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「(動画)アメリカでは人の死体を液状化したものを水道水に添加」は誤り【ファクトチェック】

「アメリカでは人の死体を液状化したものを水道水に添加している」という情報が動画と共に拡散しましたが、誤りです。新たな遺体処理法を解説している動画に、誤った字幕とナレーションをつけたものです。

検証対象

2023年5月、「米国の都市では人の死体を液状化したものを水道水に添加している」などのコメントとともに、屋内の施設で、眼鏡をかけた人が骨のようなものを機械に入れながら解説する動画が拡散した。引用を含むリツイートが1200件、表示回数が55万回を超えたものもある。

動画には「Breaking News: The Dead are Liquified and Are Fed to the Living『速報: 死者は液化され、生者に与えられる』」という説明が付けられてナレーションもついている。

リプライ欄には、「カニバリズム?」「まるでホラー映画です」「日本人に食べさせる加工して小麦粉(にする)」などの声がある一方で、「アルカリ薬品による溶解なので(中略)水道水に混ぜるわけがない」などと指摘するコメントもあった。

この動画については、AP通信も2023年3月28日付けの記事でファクトチェックをしている。「問題の動画はアルカリ加水分解が、液体化した遺体を水道水に混入させるために使用されていると誤って伝えている」「アルカリ加水分解はアメリカの半数以上の州で合法的に行われている遺体処理方法で、専門家や関係者はこれらの廃棄物が国の飲料水を汚染した事実はないと確認している」などと報じて、誤りと判定している。

検証過程

AP通信によると、検証対象の元動画は、2017年8月15日にアメリカのメディア「WIRED」が報じたもので、「The Future of Death: Inside the Machine That Dissolves Corpses | WIRED Originals(死の未来:遺体を溶かす機械の中身とは)」。

元動画によると、アメリカではアルカリ性加水による遺体処理が普及し始めている。遺体を棺に入れる埋葬は多くの土地を必要とすること、また電力消費量が火葬より少なく二酸化炭素の排出がほぼないことなどから、コストも環境負荷も低い葬送手法として注目を集めているという。UCLA・カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校医学部解剖献体プログラムのディーン・フィッシャー(Dean Fischer)所長がその仕組みを解説している。

一方で、検証対象の動画は、オリジナル動画をトリミングした上で、オリジナルとは異なる内容のナレーションと文字を付け加えたものだ。ナレーションの声はフィッシャー所長の口の動きと一致していない。

検証対象の切り取り動画では「死者を液化し、その残骸を排水溝に捨てて、市水道に再利用するのだそうです。そのため、人々はその水を飲み、その水でシャワーを浴び、その水で洗濯をするのです(0:10-0:24ごろ)」という内容のナレーション(英語)がついている。

しかし、オリジナル動画の該当部分は「3~4時間かけて体を溶かし、その液体は集積タンクに送られ、骨など残ったものはトレイに乗せられます(1:16-1:29ごろ)」と述べているだけで、水道への再利用については話していない。

判定

「アメリカでは人の死体を液状化したものを水道水に添加している」という言説は誤り。アルカリ加水分解による遺体処理法を解説する動画に、誤ったナレーションを付けたもの。

検証:リサーチチーム
編集:古田大輔、藤森かもめ


検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

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