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「9.11同時多発テロ ユダヤ人は犠牲者にひとりもいなかった」は誤り【ファクトチェック】

アメリカ同時多発テロで「ユダヤ人はみな欠勤していて犠牲者の中に一人も含まれていない」という言説が繰り返し拡散していますが、誤りです。少なくとも100人以上はユダヤ人の犠牲があったと判明しています。


検証対象

2023年9月11日、「ユダヤ人はみな欠勤していて犠牲者の中に一人も含まれていない」というポストが拡散した。投稿には「9・11事件の謎」と題してワールドトレードセンター(WTC)に飛行機が衝突する映像などを使った動画も添付されている。10月2日現在でポストには1357万回以上表示され、リポストは5800件以上となっている。

このような言説はこれまでも繰り返し拡散し、複数のファクトチェックがなされている。例えば、米国のファクトチェック団体Snopesが「誤り」と判定している。

検証過程

米国務省は2005年1月14日に「4000人のユダヤ人の噂ー9月11日をめぐる噂は真実ではないと証明された」と題する記事を公開した。記事はテロ発生直後から拡散していた「テロの背後にいるイスラエルの諜報機関から警告を受けた4000人のユダヤ人あるいは4000人のイスラエル人が、9月11日にWTCに出勤しなかった」という言説を検証している。①ユダヤ人が出勤していなかった、②ユダヤ人の犠牲者はいなかった、という点について「全くの虚偽」だと結論づけた。

米国務省は2001年10月11日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記事を引用している。それによると、WTCに勤務していた犠牲者のうち、約1700人の信仰が明らかになっており、約10%がユダヤ教徒だったという。また、WTCにオフィスを構えていた米金融サービス「キャンター・フィッツジェラルド」は390人の犠牲者名簿を公開しており、このうち49人がユダヤ人だという。別の犠牲者名簿でも、76人のユダヤ人の名前が確認できる。

また、BBCのファクトチェックによると、WTCで働いていた2071人の犠牲者のうち、119人がユダヤ人だと確認できており、さらに72人はユダヤ人である可能性が高いという。これにより、同時多発テロの犠牲者でユダヤ人が占める割合は9%ほどだとわかる。BBCのドキュメンタリー番組「Conspiracy Files」の検証では、当時のニューヨークの通勤者に占めるユダヤ人の割合は9.7%で、ユダヤ人が犠牲者に占める割合と大きな違いがない。

判定

同時多発テロの犠牲者のなかにユダヤ人が含まれていることは、WSJやBBCなど複数のメディアの報道や犠牲者名簿で確認できる。米国務省は大勢のユダヤ人が「出勤しなかった」という言説を公式に否定している。したがって、「9.11同時多発テロ ユダヤ人は犠牲者にひとりもいなかった」は「誤り」だと判定した。

検証:高橋篤史
編集:古田大輔、藤森かもめ、野上英文


検証手法や判定基準などに関する解説は、JFCサイトのファクトチェック指針をご参照ください。

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