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短編小説「ジェニーは幽霊」①

 ジェニーの顔は腫れていた。おかしなほどに腫れていた。ぐちゃぐちゃに腫れていた。
『ジェニーよしてくれよ』やつはなんてコメディアンだろう?こんな可笑しな顔を晒してまで、俺に一体なんのようだ?俺は早くトイレにいきたいんだ。そしてアレを持って、此の腐った町を脱出したい。
『ジェニーよしてくれよ』また言ってみる。
 寄宿舎の娯楽室。ビリヤード台や、ウィスキーのボトルが常備された最高の娯楽室。だがここにいるのは、発狂寸前の俺と、蜂に刺されたゾンビみたいな腫れた顔のジェニーの二人だけ。他の奴らは多分、本当にゾンビになって消えた。この世は全てが嘘だ。嘘で塗り固められている。それに気付いた俺はさっさと旅の支度をしようと、でも頭がクラクラして、苦しいからここ娯楽室へ駆け込んだ。
『ジェニー早く、俺と話をしよう』
『お前の持っている鍵が必要なんだ』
そう。俺は寄宿舎に居た、ガールフレンドの部屋の机に眠っている日記を取り出すために引き出しの鍵をジェニーに要求している。どうしてジェニーが持ってるかって?
『ミアと寝たのは、お前だろ?本当は付き合っていたんだ!』俺のガールフレンド、ミアとジェニーは関係を持っていた。

②へ続く

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