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「(動画)グレタ氏が戦争では環境に配慮した武器を使うべきだと発言」はAIによる編集【ファクトチェック】

環境活動家のグレタ・トゥーンべリ氏が「戦争を続けるなら武器を環境に配慮したものに変えなければならない」と発言したという言説が動画とともに拡散しましたが、誤りです。動画はAIによって加工されています。


検証対象

2023年10月23日、BBCの番組でグレタ氏が「戦争を続けるなら、環境に配慮したサステナブルな戦車や兵器に変えねばならず、生分解性のミサイルをたくさん積めるバッテリー駆動の戦闘機などがある」などと発言している動画がX(旧Twitter)などで拡散した。

2023年11月14日までに110万ビュー、4600いいね、1900リポストを獲得した投稿もある。

検証過程

まず、グレタ氏が本当にこのような発言をしたのかを調べるため、動画の内容を元に「Greta Thunberg War」でYoutube検索した。すると2023年10月21日に投稿された「Greta Thunberg: VEGAN WARS #satire」という動画が見つかった。Xで拡散した動画は、このYouTube動画から切り出したものだ。

グレタ氏はこの動画の中で「戦争を続けるなら環境に配慮して生分解性の戦車や武器に変えなければならない」「手榴弾を使うなら、ヴィーガンの手榴弾を使ってください」「私の新著『Vegan Wars(ヴィーガン・ウォーズ)』には、このようなことが書かれている」などと語っている。

しかし、見出しには「#satire」と記載があり、風刺動画だと分かる。

次にYouTubeで「Greta  BBC」と検索すると、BBCが2022年11月1日に投稿した動画「Greta Thunberg on how to tackle climate anxiety | The One Show」が見つかる。この番組では、グレタ氏が気候変動の問題を意識するようになった経緯や、なぜヴィーガンになったかなどを新著「The Climate Book」をもとに語っている。

映像は拡散した動画と一致するが、戦争や武器に関する発言はない。

BBCがYouTubeに投稿したオリジナル動画から
拡散した動画から

動画の同じ箇所を静止画にして比較すると、上のBBCの画像よりも下の拡散した画像の方が、グレタ氏の口が大きく開いていることがわかる。また、拡散した動画は画質が悪い。

こうしたことから、拡散した動画は、偽造した語りをBBCの映像にかぶせてAIの加工で唇を動かしたものだとわかる。

この動画については、ロイター通信もファクトチェックしてAIで加工されたディープフェイク動画だと判定している。

また、動画を配信したチャンネル「Snicklink」は、ディープフェイクによるバイデン米大統領の風刺など、同様に#satire(風刺)とタイトルにつけた動画を複数公開している。

判定

グレタ氏が「戦争では環境に配慮した武器を使うべきと発言した」はAIによる加工で誤り。

あとがき

著名人の口の動きをAIで加工した上で、本人が発言していないことを語らせる偽動画が数多く拡散しています。日本ファクトチェックセンター(JFC)ではこれまでも、AI生成の動画のファクトチェックをしています。そちらもご参照ください。

検証:堀祐理、木山竣策
編集:宮本聖二、古田大輔、野上英文


検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

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