ブックスタマ 加藤勤

書店『ブックスタマ』を経営しています。読書が好きなので、自分が読んだ本の感想をこのブロ…

ブックスタマ 加藤勤

書店『ブックスタマ』を経営しています。読書が好きなので、自分が読んだ本の感想をこのブログに載せています。 料理レシピ本大賞の実行委員長もやっています。 自分で執筆した本『中国語が1週間でいとも簡単に話せるようになる本』は2万部以上売れています。

最近の記事

【読書感想】ビジネスマン超入門365

先週日曜日に、高円寺の蟹ブックスで行われたデイリーポータルZのイベントに行ってきました。 こちらのビジネス超入門365のイラストを描いている、ヨシタケシンスケさんのニセものの、ニセタケシンスケさんが来ていると聞いていましたが、ニセタケシンスケさんのさらにニセものだったのでびっくりしました。 ちゃんとサインも書いていただきました。 ヨシタケシンスケさんの世界観で、ビジネスマンの心得?を楽しく学べます。 以前からフォローしている唐沢むぎこさんにもお会いできました。

    • 【読書感想】成瀬は天下を取りに行く

      本屋大賞受賞、おめでとうございます! ちょっと型破りな女子中学生の成瀬が、M-1グランプリに出たり、女子中学生らしくないことに青春を燃やす物語です。 舞台が滋賀県で、大津や膳所などの実在する場所が頻繁に出てくるので、自治体が地元PRに取り込んでいるらしく大津駅前は成瀬に埋め尽くされているそうです。 冒頭は西武大津店の閉店から始まるのですが、東京西部で生まれた私にとってなじみの深い西武百貨店が滋賀でもこんなに慕われていた、というのは新鮮でした。 青春時代を思い出させるよ

      • 【読書感想】 板上に咲く

        芸術家に関連した小説をよく執筆される原田マハさんが棟方志功とその妻チヤを主人公にした小説を書きました。 名前を知らなかったとしても 棟方志功の作品は、だれもが目にしていると思います。 特に、画面いっぱいに表現された仏像やなまめかしい弁財天を描いた作品は見る人の目を引き付け、一度見たら忘れない印象を残すのではないでしょうか。 小学校の授業では必ず版画を習うと思いますが、日本の芸術における版画の地位を高めたのも棟方志功ではないかと思います。 原田マハさんの自由な発想には

        • 【読書感想】孔丘

          イエス・キリストを主人公にした映画はいくつもありますが、孔子を主人公にした映画や小説は、少ないと思います。そう考えると、孔子はイエス・キリスト以上に神格化された人物かも知れません。 この小説は孔子を、思うように出世できない悩みや嫉妬をかかえ、妻や息子との関係に苦しむ一人の人間として描いています。孔子をあえて孔丘と呼び、タイトルにもすえていることから著者の意図が伝わってきます。 あらためて思うのは中国の歴史の悠久さで、我々から見たら孔子は何千年も前の人ですが、その孔子から見

        【読書感想】ビジネスマン超入門365

          【読書感想】分析する広報

          日経平均株価がバブル時代の最高値を超えて値上がりし、新NISAの導入もあって、株式市場が盛り上がっています。 上場企業の株主になると、株主総会の案内が来ると思いますが、だいたい平日に行われるので、株を持っていても出席する人は少ないのではないかと思います。 その株主総会に10年間参加しまくり、今も1000社以上を継続リサーチしている著者が、株主総会から読み解ける成長する会社、しない会社のポイントを解説しています。 広報、というと広告と同じと思っている方もいますが、実際には

          【読書感想】分析する広報

          【読書感想】パッキパキ北京

          綿谷りささんの本は「インストール」「夢を与える」以来、 しばらく読んでいませんでしたが、今回は舞台が北京ということで、 読んでみました。 綿矢りささん自身が北京に滞在した経験があるので コロナ終息後の北京の様子を、リアルに描いています。 ショッピングモールで買い物したり、 公園でスケートをしたり、街を歩く人の髪型やファッション、 そして食べ物の描写が、とてもよいです。 ザリガニ、鴨の首、鴨の血など、向こうでよく食べる食材もでてきますが、 麺がウマすぎる問題は

          【読書感想】パッキパキ北京

          【読書感想】M-1はじめました

          麻布台ヒルズの大垣書店さんでかなり推していたので、M-1グランプリには特に興味はなかったのですが、買ってみました。 第1回のM-1で勝ち残ったコンビ名を見てみると今もテレビでよく見る人たちばかりで、M-1が若い才能を発掘する役割をしっかり果たしていたことがわかります。 もう20年たったから時効と思ったのか、M-1を立ち上げた時に、協力してくれた人、してくれなかった人のことが、ほぼ実名で書かれているのが、生々しくて面白いです。 料理レシピ本大賞について考える上でも、参

          【読書感想】M-1はじめました

          【読書感想】まちかどガードパイプ図鑑

          アマゾンランキング1位! 道路のガードパイプだけの本が出版されました。 いつも見過ごしている、ガードパイプですが、 町の自然や、名産品、お祭りなど その町のさまざまな魅力が表現されています。 鉄製のパイプで表現しなくてはならないという制約が、 逆におもしろさを増しています。 テレビ、ラジオ、雑誌でも話題沸騰です。

          【読書感想】まちかどガードパイプ図鑑

          【読書感想】 極楽征夷大将軍

          足利尊氏は将軍になった割には、あまり人気のない人物です。 ドラマや小説の主人公になることはあまりありませんし、ゲームの題材にもなりません。 戦前には朝敵とされたことも影響しているかも知れませんが、人物像がわかりづらい、というところが一番の理由ではないかと思います。 織田信長や徳川家康が、天下人になるという目標にまっすぐ向かっているように見えるのに対して、足利尊氏はいまひとつ行動が煮え切らないですし、幕府を開いた後も、内紛を繰り返しています。 そんな足利尊氏を、一気に魅力

          【読書感想】 極楽征夷大将軍

          【読書感想】問うとはどういうことか

          日本人はとかく、質問するのが苦手と言われます。 講演会の後の質疑応答の時間で、だれも手を上げないことはしばしば見られますし、会社の会議も、偉い人の意見をただ追認するだけの早く終わる会議がよいとされたりします。 それは、子供のころから、「そんな質問をするんじゃない」とか、「昔からそう決まっているのだ」とか、問うことを否定するように教わっているからだと思います。 この本では、人は問うことで考えを深めることができ、本当の自分を生きられるようになると、著者は説きます。 なぜ私

          【読書感想】問うとはどういうことか

          【読書感想】ビジャの女王

          世界征服を目指し、苛烈な攻撃をしかけてくるモンゴル軍に果敢に立ち向かうペルシャの都市、ビジャの美しい女王、オッド。 絶体絶命の状況を打開するために、ひとりでも大軍を打ち負かす秘術を持つという、インドにいる墨家の助けを借りようとする。 相当前に、こちらのコラムで墨攻 を紹介しましたが、森秀樹さんの描く世界観にひかれて、購入しました。史実にそっているかどうかはさておき、エンタメとして楽しめる内容だと思います。

          【読書感想】ビジャの女王

          【読書感想】ChatGPT vs 未来のない仕事をする人たち

          刺激的なタイトルですが、堀江貴文さんと、4人の生成AIに知見を持つ人との対談形式で、ChatGPTとどうつきあっていったらいいか指針を示してくれる本です。 プログラマーやイラストレーターなど、クリエイティブと思われている仕事もChatGPTが人間に代わりに働くことが可能になっています。 かなり辛辣な会話が飛び交いますが、最後には、日本がこれからどう進むべきか堀江さんならではのポジティブな展望が書かれています。 表紙の絵は、ブックスタマ武蔵小山店で似顔絵サイン会を開催して

          【読書感想】ChatGPT vs 未来のない仕事をする人たち

          【読書感想】江戸大名庭園は挑む

          東京都で造園の専門職についていた著者が今も残る江戸時代の大名庭園について、その歴史と庭園を保存・再生する過程について書かれた本です。 江戸時代には実に1000を超える大名家の庭園が存在し、江戸は世界に誇れる緑園都市でしたが、明治維新や関東大震災、第二次世界大戦でその数は大きく減少しました。しかし、小石川後楽園や浜離宮公園など、都立公園として4つの大名庭園が現在も残されています。 著者は東京都の職員として、大名庭園の保存や復元に心血を注いできました。幕末に外国人が撮った写真

          【読書感想】江戸大名庭園は挑む

          【読書感想】ぼっけもん

          西郷隆盛や大久保利通と共に薩摩の志士として幕末から戊辰戦争までを闘い新政府軍の勝利に大きく貢献した伊地知正治という人物ですが、これまであまり取り上げられてこなかったのではと思います。 私もこの小説を読むまでは、彼のことをあまり知りませんでした。 圧倒的な軍事的な才能を持ちながら、ちょっと変わり者で、派閥を作ることをせず、新政府の重職につきながら、職を辞して郷里の薩摩に戻ります。 物語は、郷里に帰った後の明治15年の場面と戊辰戦争で伊地知が活躍していた時の場面を交互に行き

          【読書感想】ぼっけもん

          【読書感想】プラナリア

          表題の「プラナリア」を含む5編の短編小説が収録されています。 共通しているのは、主人公は挫折を経験し、心の傷をかかえているところです。5編のうち4編の主人公は女性で、離婚して仕事や地位まですべて失ってしまったり、仕事でも結婚でも、男性の顔色を常にうかがっていたり、とても共感させられる内容でした。 もともとは2000年ごろに書かれた小説なので、もう20年以上前の作品になりますが、女性がおかれている状況は、そのころからあまり進歩していないかも知れません。最後の1編は主人公が男

          【読書感想】プラナリア

          【読書感想】訂正可能性の哲学

          2045年にはAIが人間の知能を追い抜き、政治も経営もAIにまかせた方がよりよい政策判断や資源配分ができるようになるから、多くの人間は働かなくてベーシックインカムをもらう方が、合理的だ、という話を聞いた時に、なんとなく感じていた違和感を、論理的に説明してくれた本です。 AIといっても所詮は人間が作るものなので、シンギュラリティの物語は過剰な人間信仰とも言える、という視点にはハッとさせられました。 著者が「人工知能民主主義」と呼ぶ、ビッグデータをもとにAIが意思決定すること

          【読書感想】訂正可能性の哲学