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アンカル2023、しかと目撃しました。

演出家・蓬莱竜太さんのソロユニット・アンカルVol.2 「昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ」(東京芸術劇場 シアターイースト)を体験してきました。

こちら、本日が千穐楽。
ただ、通常の千穐楽とは言えず。
というのも、7月7日から『上映による公演』に切り替わっているからです。

この記事は、舞台の内容もそうですが、上映公演へと切り替わったそのいきさつをまとめたいと思っています。
あくまで一ファンの立場で。
あまりのその迅速な対応と展開が素晴らしかったからです。

まずは、そもそもどんな舞台なのか。
こちらは、2021年にその初演が行われたものの再演となります。
中学生1クラスの1年間。
27人が織りなす壮大な群像劇。
キャストは総勢27名。
この「アンカル」のコンセプトは、

「劇場での演劇」の経験値を積み、才能を開花させる場所である。

作・演出の蓬莱竜太さんは、こうも語ってます。

演劇界には演じる場所や機会、環境が無く、劇場に立つことがとても遠いことのように感じている才能たちがいっぱいいます。そういう才能たちが所狭しと舞台上を駆け回っている姿を見ているだけで胸が熱くなります。そんな才能たちと出会い、芝居作りをしていくのがアンカルです。


2021年の初演を観に行った時、本当にヒリヒリと心が痛くて震える体験をさせていただきました。
中学生、もうマジ痛い、つらい、全力すぎる、美しい、儚い、尊い、そしてバカだな、もっとうまくやれ、そんな感情がぐちゃぐちゃになる2時間半でした。
(1部70分、休憩10分、2部80分)

その時の感想↓


生徒24名、教師、用務員役の3名を加えて27名で展開される物語。
幕が開いた時、あまりの人数の多さにとまどいました。
同時多発的にしゃべってるし、一体誰が誰? どこ見てれば正解? 
どんなストーリーがどの子を中心に動くの?と、
全体像が掴めないカオスな状態(私の脳内が)。
「これは誰一人感情移入できないまま終わるのか…」
と一瞬よぎった不安はどこへやら、一幕が終わるまでには全員のキャラクターもバックグラウンドも今向き合ってる問題も楽しさも、自分のことのように把握できていて。
どの人にも光が当たっていて、全員が輝いている。
そんなミラクルな脚本・演出に驚きました。

キャスト2名の変更があったものの、他25名は2021年の初演の時からの続投。

今回のキャストの皆様。


再演すると聞いて、またあの子たちに会いたくて、チケット発売日に速攻で確保。
初演の時は、確か前半の日程で行った気がしていたので、今回は、後半の8日昼公演を押さえました。
そして、家族にもあの熱量を体験してもらいたく、ただ私と都合は合わなかったので、彼は5日夜のチケットを取りました。

ここが運命の分かれ道になるとは…(笑)

5日の公演を見た家族は、「衝撃的だった」との言葉とともに、すごい体験に心が震えた様子。
「そうでしょうそうでしょう」と、なぜか私が誇らしい気持ちになったりしている時、告知が出ました。

なんと……。

状況はよくわからなかったけど、6日のみならず、それ以降の公演もきっと難しい状態なのでは…、とすぐに思いました。
ああ、ひとまず家族は体験できてよかった。

そこに、落胆は落胆なのだが、驚きのお知らせが。

「映像で観るアンカル」企画が速攻で立ち上がっている!!!

確かに5日の公演は「カメラが入ります」とは書かれてあったけど、まさか「昨日の今日」みたいなタイミングで用意できるわけないって思っていたんですが、
「編集済み」のHD映像を、公演の会場にてスクリーン上映すると!

本当に??
編集って、全然時間足りないのでは??

そして、蓬莱さんのアフタートークもあるって書かれていて、
「これはこれで、経験できないような現場に立ち会えるということなのでは???」
と、完全に切り替えてワクワクしている自分がいました。

これを読んでいる皆さん、ちょっとした「?」が浮かんでいるのではないでしょうか。
「え?観劇料金は変わらず? 生の舞台じゃないのに、同じ料金ってこと?」
と。
知り合いも複数、そう言ってました(笑)

でもですね。
モダンスイマーズしかりですが、アンカルの料金、驚くほどの親切設定なんです。

一般 3,800円。

信じられます?

「観劇って高そう…」と一般的に構えてしまう方が多いと思うのですが、
この価格です。
「まずは劇場へ足を運ぶ人の母数を増やしたい」という思いでの設定だそうです。
さらに、もっとすごいのは
  U25      3,000円
  高校生以下 1,000円
という設定もあります。
素晴らしすぎて言葉が出ません。
実際、高校生らしき制服姿の人たちも観客席に多く見受けられました。

上映に切り替わった時、ほとんど何も考えずに自然に「行く」を選択していたのは、この価格だったことも大きかったと思います。

6日の公演は中止になってしまいましたが、しかし速攻で以下の対応が。

新たな日程を立てて振替を作っている迅速さ。
全ての対応・展開が感動でした。

8日の昼公演に出向くと、席は満席。
「ああ、やはり皆さん、(映像とはいえ)予定通りアンカルのみんなに会いにきたんだな」
って思いました。
上映開始前に、蓬莱さんが出てきて
「もし、会場に来て初めて『え、上映になってたの?』と知った方がいたら、返金させて頂きますので、受付にお申し出ください。ただ、せっかくなのでお時間があったら、上映を見ていっていただけたら」
とおっしゃってました。
誠心誠意ってこのこと。
あったかいですよね。

上映中、観客席も終始暖かくて。
映像なのに、みんな笑ったり泣いたり、拍手したり。
私も泣いたり泣いたりで忙しくて。
エンディングは、生の舞台同様、皆さん大きな拍手をされてました。

いい空気感。
これは劇場側、アンカルのスタッフの皆さん、キャストの皆さんが作り出したワールドなんだなって思いました。


7日と8日の昼公演までは、蓬莱さんと演出助手の中村公平さんのトーク。

本来はなかったはずのポストトーク。
私には大きなごほうびでした。
さらにその後、ポストトークはどんどん豪華になり、初代ソジン役のソジンさんや、2021年のアズサ役の森カンナさんが駆けつけてくるという展開に。
その間もずっと、キャストの皆さんは各SNSをフルで動かしている。
本日の大千穐楽、めちゃめちゃ熱いものになっているんだろうなって、
暖かい気持ちになります。

でも。
ああ、生ならどれだけ音圧や熱量にまみれられたことだろう……
と残念な気持ちがないわけではないですが、そう思うのも、映像で見ても素晴らしかったからこそですね。

どなたかがTwitterに、
「本当にあれが生で上演されてたなんて信じられない(ぐらいの演出・スピード感)」
というようなことを書かれていました。
いや、本当にそうです。
(Twitter「#映像で観るアンカル」で、感想などがライブな感じで伝わってきます)

台本も入手できました。
「文字で観るアンカル」も楽しませて頂きます。

2021年に観劇した時、「やっぱり生の舞台を見なければ!」と思わせてくれた作品。
映像で観るアンカルも最高でした。
また皆さんに会えたらいいな。

※モダンスイマーズのHPはこちら↓




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