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第8回 釣りしのぶ

夏の軒下に吊るすものといえば風鈴。ですがもうひとつ、江戸っ子に人気の
“吊るす観葉植物“があります。今回は「釣りしのぶ」のご紹介です。

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ざっくりと釣りしのぶの作り方を書きましたが、材料となる山苔やしのぶを探すのも、山苔が崩れないよう成形するのも、葉が出てくる場所を予測しながらしのぶを巻き付けるのも一筋縄ではいきません。各工程で職人の観察眼や技術が大変に問われるものでした。

釣りしのぶは、江戸の庭師が趣味で作ってみたものを出入りしていた屋敷へ、お中元として贈るようになったのがはじまりと言われています。
それが庶民にまで広まり、幕末の頃には毎年多くの人が夏の風物詩として釣りしのぶを楽しむようになりました。
上流階級で楽しまれる風習が庶民に広がっていくこのスピードの速さ、これこそ「江戸の園芸文化らしいな」と思うところです。園芸を日常の中で楽しむゆとりがあるくらい、庶民の生活水準が高まったからこその傾向と言えるかもしれませんね。

定期的に水に浸すなど、きちんと手入れをすれば何年も楽しむことができる釣りしのぶ。直射日光は避けた方がよいため、基本的には「よしず」などの日除けの内側に吊るしてあげましょう。絵にある長屋住まいの夫婦は、日が傾き過ごしやすくなる時間を見計らい、釣りしのぶと共に思いきり江戸の夏の風を味わっています。

(笹井さゆり)




【参考文献】
日野原健司,平野恵『浮世絵でめぐる江戸の花』誠文堂新光社

【参考Webサイト】


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