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1/19 ニュースなスペイン語 Inconstitucional:違憲

恩赦法(ley de amnistía)に、また、ひとつ大きな壁が立ちはだかった。

恩赦法は小欄でも何回も取り上げているが、2017年10月にカタルーニャ州で違法に実施された住民投票(referéndum ilegal)に関与した独立派メンバーらを無罪放免にすることなどを定める法律。

さて、そんな恩赦法の審議(trámite)が下院(Cámara Baja)で進む中、国会内の法律家グループ(letrados de Congreso)が、同法は憲法に違反する可能性がある(podría ser inconstitucional)との報告書を提出した。

ペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)がスペイン政府の首相に返り咲くことができたのは、カタルーニャ州の独立派政党からの支持があったからで、この支持を取り付けるためにサンチェスが公約したのが、他でもない、恩赦法の成立だった。

君たちのリーダーや仲間たちの起訴を取り下げる法律を作るから、僕が首相になるための支持票を入れてくれよ――。

と、こんなことを、サンチェスが言うはずもないが、まぁ、概略はこういうこと。

だから、サンチェス政権にとって、恩赦法の成立は、政権を続行させるための至上命題でもある。

しかし、カタルーニャの独立を絶対に許さない国民党(PP)やボックス(Vox)といった右派政党がこんな法律を易々通させる訳がなく、各地で反対デモを繰り広げ、多くの国民がこれに参加する始末。

国会内外での雰囲気は恩赦法には劣勢極まりない。

また、上院(Cámara Alta)で過半数を有す国民党は、恩赦法が下院を通過したとしても、全力で妨害する気満々(2023年11月16日の小欄を参照)。

こんなふうに恩赦法を取り巻く環境がすこぶる悪い中、今回、国会内の法律家グループが同法がはらむ違憲の可能性を指摘したことは、サンチェス政権にとって、相当、具合が悪い。

国民党の報道官は、法律家グループの報告書を「壊滅的な(demoledor)」破壊力があると評価。

法律家グループが、恩赦法が憲法違反となる可能性とした根拠はいくつかあるようだが、同法が恩赦対象として定める期間(marco temporal)が2012年1月1日から2023年11月13日までで、これがあまりにも長すぎる(demasiado amplio)というのがひとつ。

また、法律家グループは、EUが定める各法律にも抵触する可能性にも言及し、 スペインで恩赦法が成立すると、国際逮捕命令(las órdenes de detención internacional)が無効になったり、テロ罪で起訴された容疑者さえも恩赦になる(los condenados por terrorismo puedan ser amnistiados)かもしれないという。

法律家グループは恩赦法を成立させるには、憲法改正(una reforma de la Carta Magna)とまで指摘していて、こうなると、かなりのオオゴトとなるのは目に見えている。

サンチェスとしては、できるだけコトを荒立てないで進めたいところだが、果たしてどう動く(もしくは、動かない)のが最適解か・・・。

写真は昨年9月、恩赦(法)の必要性を説くサンチェス。

まさか、こんなにも困難を伴うとは思っていなかったか。それとも、すべてが想定内のことか。

それにしても、サンチェスも髪に白いものが目立ってきたなぁ。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20240117/letrados-del-congreso-creen-ley-amnistia-podria-ser-inconstitucional-por-su-redaccion/15919984.shtml