冷静さを、変えるべきのを変える勇気を、そして両者を区別する知恵を与えたまえ

ここまで読んで、もしまだ他にも幸運の因数知ってるよって人いたらコメント欄で教えてください。

よろしければサポートをお願いします。主として生活の再建と研究の継続のためにありがたく使用させていただきます。また記事にて報告とお礼いたします。