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【読書感想】江戸大名庭園は挑む

東京都で造園の専門職についていた著者が今も残る江戸時代の大名庭園について、その歴史と庭園を保存・再生する過程について書かれた本です。

江戸時代には実に1000を超える大名家の庭園が存在し、江戸は世界に誇れる緑園都市でしたが、明治維新や関東大震災、第二次世界大戦でその数は大きく減少しました。しかし、小石川後楽園や浜離宮公園など、都立公園として4つの大名庭園が現在も残されています。

著者は東京都の職員として、大名庭園の保存や復元に心血を注いできました。幕末に外国人が撮った写真など過去の資料を参考にしながら、現在の技術を駆使して大名庭園を復元する様子は興味深いです。

特に印象的だったのは、浜離宮公園の鴨場にコロニーを作っていたカワウを、第六台場まで移転させる作業です。鴨場の復元には、悪臭を放つカワウのコロニーを移転させなければならないが、そう簡単にはカワウは人間の都合に合わせて移転してくれません。カワウの生態を研究し、最終的に移転を成功させる過程に、自然と共存した江戸庭園を保護しようという高い志を感じました。


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