丸田洋渡
作品以外の文章
自作品
掌編
主に過去のネットプリントで発表した、数の多い連作等の作品を、置いておく場所です。期間を逃した方などぜひご覧ください。
鑑賞をさせていただいたもの
短歌20首連作です。 ──────────────── Fair Enough 丸田洋渡 刺したあと貫くためのひと押しで爪楊枝の先端は曲がった 声が磁石になって四月の教室に仲良しグループのできあがり 先生の言うとおりに列に並んだ モルモットに二回出てくるモ これもまた何かの暗示 新しい歩道橋が積乱雲の下 振った手のその手のひらが見えたなら占い師は占ってしまうよ 夏の雲は秋の雲へと散らばった 折紙の手裏剣のきらめき 夕ぐれどきのスーパーみたい生
蓚酸が体液を酸性化してしまうので、たけのこを毎日食べたい とかだと、アルカリ性のわかめと一緒に煮たりして、中性にするのがよい。 一年前くらいに、室井綽・岡村はた『竹とささ その生態と利用』(保育社、昭和46年)を読んだときの、自分が書いていたメモ。たけのこを毎日食べたい場合のすすめが載っていて、確かにそういう人もいるかもな、と適当に思った後、自分もそういう人になる可能性は0ではないのだから と思ってメモした記憶がある。 このように、そのときどきでメモしたことが、何の
ある賞に応募して落選した50首連作より、抄出して再構成したものです。完全版はまたどこかで形にする予定です。 ○ Unlucky 丸田洋渡 遠雷がもっと遠くへ逃げていく嘘つきがいる新生児室 捻挫した子どもを囲む子どもたち柏葉あじさいの陰の奥に 行かないでその木陰には平成のバスガイドが三人もいるから ○ 夏の雲は自動的に流れて行ったすみれ色の果物籠の上 野薊が揺れる 未来で訪れるはずだった蝶がさっき死んだ 将棋将棋アイス将棋将棋将棋アイス なのに
日記にしようとしてメモしていたものを、昇華しなかったとき、そのメモは日記にならなかったもの、すなわち「日記ならず」になる(未成年、と同じ言い方で、未成日記と呼んでもいいが、語呂が悪い)。 ただの書き残しなら破棄すればいいものの、「日記にしようとして」書き残したものは、未来に何かになる気配を残していて、冬の花芽を剪り落とすようで気が引ける。いつか成就しそうな呪いの人形みたいで、ただ捨てるだけではない、何らかの儀式を要するような気がする。 だから、今からその儀式のような
川柳30句。 歓声 丸田洋渡 海沿いの水族館のいやいや期 雷は剣をあやして哺乳瓶 新月の新生児室なればこそ 新しい手が生えてくるから撮って うつくしい濡衣を着せられている 骸骨は琴のおけいこがあるから 都市伝説が透明になる ろわろわと白い卵が冷蔵庫 ふりかかる奇跡が大好きで病院 詩で詩を拭う戦いになる 死と気心がしれているから たかが顕現ごときで呼ぶな 悲しみと砂糖と塩と喜びと パーティーにふさわしくない喉仏 廃マジシャン法改正案(十)
ミニチェア 丸田洋渡 ミニチュアの椅子 ミニチェア ○ 椅子と椅子が結婚したとして ミニチェアが期待されるなら 家具屋から逃げるしかない ○ 家具屋姫 まぼろしの家具を要求 ○ 人の式典が再び開かれるまで 椅子はすしずめ ○ アマチュアの椅子 アマチェア ○ ありとあらゆる可能性からひとつに選ばれた わけではなく、初めからそうなる予定で、椅子になった木 ○ ミニチェアを作るのに必要 ミニ木 ○ 主にアスファルトと
お世話になっております。丸田洋渡です。過去に短歌の新人賞に応募して、落選した作品のうち、まだ公開していなかったものの中から、それぞれ数首ずつ抄出しております。 連作の流れが分からないままになるので読みづらいかもしれませんが、一首単体でも面白がれるようなもののみ引いております(全て載せられたらいいんですが、今改めて見ると表現の甘い部分が多くて全て公開するにはやや難がありました)。 本記事後半部にて、それぞれの連作に対して振り返りと反省と思い出を書いております。興味のあ
掌編小説です。 いい人・タイムカプセル 丸田洋渡 いい人 って思われつづけるのも難しいって感じ。 一度も開いたところを見たことがない教室があの学校にあったことを覚えている。 タクシーに乗ると必ず、運転手に、怖い話ありませんかって聞くようにしてるんですよ。 招待状にタイムカプセルの七文字が手書きで書かれている。 ・ 誰かを助けたい、ってもう思わなくなったっていうか、/鍵自体は、職員室の奥の金庫の中の金庫の中の箱の中に二つ入っているらしい/怖い話が
短歌50首連作 Float/Fluorite 丸田洋渡 三十円多く払ったのはメロンソーダにアイスがフロートするから 天秤がうすくらやみに傾いてあなたの半覚醒の寝返り ○ 恋のふりして洗脳はよくないな雨雲が雨落とさず通る 心は遥か上に浮かんでコンビニの監視カメラに当たって砕ける わくわく眠りどろどろ覚める 妖怪は町中にいるような気がする 花札が踊って話しかけてくる夢をよく見たハマりたての頃 寝る前になって今更よく分かる浮世絵の言わんとする
短歌の連作です。2023年5月31日にネットプリントで発行したものと内容は同じです。 跡形 丸田洋渡 Ⅰ 緩やかな時間旅行の夢をみる うつろう雲の轟音の消失
短歌の連作です。2022年3月5日に発行したネットプリント「第三滑走路」13号に掲載した、100首連作になります。発行時と内容は同じです。 Ephemerality 丸田洋渡
いつの間にか、思わず撮っていた写真を貼って、その時思っていたことを振り返るという日記です。 伝票で担当名が「細工藤」とあり、二度見して撮った。もしかして、「細(ほそ)工藤」と「太(ふと)工藤」がいて、細(ほそ)の方なのか。 もしかして、自分が知らないだけで、全ての苗字で「細」と「太」があったりする? と思って、そのときは日本全国の名字が頭の中で単純に3倍に増えていって、ぶわっと(ドローンみたいな脳内の視野で)沖縄とか北海道まで意識が飛んでいって、爽快だった。 「細工
詩 二篇 鉄琴 丸田洋渡 うちは木琴やからごめんね、と言われて、別に謝らんでいいよ、と答えた。何故かその子が泣いてるから、泣いていいんはこっちだけやのに、と思いながらハンカチを渡した。/自分以外の全員が木琴で、私だけが鉄琴であることは、はじめは自慢だったが、今はもうお金をいくら払ってもいいから木琴にしたいと恥ずかしく思っている。/放課後、涙を溜めながら早足で階段を下りると、関係のない地学の先生が「なら木琴買えばいいじゃん」と笑っていて、「それができるんならもうし
過去の77個のメモを、できる限り削ぎ落とした形で列挙し続け、10個ごとに、今しているゲームの画像を挟む。 五十音表は、文章のバラバラ殺人をした犯人が、家に帰って、惚れ惚れと死体(文字)を並べ直したコレクションである。 - 夢:曲技をしようにも、手が油で滑って何も出来ない。観客も、油まみれの床でまともに立っていられない。 - 脂っぽいものにしか使わない擬態語''ぎとぎと'' - 囚人が歌えるのは、捕まるまでに聞いていた曲だけである。 - 夢:宇宙のまぼろしの水道局には今日も
解錠師の手 丸田洋渡 鍵 鍵のモチーフは多用され、希釈されることにのみ意味があった 雲 雲は何かに喩えられる しかしその何かを前にして、雲に喩え直すことはしないだろう/元に戻らないことにのみ意味があった/できていく雲の洞に、溶岩と水銀を思い出していた/彼 の残像が写真になって それが無数に複製されたあと、度重なる放棄によって一枚へと戻っていった/雲を背にして 彼が言うことには/聞こえていた図書館が、聞こえなくなって、見えなくなって、喋れなくなって、食べれるよう
この前HUNTER × HUNTERを1巻から最新巻まで読んだ。 ○ 中学のとき軟式のテニス部に入っていた。 部長が「集合〜」と言えば集合し、「ボールバック〜」と言えば練習で散らばったボールを回収、「乱打〜」と言えば乱打を始めていた。 乱打? ○ テニス部の部長になったヒソカは、「乱打♤」とは言わない。レイザーとのバレーボール対決を見ていたら何となく分かる。 ○ 野原しんのすけにとっての通園バス ○ 突然YouTubeのオススメに出てきた