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NPO法人自治経営関東甲信越アライアンス勉強会ツアーレポート〜埼玉県熊谷市編〜

本庄市から移動し、元祖日本一暑い街「熊谷」に到着しまいた。ここからはhakuworksの白田和裕さんに熊谷の街を案内いただきました。「昔の熊谷市は暑さをPRしていたけど、最近では移住や定住の促進にならないから暑さのPRは辞めたんですよ。笑」と熊谷のリアルを教えてくれた。今回は後半の熊谷市のレポートをお届けします。
前回の本庄市編はこちら。ぜひ合わせご覧ください。

hakuworks(熊谷市) 

白田さんは、出身が埼玉県草加市で、今は熊谷を拠点に活動する建築士だ。20代では海外で建築を学び知見を広げるなど建築と向き合い、帰国後は建築だけでなく街にも視野を広げ活動されている。
2017年開催された「リノベーションスクール@そうか」伝説の神回に参加し、解体を待つ集合住宅を題材に食で繋がるシェアキッチンを構想。その後「キッチンスタジオ“アオイエ”」へとリノベーションし、実際に近隣地域を巻き込みながら事業を動かしている。現在は熊谷を中心に、遊休不動産活用、断熱リノベ、スペースシェア、公民連携、地域密着型デリバリーなど幅広く、幅が広すぎて何者か分からないくらい活躍されています笑。

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 白田さんの案内で街中を散策。熊谷の街を歩き始めるとスーッと開けた空間がありました。1km程のレンガで舗装された水辺が中心市街地の真ん中を流れており、星川通りという素敵な名前が付いている。
 星川通りにはカウンターだけの老舗ホルモン屋が昼間から煙をあげ、美味しく香ばしい香りが辺りに充満している。なぜか熊谷にはホルモン屋が多く、どれも超絶いい雰囲気で、昼間からホルモンとビールで喉を潤せる熊谷市民が羨ましい。
 この日は熊谷最大イベントで関東一の祇園と称される「熊谷うちわ祭」の日、本当ならより暑い熊谷の街がみえるはずなのだが、昨年に続き今年もコロナにより中止ということで残念。
 途中、08studio一級建築士事務所がリノベーションを手掛けた、煎茶専門店「108ocha stand」&シェアスペース「トナリノ」に立ち寄り、運営者の八木さんから話を聞けた。ここは元々パン屋と和菓子店だったが、オーナーさんと時間を掛けて対話する事で活用の承諾を得られた。新しいものを作るだけでなく、いまは使われていないが利用価値のある場所を生かしたい。この場所を地域に開くことで、何かやりたいという地域の人が増え、新たなコミュニティも生まれているそうだ。暑く火照った体を染み渡る冷たいお茶を頂いた。
 八木さんは他にも太原堂(元毛糸屋)をBOOK APARTMENT(ブックアパートメント) 」にしたリノベプロジェクトにも関わっている。小さな棚1区画1,000円/月で出店者を募集し、現在は移動書店を営む店や絵本のセレクトショップなどのほか、趣味の本を出品する個人など数十名のオーナーがここで自分のマイクロ書店を構えている。
 この建物は白田さんが運営する空き家の未来を妄想する熊谷妄想不動産でも紹介されており、地域経営者が連携して生み出された場所だという事がわかる。

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 ここから白田さんが手掛ける「原口商店★エイエイオー」で自身の活動について話を伺った。前述の通り何者か分からないほど多岐に亘るプロジェクトを手掛ける白田さんの原動力、バイタリティが気になるところだ。
 白田さんは自身のこれまでの活動を振り返り、建築を学ぶ、海外留学、地域と関わり事業を興す、独立、結婚、コロナなど生活環境や社会の「変化」のタイミングで成長が加速したと感じ、その時の出会い、経験、行動、大きな壁はレベル爆上げアイテムだと語ってくれた。又、空き家が増える熊谷だけど、空き家はチャンスの塊。小さくとも多くのコミュニティを作って、それを繋げていけば、大きな動きになり、結果、街が変わる。だから、まちづくりは「あえてみんなで」がキーワードになる。と話してくれたのが印象的だった。不安定な状況や変化をネガティブに捉えず、そして周りを敢えて巻き込みながら動かしていく力強さを感じた。

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 実際、原口商店のリノベーションは、建築士仲間4名で始めた活動だ。相続で取得し、遠方に住んでいるため管理が出来ない空き店舗でしたが、オーナーに幾度も実施したプレゼン提案の結果、現在のシェアカフェとして再生させている。今では、日替わり出店者やイベント会場利用者などを獲得しており、事業化させている。
 原口商店は4階建ての鉄筋コンクリート造の建物なので、今後は2〜4階にクリエイターを集めたシェアオフィスなどとしての活用も検討中とのこと。自身の経験や他都市の事例から、クリエイターが集まる事で街に大きなインパクトを起こせる可能性があると睨み、募集活動を実施されている。 
 白田さんの活動から強く共感したポイントは、「常にオーナーに寄り添う姿勢」である。空いているから貸して欲しいではなく、オーナーにも賃料収入が入るウィンウィンの関係がデザインされている。
 又、老朽化建物はいずれ解体の時を迎え、それには大きな費用が必要となる。白田さんは、事業を通して収益が上がればオーナーの収入も増える方法を取っており、少しでもその時に備えた準備ができることを考えている。更に、建物が収益物件として稼働すれば、解体せずに売却ができる可能性も出てくる。だから、自分たちの企画や運営に共感してくれる入居者を増やしたい、と語ってくれた。このように、不動産オーナーが先々に抱える課題についても建築的視点と不動産的視点から寄り添い、提案されているところに共感をした。この様にオーナーの課題解決を図りつつ、街のトレンドやニーズを取り入れた遊休不動産活用をみかんビルでも実践されている。このビルは3階建てで2,3階がずっと空いている状態、更に老朽化で改修費用が大きくかかってしまう様な状況でした。オーナーは改修だけでは費用が出ていくだけになってしまうので、2,3階を白田さんが借りて、更に改修し、女性起業を推進する美容特化型サロンとしてリノベーションしました。
 オーナーは収入を得られるので改修費用を支出でき、又、地域の女性起業支援にも繋がっています。なぜ女性限定にしたかという質問に対し、「たくさんの女性と出会う機会があったほうが楽しいから」と照れながらも、熊谷に女性が集う場の必要性を語ってくれました。この2事例の通り、実際にオーナーに寄り添う提案が街の空き家を動かしている事がわかります。
 白田さんは、この他にも中古空き家を購入し、シェアキッチン、レンタルスペース、断熱リノベのショールームとして活用している「デンクマル」。星川通りをウォーカブルなエリアにするため民間側から実験をスタートさせている「街・妄想・ワークショップ」など、残念ながらここで書ききれない程の活動をされています。
そんなバイタリティおばけの白田さんの活動を知りたい方は、ぜひ熊谷に足を運んで街をウォッチしてもらえればと思います。

 今回のゴールデンツアーでは「変化を感じ、楽しむ。それをチームで面白がること。そして、人間は変化により成長するもの」だということを学んだ気がします。埼玉は暑い、アツ過ぎます。今回の記事で気になる活動があった方は是非、埼玉まで足を運んで体感してみてくだい。中々行けない。という方は、インスタグラムで活動が配信さていますので是非、フォロー&チェックしてみてください。

Writing:篠原潤也 
1988年茨城生まれ。大学時代を埼玉で暮らし、Uターンでメーカー系不動産会社に就職。公民連携プロフェッショナルスクール 第一期終了(現・都市経営プロフェッショナルスクール) NPO法人自治経営の関東甲信越アライアンスに所属。