送り人

先日、もうすぐ退職するぼくに職場の同僚が送別会をやりましょうかと声をかけてくれた。そこまではいい

ぼくは割と職場を転々としてきたので送別会を経験したことは一度や二度ではない。送別会に誘われた時ぼくは必ず「すみません、今ちょっと金欠で…」と断りの文句を言うことにしている

すると大体は「お金なんていいよ、主役なんだから」と言ってくれる。ていうか、それがマナーというか当たり前だと思っている。もし、ぼくが送別会の幹事だったら辞める人からは絶対にお金を取らない 

もちろん今回も「ちょっといまお金がなくて…」と言ったのだが、「そっか、残念…」とあっさり引き下がれてしまった。送別会を割り勘で開催しようとしていたことに面食らってしまった。しかも、その人たちとはわりと仲が良いと思っていたグループだったので非常にガッカリした

おそらく、その同僚たちは定期的に開催している飲み会のついでにぼくの送別会をやろうとしていたのだろう。ぼくは所詮ついでの存在なのか、と何だかこの数日間モヤモヤしている

言葉ってつくづく水平で当てにならないなと感じている。「残念」と言われても本当に残念がってくれているとはかぎらない。ぼくは誰か一人にでも「hiroponさんの分は私達で割り勘するからおいでよ!」と言ってほしかった。というか言ってくれると思っていた

でも、よく考えてみれば職場に友情みたいなものを期待したぼくのほうが馬鹿だったのだ。会社なんてものは淡々とビジネスをする場でしかないのだから。他の国から見れば日本のように会社の人と親密にする文化はきっと異常に見えるだろう。ぼくもそう思う

ぼくはお酒が全く飲めない体質だけど、その人たちの飲み会には何度か参加してきたし皆と同じ金額を払ってきた。我慢して喫煙席にも耐えた。だから、最後くらいは気持ちよく送り出してほしかった

送別会は退職する人以外で割り勘というのは、どこの会社も同じだと思うけど、辞める人に対する送り出し方や態度は会社によって随分違う。すごくドライにされた事もあるし、ブランド物のハンカチをプレゼントしてくれた会社もある。最後の態度や行動で自分が大切にされてきたかどうかがわかる。生き残る会社というのは、すごく人を大切にする会社か反対にすごく冷酷な会社か、そのどちらかだろう
 
書いていたら心のモヤモヤが少しだけ晴れてスッキリしてきた。その人たちには最後の別れの挨拶はせずに黙って去ろう。もちろんグループラインも無言で抜けよう。ぼくは正直に生きたいし社交辞令が大嫌いだから。

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