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美容院恐怖症

子どもの頃から、髪の毛を切りに行くのが嫌で仕方がなかった。
それでも、伸ばしっぱなしというわけにもいかないので、渋々近所の床屋へ行くのだが、カットのみにしてもらっていた。

普通、床屋でも美容院でも髪の毛を切る前や切った後にシャンプーするものだと思うのだが、ぼくはカットで散々髪の毛に触られるのをガマンしているのに、その上シャンプーで頭を掻き乱されるのはたまったもんじゃなかった。

床屋なら、ある程度の年齢になると、顔を剃ってもらうのだけれど、ぼくにとってこれほどの恐怖はない。だって、他人に刃物を押し付けられて、じっと耐えていなくてはならないなんて!恐ろしいったらありゃしない。

そんなわがままな客だったけれど、行きつけの床屋さんは優しくて、「シャンプーも顔剃りもしないんだったら、まけといてやるよ」と安くしてくれていた。
当時は、1000円カットもなかった時代なので、床屋に来てシャンプーも顔剃りもしない客なんて、ぼくくらいしかいなかったのだろう。

そんなぼくだったが、社会人になる頃には、美容院で髪の毛を切ってもらうようになっていた。当然、シャンプーもしてもらうことになる。
床屋へ行っっていた頃は、理容師の人と話しをすることはなかったが、美容院では美容師と会話をしなくてはいけない決まりでもあるのかと思うくらい、次から次へと話題を提供して会話をしようとしてくる。ぼくも少しは社会性を身につけてはいたので、何とか会話をしようと試みていたが、美容院への苦手意識は解消されなかった。

そして、近所に1000円カットのお店が出来てからは、だいぶ気楽に行けるようにはなったが、やはり髪の毛を触られるのは苦手だったので、2ヶ月3ヶ月おきくらいにしか行かなかった。

仕事を辞めてからは、身だしなみに気をつける必要も無くなったので、1000円カットすら行くのをやめてしまった。なので、今は髪の毛が伸びたと思った時に、自分でバリカンで適当にジョリジョリっと刈っている。
見た目は悪いかもしれないけれど、精神衛生上これがいちばん自分には合っているのだと思う。

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