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パーマカルチャーの10の原則から学ぶ経営ガイドライン

先日、私が参加している学習コミュニティ「ノンプロ件」でBT大会がありました。BTとはBeer Talkの略でいわゆる忘年会ですね。

そこで私が企画したのが、「自分の会社(事業)の現在と未来を語る〜なんちゃって株主総会〜」と言うイベントです。

ノンプロ研では例年、このBT大会で各個人が1年を振り返って話すというのが定番でした。色んなバックグラウンドの人が話す振り返りも興味深いのですが、これのビジネス版をやったら面白いのでは?という目論見です。

結果として、めちゃくちゃ盛り上がりました。

今日は、そこで紹介しきれなかった「パーマカルチャーの10の原則から学ぶ経営ガイドライン」という話題をnoteにまとめたいと思います。


地球再生型生活記

まず、パーマカルチャーとは何か?なんですが、それっぽく書くと以下のような説明になります。

自然の循環の仕組みを活かし、人が自然と共生しながら持続可能な暮らしや社会を実現するためのデザイン手法。

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そして、このパーマカルチャーをわかりやすく解説し、またその実践を興味深く紹介している名著が、四井真治氏著の 地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー です。

この本を読み進めている中で、パーマカルチャーの10の原則が紹介されているページがありました。

もちろん書き記されている内容は、自然との共生についての原則なのですが、このページを眺めているうちに、この原則はビジネスにおいても適用可能であると気づきました。

自然の生態系と、人間の経済活動には、共通項がたくさんあると気付いたのです。

その10の原則を経営ガイドラインとして適用すべく、それぞれを読み解いていきたいと思います。

1. 繋がりのある配置

そこにある構成要素が独立することなく、互いに関連を持ち機能するよう
に配置し持続可能なシステムを考える。

地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー

ある植物を2種類植えるとして、近接させて植えるのと離して植えるのでは違う結果となる。なんてことはよくあります。

近接させて混植することで、それぞれから収穫物を得つつ互いの成長によい影響を与えあうことをコンパニオンプランツなんて言ったりしますが、これがまさに繋がりのある配置の小さな例ですね。

経営やビジネスにおいては、まさにネットワークのことだと思います。人間ならコミュニティですね。

ある部署の人とある部署の人を(物理的にも心理的にも)完全に分離して働いてもらうのがよいのか、少し近づけて交流が生まれるようにしたほうがよいのか。

最近だと企業内での部活制度を福利厚生として用意している企業もありますね。こうした人と人との距離感をデザインするのはまさに「繋がりのある配置」のデザインですね。

例えば、お店を出そうと計画しているとして、どの場所に出店するかは、一義的には「お客さんがたくさん来て、売り上げが上がる場所」ですよね。ただ、それだけでなく、近隣にあるお店や施設、住んでいる人、地域社会との連帯や連携なんかも考えるのが大切ということかなと。

2. 多機能性

システムを構成する要素それぞれが、多機能性を持っているように選んだりシステムをデザインする。

地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー

これは、「ひとつひとつの構成要素の役割を単一機能に限定せずに、複数の役割を割り当てる」と理解しました。

パーマカルチャーだと、主たる目的として卵を得るために鶏を飼うが、同時に人間の食べ残しや食物残渣(野菜のヘタや精米した後にでる糠など)も食べてもらい、生ゴミを減らす、無駄にしない等があてはまるのではないでしょうか。

経営においては、ビジネスそのもの・人材・設備などを何かの目的をもって導入すると思いますが、その目的を狭く限定せずに相互に関連し複合的な機能を持たせることを意識するということだと思います。

まあ、一石二鳥を狙うということですね。

むりやり自社の実例を探して挙げるとすると、一昨年導入したミニバンタイプの中古車です。

野菜の出荷やらで荷物を運ぶことが多いのでミニバンは重宝するのですが、この車で出張に行くときは荷室に板を渡して車中泊できるようにしています。

昨今は宿泊費も高くなっているので、車中泊のほうが経済的、なんてシーンもあります。

3. 多くの要素による重要機能の維持

水、食物、エネルギー、防火などの重要な機能は、複数の方法で充たされるようにする。バックアップシステムを考える。

地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー

生活の基盤となる水に関して言うと、雨水タンクがあり、井戸もあり、川もあり、川の水を浄化する装置もあり、なんなら上水道も敷設できる(してる)状態は安心安全ですよね。バックアップ大事です。

ビジネスにおいても、一か八か、伸るか反るか、生きるか死ぬかみたいなのはギャンブルであって、経営ではないよってことかなと。

経営資源はヒト・モノ・カネなんて言いますが、これらのバックアップシステムちゃんと用意できているでしょうか?

ビジネスだと、常に稼働率が100%に近い状態が一見効率的に見えます。しかし、このような状態は突発的な危機に弱く、バックアップシステムがないとすぐに崩壊してしまいますよね。

余裕のことをスラックなんて言ったりしますが、組織にも人間にもスラック(余裕)を常に確保しておきましょう。

以下は、スラック(余裕)を確保するための参考図書です。

4. 効率的な活動、エネルギー計画

その土地にある様々な要素の最適な配置やゾーニングを、仕事の手間や移動距離、その土地の微気象、エネルギーの流れ(日当たり、風の向きなど)、傾斜(高度)などで決定する。

地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー

効率化です、生産性向上です。ビジネスが得意?なやつです。でも、未だにDXやらなんやらとメディアのネタになっている現状を見ると、日本はまだまだなんだろうなと。

日本はね、保険仕事が多すぎなんです。保険仕事とは、万一のために。念のために、とやる仕事のこと。これがどんどんと膨れ上がり、本質的な仕事が埋もれていくのです。

こういった話は勝間和代さんがよくしてます。

パーマカルチャーの原則からの学びは、フロー(流れ)を意識することかなと。水が上から下に移動するように、風が吹く時間や方向があるように、季節が巡るように、ある程度決まった流れが自然界にはあります。ふと我に返って考えると、仕事にもこういうフロー(流れ)がありますよね。そこに注目しましょうよという話です。

5.生物資源の活用

植物や動物は、燃料や肥料の供給、耕起、害虫防除、除草、養分のリサイクル、生育環境の向上、土壌の維持、防火、土壌浸食防止などに役立つ。場合によっては、人が手間をかけなくても機能させることができる。

地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー

資源管理の話です。ビジネスならリソース管理でしょうか。資産管理でも良いかもしれません。

あなたの仕事・事業において、

  • 無自覚に捨ててしまっているリソースはありませんか?

  • 使わないでいる、存在を忘れてしまったリソースはありませんか?

  • 形を変えて隠れているリソースはありませんか?

ちゃんと整理整頓・棚卸をしようということかなと。

事業資産であればバランスシート(貸借対照表)の資産の部を眺めてみるのも良いでしょう。何も書いてないように見えて、その事業の利益の源泉がそこにあるはずです。

また近年は、このバランスシートに載らない資産も重要だと思います。自分のビジネスが利益を出しているとして、その利益の源泉がバランスシートになかったら…どこか別のところに無形の資産があるはずです。資産(リソース)なくして利益は生まれないので。

そのリソース、大切に育ててますか?

バランスシートなんかわからん!という人は簿記の勉強がおすすめです。簿記は「小さなMBA(経営学修士)」らしいです。

6.エネルギーと物質の循環

外から流入してくるエネルギーおよびその場所で作り出されるエネルギー、その土地を去っていくエネルギーとの間に、どれだけ数多くの有効エネルギー貯蔵所を作れるかがデザインのポイントとなる。

地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー

実生活や自然界でも色々なものが循環しています。水道をひねると出てくる水も、使用前はきれいな水ですが、使用後は汚れた水として(最終的に)海に捨てています。その循環のなかで無駄なく有効活用しようよということだと思います。

ビジネスでも色んなモノが循環していますよね。お金・アイデア・人材・モチベーションなどなど、色んなエネルギーをどれだけ有用に留めておけるでしょうか?

また自分の手元を離れるとしても、その資源は、世界で循環し続けます。私はよく、「誰かの支出は、誰かの収入」と事あるごとに思い返しています。それは、モノやサービスの価格だけでなく、誰に支払っているか?どう社会に影響を与えるのか?を考えたいからです。

7.小規模集約システム

できることから小さく始める。植物の重層。時間の重層。必要なシステムを作るために最小限の労力、時間、エネルギー、資源、空間を利用するようにデザインする。これによって最小限の力や時間で最大の効果を得ることができる。

地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー

「できることから小さく始める。」
「最小限の力や時間で最大の効果を得ることができる。」
言わずもがな大切ですよね。

この規模じゃないとできない、これくらいの予算がないとできない。そう決めつける前にミニマムなデザインに挑戦したいですね。

8.植生遷移と進化の加速

植生遷移とは生態系の時間的な変化をいう。例えば荒れ地から草原、森林へと変化していくこと。この変化は、環境や生物の多様性と土壌を生み出す。この遷移の変化を手助けし、加速させたり留まらせたりすることで土地の機能や生産性を上げることができる。

地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー

生態系にも段階、ステージがあるということです。草原と森林では、同じ緑豊かに見えても土壌の状態は全然違ったりします。そのステージに合わせた行動が重要であるということですね。

ビジネスにも色んなステージがあると思います。時間的な変化や規模の変化、環境の変化。今、自分たちがどんなステージに立っているのか、それはどういう環境なのか、このステージにあった仕事のやり方とは…そういう現状認識が重要なんだと思います。

加えて、今立たされているステージが厳しい環境であれば、そこで闇雲に努力するよりも、環境を変えるということも選択肢のひとつです。

9.接縁効果

自然を観察すると、際(接縁)は2つの生態環境が出会うところであり、もっとも多様性に富んでいる。例えば、陸と水、森と草地、河口と海などでは、両方からの資源やエネルギーを利用できるため生産性が増大する。このような環境を利用しデザインすることで、生産性を上げることができる。

地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー

業績不振の折に新規事業をはじめようと門外漢のフィールドに飛び込んでいく…これはなかなか成功率が低いですよね。かといって、既存の枠組み内では画期的なアイデアなんかは思いつかない。そういう時に攻めるのは、エッジ(境界)だってことなのかなと。

組織内の学びにおける炭火効果なんてのも近い概念で、炭に火をつけるには、隣にじわじわ燃えている炭を置くのが一番効率が良いことから、組織におてい、個人の自発的学びを期待するのでなく、意欲的に学んでいる人のそばに他者を置くことで、そのモチベーションが伝播を促していくアプローチです。

10.多様性

地球のエコシステムは、多様性によって安定し成り立っている。環境の多様性を作ることにより植物や動物の多様性が生まれ生態系として安定し、リスクを減らすことができる。システムにおいては、多くの機能による重要機能の維持を実現しリスクを減らすことができる。しかし、やみくもに多様性を求めるのではなく、要素間に協力があったり相互に無害であったりするようなデザインが必要。

地球再生型生活記 ー土を作り、いのちを巡らす、パーマカルチャーライフデザインー

ビジネスにおいて多様性が大事なのも言わずもがなですね。

そして、「しかし、やみくもに多様性を求めるのではなく、要素間に協力があったり相互に無害であったりするようなデザインが必要。」という部分が重要です。

色んな視点、色んな価値観、色んなバックグラウンドの人が集まり、お互いを信頼し、傾聴する文化を作っていけるかがポイントだと思っています。

サポート頂いた場合は、色々気になっていた、あんなことやこんなことを実践してまたご報告させていただきます!