錦繍


元夫婦の手紙のやり取りだけで、ここまで壮大な物語を作ることができるのか

まるで卓越したピアノとヴァイオリンのデュオのような、いつまでも聴いていたい名演を見せられているようだった

『生きていることと死んでいることは同じようなことかもしれない』

モーツァルト の音楽には生と死の区別がなく、生きることも死ぬことも一つのテーマの中に収まっている。そんなふうに感じる。モーツァルト の人生が音楽と切り離されたことがなかったように、それは常につながったものなのだ

モーツァルト は言っている『新しい喜びは、新しい苦痛をもたらす』と。痛みの中に喜びがあり、喜びの中には痛みがある。どちらか一方だけを求めると人は不幸になるが、そこに相反するものを見いだすことができる人は多くのことを得る

ぼくは文学のことはよくわからない。わからないけれど、この作品が文学だということはわかる。最近はモーツァルトを聴くと頭が良くなるとかで子供にモーツァルトを聴かせる親が増えているという。でも、そういう聴き方はあまりオススメできない。なぜなら、モーツァルトの音楽は心で感じるものだからだ

『人生で重要なのは生きることであって生きた結果ではない』とゲーテも言っている。人を豊かにするものはその人が築いたものではなく、その人自身の心の在り方なのだ。


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