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【400字の独りごと】 手紙魔

 手紙魔


 文具屋に足を踏み入れるときはいつもワクワクする。今日はどんなレターセットに出会えるかと。それから新入りの封筒に似合う記念切手を求めて郵便局へ行くのもまた愉しい。
 手紙が書きたいからレターセットを買い求めるのか、愛らしい便箋を使いたいがために手紙を書くのか、ときどきわからなくなる。
 けれど悲しいことに、いま手紙はとても重たく厚かましいものになってしまった。メールを打つのが難しい、という一方的な思いで書く25gの手紙は、相手の元へ届くとき、その何十倍もの重さに変わってしまうことがある。受け手側は、返事を書かなければいけないと脅迫めいた気分にさせられるらしい。彼、もしくは彼女らにとって手紙は日常ではなく非日常なのだ。
 その荒波を乗り越え、返信が郵便受けに届いているのを見つけた日には、嬉しくて踊り出したくなる。
 これだからやめられない。
 手紙魔は今日もせっせと便箋に文字をしたためる。軽量級の手紙になるよう慎重に言葉を選びながら。

(2006年9月25日)

 この原稿を読んで気づきました、めっきり手紙を書かなくなってしまった今の自分に。書いても年に3、4通…。来年はご無沙汰している友に手紙を書こうかな。

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