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孝行の情が憎しみを溶かす ーいまとわな人々1・舜帝ー

 古代中国神話時代の帝王で、紀元前2277年から2178年の間に生きたと伝えられています。我々が学ぶ周や殷の国のずっと前の時代です。《史記・五帝本紀》には、”天下の徳は虞帝より始まる。”とあり、理想的な人物・帝王として今でも尊敬されています。

 舜帝は古代の王・黄帝の子孫とされていますが当時は平民でした。幼い頃に生母をなくし、後妻と子供、実父からも疎まれ、憎まれて虐待を受けていました。屋根の修理中に火をつけられたり、井戸を掘っている際には生き埋めにされそうになりました。それでも舜は忠孝の道理を貫き、よく働き家族を養っていました。

努力と才能が認められ堯帝の後継者に

 舜は家族を養うとともに、歴山で田を耕し、雷澤で漁をし、黄河の河岸で陶器を作り、寿丘で日用雑貨を作りながら、周囲の人々のために尽くしました。そんな舜のもとには多くの人が集まり、1年で集落ができ、2年で邑に、3年で都となったといいます。そのことを聞いた当時の帝の堯は、舜を後継者として用い、娘2人を舜に嫁がせました。

 舜は有能な人材を登用して政をよく行い、堯と共に4凶族を追放したり、4罪を実行して中原に平和をもたらしたと伝わっています。また舜は息子の商均が跡取りにふさわしくないと判断し、治水を行った禹を後継者としました。禹は治水に失敗して断罪された鯀の息子です。禹はその後夏王朝を建てました。

孝行の情が中心となり国を治める

 不条理に迫害していた父親や後妻も後に舜を認め愛するようになり、殺そうとした義理の弟もよく兄を支えるようになったといいます。後に孔子が儒教を起こす際には、舜を理想的な人物像としてその教えの中心に据えています。その考え方は東洋文化の基礎として、現在まで続いており、日本にも多大な影響を与えています。

 迫害する者を尊び愛することは普通では難しいことです。さらにそれが家族であるならば、筆舌に尽くしがたい苦難といえます。その峠を孝行の情で乗り越えることで、国が治まり世界が平和になることを舜帝の生き方が示しています。興味のある方は、宮城谷昌光氏による小説「布衣の人」が侠骨記に収められていますので、一読をお勧めします。

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