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うまれ(短文)

 短詩を作ろうとして作品にしきれなかったものを、短文として置いていきます。

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むずかしいことばがステージに来て踊る よりむずかしい方が当然人気が出て、担当カラーのサイリウムが波立っている

でも、 が後に続くタイプの「いい人」

うまれは俳句だと言ったら、短歌は少し嫌な顔をする と思った

思い出す ことをとても嬉しがっている犬は、思い出すために、飼い主を一度忘れる必要があった それが苦しくてしばらくは餌が喉を通らなかった

この坂でブレーキが壊れたら即死だろうと思いながら走るとき 自分は本当にこういうことをやめるべきだと思う

復活のカードを使う 朝がどろどろになって夜が出てこれなくなるように それは皆で相談して決めたこと

虹を見た傘が傘立てでみんなに喋っている虹の色

怖いのは、眼鏡をつけた方がぼやけて見えること

せっかくの殺意は大事に取っておく いざというとき売れるかもしれないから 

化けた狐を化けた姿で愛すのは狐に悪い気がしてならない

類義語のような妹が対義語になるまでに時間はかからない

あなたが死んだらやっていけない を毎秒思う必要がある 想像を途切れさせることに器用になってはいけない

冗談は言われた側が思うこと いずれ桜の標準木はすべて枯れる

ニュータウンには万華鏡という意味がある

玉突き事故とビリヤード どちらの歴史がより浅いだろうか

動物園のレントゲンをとったら職員棟に違和感がある

間氷期は隠しておくべきことだった

ウィンカーがウケるくらい高速で動く 雪が目に入り手で雪を払う

ベートーヴェンの死因も分かるすごい時代のインターネットがまばたきをすれば空中に現れて寝ながら見れる映画に挟まった広告をウィンクで飛ばしている

イメージの宇宙はブルーベリー色をしていて、ブルーベリーを食べたときはしゃぼん玉の味がすると思った

主人公が止まらなくなったとき、止めるのはライバルよりも作者のすべきこと だとしたら

にわとり学校からたまご通信が届く 人は読まずにシュレッダーにかける

一撃で死んだのがせめてもの救いだと 後ろの方の席から聞こえて 映画館で喋らないでくれます? と私では無い人が大声で叫んでくれて 私では無い人が大人二人に掴まれて遠くの方へ連れられていった

ケーキ屋の店先の紅葉は、チーズケーキの色をしている 店員さんが出てきて、葉の山を指さし、「これも商品ですから」と言ったのが、興がさめるなあ と思いながら帰った

けいさつはラズベリーいろのばっぐをひらいてたしかめてあきらめた

かなしいときに笑っちゃう癖がある友だちがそれを知らないでしあわせになる方法について

龍が川を流れていったのを感じた それを目で追えるくらいの視力はもう無くなっている 

日がよく当たる場所ほど骨が生えてくる

一秒ごとに頭上で抽選が行われ、運良く生が当たり続けている

銃を向けることで初めて、殺さないで を聞き出せた

殺してきたからおまえは殺されて死ぬと言われたがじゃあおまえらもおいしい動物に食いちぎられる

死が光に化けるとき必ず現れる前兆がある

採算という言葉が一番好きじゃない 地球というメリーゴーランドは今日も錆びた木馬の音がしている

風景から灰汁が出ている

ダリアが火傷のように咲いている、

全員が死んでから新しく開発された楽器に、新しい運指が生まれていく

恋してる人の速さで彼は電車に向かっていった

さぐりさぐりの二人が喫茶店に入ってきて、テーブルに座って、何かを頼んで食べて話したり話さなかったりして、喫茶店を後にするまで、そのすべてをじっと見ていた監視カメラ

20230623





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