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【WONDERTAINER FUND】FIREBUG × アダビト:ピボットの先にあった今の事業、「SNS×キャラクター」ビジネスの可能性

私たちFIREBUGが設立・運営している、次世代のエンターテイナーが活躍できる場づくりを推進するファンドWONDERTAINER FUND(ワンダーテイナー ファンド)。同ファンドはこれまでエンターテインメント業界を牽引してきた企業・著名人などが主な出資者となっており、エンターテインメントの新たなプラットフォーム創出やDX推進などに取り組む、シード期のスタートアップ企業を投資対象としています。

そんなWONDERTAINER FUNDから投資したスタートアップのうちの1社が、世界初のキャラクタータレント事務所「Simple Side Mascots(シンプルサイドマスコッツ)」やキャラクター雑貨ショップ「tretoy(トレトイ)」を展開する、株式会社アダビトです。今回、FIREBUG代表取締役CIO/CFO宮崎が、アダビト代表取締役CEOの後藤颯太さんにキャラクタービジネスに参入した理由、そして今後の事業の可能性について話を伺いました。

事業のピボットを繰り返していた、起業初期のタイミング

宮崎:アダビトは2020年にキャラクタービジネスに参入し、直近ではTikTokマスコットキャラ部門フォロワー数日本一を獲得した「あさみみちゃん」を筆頭に複数のヒットが生まれています。ただ、現在に至るまでには幾度のピボットがあったと思います。改めて、アダビトのこれまでの歩みについて教えてもらえないでしょうか?

後藤:アダビトの創業は2016年4月です。自分が起業しようと思ったきっかけは、2011年3月に発生した東日本大震災です。当時、宮城県仙台市に住んでおり、震災の影響を受けました。そうした経験もあり、高校生の頃からボランティアやNPO(非営利団体)での活動を通して、震災からの復興に向き合ってきました。

大学に入学後は「社会的な活動を続けつつ利益を出していくためにどうしたらいいのか」をテーマに研究活動をしていました。その際、日本人の社会課題について調べる機会があり、内閣府が公表している『現在の幸福度と将来への希望〜幸福度指標の政策的活用〜』の結果を見たんです。そこには「日本人の、今現在の幸福度が低いと感じている人の過半数以上の人が、5年後の幸福度は下がると思っている」という内容が書かれていました。つまり、多くの人は「5年先の自分は幸せだと思ってない」わけです。

この結果を見て、すごく衝撃を受けました。それをきっかけに、自分の未来に対して期待できる人たちをひとりでも増やしたい、と思ったんです。そして、2016年4月に「これからの自分にワクワクできる世の中をつくる」というビジョンを掲げ、アダビトを創業しました。

宮崎:一番最初の事業内容は何だったんですか?

後藤:当時は、いろんな人の生き方を知った上でキャリアを選ぶというコンセプトの就活サイトを開発・運営していました。山形・宮城県を拠点に、いろんな人の「生き方」に関するインタビューを実施し、ひたすら記事をつくっていたんです。ただ、人材紹介業をやるのに免許が必要であることを当時は知らなくて……。それで「今の事業を続けるのは無理だ」となり、その後はピボットし、就活情報チャットBotなどを開発していました。

宮崎:後藤さんは2019年に上京していらっしゃいます。そのきっかけは何だったのですか?

後藤:山形・宮城県を拠点にしていた頃は短い期間に事業を何度もピボットしてしまっていました。それこそ、分散型動画メディアやキュレーションメディア、学生専用の匿名質問サービス、友活アプリ、音楽発掘アプリなどを開発していたんです。

そうした中、仲間内で細々とビジネスをやっていくのか、それとも大きなチャレンジをするのかを考えた結果、「これからの自分にワクワクできる世の中をつくる」というビジョンを達成するためには、今のままではいけないと思いました。いま幸せでない人が5年先に幸せになるような何かをつくる──そのためには、大切な人(家族・友人・恋人など)の存在、自分と大切な人の健康、必要最低限のお金、人生の多層な目的が必要だと思いました。これらをビジネスを通して提供するには、会社の規模を大きくしていかないといけない。そして、そのためには東京に行かなければいけないと思い、上京を決めました。

宮崎:山形・宮城県を拠点にしていた頃、資金調達に動いたことはあったんですか?

後藤:ありました。山形・宮城県で資金調達に動いたこともありますし、東京の人に話をしたのですが「東京に来ないと話にならないよ」と言われました。リモートワークが普及した今であれば、結果は違ったのかもしれないですが……(笑)。
資金調達もそうですが、採用においても東京と地方の差は大きかったので、東京で事業をやることにしました。そうした背景から2019年2月に上京してきて、その3カ月後にSkyland Venturesから資金調達を実施することができました。

宮崎:そのときはどのようなビジネスを展開しようと思っていたのでしょうか?

後藤:いま思えば時代が早すぎたなと思うのですが、当時からブロックチェーンに関心があったこともあり、スマートフォンに最適化されたNFTマーケットプレイス(OpenSeaのスマホ最適化版)を開発していました。ただ、いまほど市場が盛り上がっておらず、国内外でもプレーヤーの数が多くなかったので、早々にやめる決断をしました。

「10年続けられる事業」の答えがキャラクターだったワケ

宮崎:現在、アダビトはキャラクタービジネスを展開しているわけですが、さまざまな選択肢がある中、なぜキャラクタービジネスに行き着いたのでしょうか?

後藤:事業のピボットを繰り返す中で感じたのは、ビジネスを成功させるために必要なことは「続けること」だと思ったんです。長く続けていった先に成功があるにもかかわらず、それまではすぐに撤退してしまっていた。それで「次の事業は10年続けるぞ」と決め、そのためには自分が好きなこと、得意なことを事業にしようと思ったんです。

自分が好きで得意なこと、何をやれば事業が伸びるかのロードマップが見えて、なおかつ今やった方がいいこと(トレンド)を踏まえた結果、キャラクタービジネスに行き着きました。当時、中国ではキャラクター雑貨ブランドの事業で100億円を調達するスタートアップも生まれていたのですが、国内ではプレーヤーがいなかった。そうした背景から、キャラクター雑貨ショップ「tretoy(トレトイ)」を展開することを決めました。

宮崎:後藤さんにとって、心から好きだと思えることは「キャラクター」だった。

後藤:小さい頃から、キャラクターが大好きでした。それこそ、通っていた美容室に置かれているモニターに流れていたアニメ『パワーパフ ガールズ』がきっかけで、キャラクターやアニメにハマっていきました。今も日本国内のさまざまなアニメを見ているのですが、その動機はアニメやキャラクターが自分の人生を伴走してくれる存在だからです。
自分の人生がうまくいかず、少しキツイなと思ったときにアニメを見るのですが、アニメを見ることで頭の中がリセットされ、よし頑張るぞという気持ちになれる。アニメやキャラクターが自分の人生に寄り添ってくれる感覚を味わうことができます。

また、コロナ禍によってひとりで考えすぎてしまう時間が増えた結果、悩みを抱えてしまう人も増えている。そうした中、キャラクタービジネスを展開することで悩みを抱えている人に寄り添えるような存在をつくれたらいいなと思ったんです。そして、寄り添えるような存在を提供することで、5年先を幸せに思えることができるのではないかと思いました。

宮崎:では、tretoyを開始する前から自前のキャラクターをつくる構想はあったのですか。

後藤:自分たちでキャラクターをつくった方がいい、という考えはありました。ただ、今の「あさみみちゃん」のようなデジタルマスコットキャラクターではなく、一般的なキャラクターフィギュアを作ろうとしていたんです。いきなり自前でつくっても売れるまでに時間もかかると思ったので、きちんと売上を立てながらフィギュアの売れ筋やトレンドを知るために キャラクター雑貨ショップの事業を立ち上げることにしたんです。

宮崎:デジタルのキャラクターをつくろうと思ったのはなぜだったんですか?

後藤:キャラクターフィギュアをつくろうと思ったら、初期ロットの発注点数が数万単位からになっており、数百万円の投資が必要だったので無理だと思いました。当時、周りから「クラウドファンディングをやればいいじゃん」とも言われましたが、個人的にはクラウドファンディングで失敗したら、それこそブランドが終わるなと思ったんです。もちろん、クラウドファンディングを失敗させないための細かい工夫はいくつかあるのですが、それを一生懸命やるのも、個人的にはなんか違うなという思いがありました。

tretoyの運営を通じてキャラクターの販売データは持っていたので、それらをもとに自分たちでイラストを描き、それをSNSで公開したらいいのではないかと考えたんです。キャラクターをつくる際に大事なのは、その時代ごとで流行っている場所から生まれてきているということ。それが今の時代であればSNS漫画やショート動画だと思いました。とはいえ、急にアニメーション動画を作成するのは大変だと思い、まずはSNS漫画から始めることにしたんです。ただ、3カ月やっても全く伸びませんでした。

宮崎:伸びなかった要因は何だったんですか。

後藤:もちろん作品自体のクオリティが高くなかったこともあるのですが、そのときはTwitterではなくInstagramで展開していたんです。それこそ、Twitterの方がバズりやすいとは思うのですが、競合も多く、そもそも認知してもらいづらい。なかなかファンがつきづらいと思い、Instagramで展開したのですが想像以上に難しかった。

そこから新しいメディアで、誰も見たことないキャラを出した方がいいと思い、TikTokでキャラクターを展開することを決め、「あさみみちゃん」が生まれました。誕生から約1年2カ月で累計250万フォロワーを獲得するなど、国内のマスコットキャラクター最速で成長を続けており、ヒットを収めています。

ヒットとブームをつくり、5年先が楽しみになる状態にする

宮崎:これだけの短い期間で「あさみみちゃん」がヒットした理由は何だったのでしょうか?

後藤:TikTokは流行っている音楽に対して、何かしらのコンテンツを載せるメディアです。ただ、TikTok上のキャラクターに関しては自分がつくったキャラクターに対して、何かしらの音楽を載せるというパターンのものしかなかった。自分たちは先に音楽を決めて、それに合わせてキャラクターをつくっていきました。TikTokerのような手法でキャラクターを展開していくことができた、というのが大きかったと思います。

あとはユーザーと向き合うことを大事にしていることが挙げられます。大人気のキャラクターではなかなか難しいのかなと思うのですが、自分たちはDM(ダイレクトメッセージ)やコメントなどの声を丁寧に拾い、それをキャラクターに取り入れています。

宮崎:どうやって取り入れているんですか?

後藤:「こういうのを作ってください」という声は取り入れないのですが、「こういう部分がかわいい」「こういうのも見てみたい」という声は取り入れるようにしています。例えば、「あさみみちゃん」はかわいくて癒しがあるキャラクターですが、人によって「かわいい」「癒し」と思うポイントは異なります。だからこそ、どこがかわいくて、どこが癒しとなっているかがわかるコメントは取り入れて、その声をいかした動画をつくっています。

宮崎:アダビトの今後の戦略を教えてください。

後藤:現在のアダビトの事業テーマは「ヒットとブームをつくる」ことです。ヒットとブームをつくり、日本から世界を狙えるマスコットキャラを生み出すことを目指しています。それを実現することで、一緒に働くメンバーの生活がもっと良くなったり、当社の生み出すキャラクターが世の中に浸透している状況だと、会社自体も世の中から今より必要とされたり歓迎される存在になり、これらの結果として、明日どころか、1週間1ヶ月1年ひいては5年先が楽しみな状況にしていけるのではと思っています。
まずは一緒に働くメンバーやキャラクターを好きでいてくれるファンの人たちが「これからの自分にワクワクできる状態」をつくっていきたいです。

そのために、「あさみみちゃん」を筆頭にヒットしているキャラクターをSNS上だけではなく、いろんな手段を通して日本中に広めていきたいと思っています。また、新規のキャラクターの立ち上げもヒットの再現性をもって横展開して拡大できる様に同時並行で進めていく予定です。

宮崎:最後にWONDERTAINER FUND、ひいてはFIREBUGに期待していることを教えてください。

後藤:「あさみみちゃん」などのキャラクターを日本に広めていくためには、まだまだやらなければいけないことがたくさんあると思っています。そのために必要な知見やアセットをFIREBUGから提供していただけたら嬉しいです。また、当社の事業に興味を持っていただけそうなクリエイターの方がいらしたら随時ご紹介いただけたらと思っています。先日、とある新規プロジェクトを進めるのに必要な協業先をご紹介いただけないかWONDERTAINER FUNDさんにご相談したら適任な方をすぐにご紹介していただいて物事がスムーズに進んでとても助かりました。

宮崎:ありがとうございます。後藤さんと普段お話していると、これまでたくさん挑戦されてこられた分、たくさん失敗してその度に高速で学習をされて着実に事業の成功角度を高めてこられているのを肌で感じます。ここから先、壮大な目標に向かってより難易度の高くて大きなチャレンジをされていくと思うので、WONDERTAINER FUNDやFIREBUGのもつアセットは惜しみなく提供して、全力でご支援していきます。ぜひ引き続き一緒にがんばっていきましょう!

WONDERTAINER FUNDについて
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■株式会社アダビトについて
ミッション「明日の楽しみをつくる」を使命としたキャラクター企業です。ビジョンである「これからの自分にワクワクできる世の中をつくる」を達成するため、キャラクター雑貨ショップ「tretoy(トレトイ)」とキャラクタータレント事務所「Simple Side Mascots(シンプルサイドマスコッツ)」を運営しています。

社名:株式会社アダビト(Adavito Inc.)
代表取締役CEO:後藤 颯太
取締役CTO:池野 一樹
所在地:〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-16-3 メイゾン原宿201号室
設立:2016年4月
アダビト公式Webサイト:http://adavito.me/

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*お問い合わせは株式会社FIREBUGのお問い合わせフォームまで

Writer:新國翔大

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