三行詩『許されざる者と魔女』


「才気のあるシスターが司祭になれないのはおかしい」
そう抗議したおれは根も葉もない噂を立てられて
挙げ句のはてに無実の罪を着せられ、教会を追放された

ボロボロになった家のドア
そこには汚い字で書かれた貼り紙がしてある
「お前は神に嫌われた」

この冷たい森の中を彷徨い歩き、三日目の朝
ふいに赤い髪の女がおれの前に現れた
事のいきさつを話すと赤毛の女はクスリと笑って

神様に嫌われたですって?
最高にかっこいいじゃないの
赤毛の女は透き通る声でそう言った

人はね、凡人として生まれて
善人に憧れて、最後は罪人になって神様と戦うの
素敵だと思わない?

おれは何も言わずに
同意もせずに
ただ赤毛の女の話に耳を傾けた

私たち魔女は神と戦う義務があるの
人が作った幻想の神を倒して
人が作る前の神を取り戻さなければならないの

あなたも来なさい
私たちに知恵を貸して
共に戦いましょう

赤毛の女は細い手を差し出し
おれはその手を力強く握った
迷いはなかった

こうして神に仕えたおれは
神と戦うために魔女の一員になった
許されざる者にはもう懺悔は必要なかった


(PCのサイズに合わせて書いているのでスマホでは三行に表示されない場合があります)

※気に入ってくれた方はサポートしてくれると嬉しいです。

サポートして頂けると今後の創作活動の意欲になります。