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デイサービス介護職時代、助け舟を出してくれたイケオジの話

 介護職の時、すげー大っ嫌いな職員がいました。

 ワタクシ、すげーだのヤバいだの、ふだんそういう言葉は使いません。それだけヤバい人でした。仮にCさんとしておきます。

 ある時、拘縮の強い男性の利用者さんを介助していたCさん。その利用者さんがお風呂から出たあとの、洋服を着せて差し上げるのに私が呼ばれました。

 安全を考慮してふたり体制で行います。

 ところが。嫌々Cさんと組まなければならない気持ちが出てしまい、紙パンツを上げる際に勢いあまって破いてしまったのです。

 Cさんはあからさまに大きなため息をつき「もういいです」と言われました。

 書店で働いていた時もスタッフさんに言われましたが、レジなどで怖い人が後ろについていると、むしろ萎縮してミスしてしまいます。わかります。

 萎縮していた自分も嫌だけれど、Cさんの態度も腹が立ちます。介護の知識もない新人に、初日から怒鳴りつけてくるような人です。しかも利用者さんの前で。認知症のない人にとっては、自分のせいであの人叱られてる、とわかってしまいます。

 入職してすぐの頃、仲良くなったボランティアさんに「Cさんのせいで何人辞めたか。今度の子(私)は続くかなと心配してたんだよ」と言われる始末。

 Cさんがもういいです、と言ったすぐあと、着替えが終わって寂しい頭髪も乾き、椅子に座っていた更に高齢の男性Yさんが、ふだんより大きな声で言いました。

「こんゆじさん。手伝ってください。お部屋に戻ります」

 私は一瞬、わけがわかりませんでした。Yさんは、ふだんからそれほど手を必要としない方。杖は使うものの、ひとりで歩いていただいて大丈夫な方です。

 すぐにわかりました。

 あ。助け舟を出してくれたんだ、この空気の悪いところから、連れ出そうとしてくれてるんだ、と。Yさんと一緒にお風呂を出て、デイサービスのフロアまで案内しました。

 昼食後の歯磨きに、ひとりずつお呼びして見守りながら口腔ケアをやっていきます。Yさんの順番がきた時、さりげないふうを装い、

「Yさん、さきほどはありがとうございました」

 と言うと、

「どういたしまして」

 しれっと、それこそなんでもなかったかのように返ってきました。


 今でも忘れられない、すてきな思い出です。


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