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この痛みを忘れない。

先日「起業家塾に行くのを止めようと思っている」という記事を書いたのですが、それでも粘って何かヒントはないかといろいろ調べていました。

以前もソシオエステティックについて触れたのですが、その発祥はフランスです。フランスのソシオエステティックはかれこれ45年の歴史があり、ソシオエステティシャンが様々な場面で活躍をしています。
フランスではCODESコデスという団体が、ソシオエステティックに関する情報発信や教育などを担っています。そのサイトの中でフランス全土で活躍するソシオエステティシャンを紹介するコーナーがあるのですが、この記事がいつも大変興味深いのです。今回その記事の中で、フランス独自の活動をしている記事を紹介したいと思います。


今から33年前のお話です。
私が13歳の時、夜11時からのニュース番組(櫻井よしこさんがキャスターを務めていた今日の出来事)を何気なく見ていました。
もう深夜といっていい時間帯。その時にアフリカの女性たちについての衝撃的な特集を見ました。

現在はその慣習についてこう呼ばれています。

FGMです。

私が見たニュース特集では、アフリカにある国で、小さなテントみたいなところに女の子を連れて行き、その儀式を行っているところでした。音声だけでしたが、女性たちに押さえつけられ、切除される女の子の叫び声が13歳の私には衝撃というか、ショックで眠れなかったことを覚えています。その儀式を行う理由は国や地域によって様々ですが、大人の女性になる通過点、清めなどと捉えられているようです。
今考えてみると、あのニュースがジェンダー問題に興味をもった始まりなのかもしれません。

この慣習は禁止されてもいくつかの国で現在も行われており、若い女性たちが今なおその後遺症に苦しめられているといいます。その後遺症としては、施術による出血、感染症、痛み、精神的な苦痛などがあり、そのせいで命を落とす危険もあります。またプランインターナショナルによると、FGMを受ける女の子が 2030年までに約7000万人増えると試算されているようです。

日本では考えられない話ですが、地球上のどこかで起きている本当の話です。

(原文はこちら)

https://www.socio-esthetique.fr/media/encoded/1671206867.pdf

フランスはアフリカにルーツを持つ人たちがたくさん住んでいます。そうした背景を踏まえてこの記事を読んでみたいと思います。

記事の中で、FGMの被害者の女性たちを支援する団体(Les Orchidées rouges)がボルドーにあると紹介されていました。この団体は2020年に設立し、これまで350人のFGM被害者をサポートしています。

この記事に登場するアミナ(仮名)は、7歳の時にFGMの施術を受けました。施術を受ける前に大人たちから「痛くないよ。」といつも言われていたため、誰かの叫び声が聞こえてきたときに理解できなかったようです。
施術が終わると友人や家族、村の人たちが喜んでいました。

自分はこんなに痛いのに?

その出来事は彼女にとってトラウマとなりました。

泣いたり叫んだり不平を言えば、村の人々から笑いものにされる。「たとえ痛みがあったとしても、自分の中にとどめておかなければならない。」施術後数週間、アミナは沈黙の中で苦しみ続けました。

たとえ女性同士であってもその痛みについて語られることはないと言います。アミナにとって常に蘇ってきて忘れがたい痛みであっても、「選択肢がなかったのだから、このタブーを口外してはいけない。」と思っていました。

2018年にアミナがフランスを訪れた際、婦人科系の疾患で婦人科医の診察を受けたことがありました。彼女の傷をみた医師は「フランスではFGMの修復ができるのを知っている?」と尋ねました。彼女はそんなことが可能なのかと疑問に思いながらもその修復手術を受けました。
しかし彼女の苦しみは続きます。身体の修復は心の再構築のプロセスに取って代わるものではなかったからです。

先述したボルドーの団体には、ダンス、アート、マッサージやメイクなどのアトリエがあり、それらは傷ついた体を取り戻す助けとなっていて、そのアトリエの一部にソシオエステティックがあるようです。

アミナもこの団体の支援を通して、ディスカッショングループに参加するようになりました。自分と同じような境遇の女性たちと話をしながら少しずつ自分のことも話し始めたのです。アミナは現在掃除婦をしながら、次につながる職業訓練受けたいと考えています。

支援をしている団体は、発足から今日まで350人の女性たちをサポートしてきましたが、フランスにはまだFGMを経験した女性が125,000人いるといわれているようです。

この記事の中で最も心に残った文章があります。

Je n'ai pas tout oublié, mais je me suis acceptée, et j'avance.

すべてを忘れたわけではないけど、自分自身を受け入れ、前に進んでいきます。


アミナが経験した体の痛み、そして精神的な痛み。これは経験した人にしかわからない痛みであり、想像しがたいものです。彼女は幸運なことにボルドーの団体につながり、少しずつ体と心を回復しながら希望を持てるようになりました。

きっと形は違えどこのような痛みを抱えている女性たちがたくさんいるような気がします。

すべてを忘れたわけじゃない、でも自分に起こったことを受け入れて前に進んでいく。その強さに日本からエールを贈りたいです。


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